幸せ四妖精   作:松雨

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今話では、名付きのオリキャラ(妖精)が1人登場します。これ以降、本小説にて名付きのオリキャラを登場させる予定はありません。


名付けの贈り物

 どのような形であれ開催する度に、弱い僕がやられる側になることが殆んどではあるものの、皆が仲良くこうしてやってるだけで楽しく幸せな気分になれる遊び、くすぐりバトル。

 

 最初こそ、参加者はチルノと大ちゃん、雰囲気ルナ似の男の子と僕だけでありながら、いつの間にかその場に居た大半の子供やスフェたちを含むメイド妖精さんを巻き込んで、最終的には大分カオスな大はしゃぎ大会と化していた。

 

 もし、フランがお花畑の妖精さんと共に来なくてこのままカオスなお遊びが続いてた場合、参加者全員仲良く僕と同じか若干マシと思える程度には、グロッキーになっていたことであろう。

 

 そうなれば、これだけ騒いではしゃいでいてさえ微笑ましいものを見るようにして、じっと見守ってくれてた大人の人たちも、流石に呆れていたに違いない。

 

「ああ、そういうこと。スッキリしたわ」

「よかったぁ~。正直、一瞬喧嘩しちゃったのかって心配だったよ!」

「やっぱりフランたちにとっても、僕とサニーたちは誰かしらセットなイメージが強かったんだ」

「ええ。その上、妖精軍団が勢揃いともなれば尚更ね」

「確かにな! メノがお願いしてなきゃ、多分というか絶対全員来てたし!」

 

 ちなみに今、僕たちは騒ぎを聞きつけたフランたちと一緒に、雰囲気ルナ似の男の子の家でかれこれ1時間、休憩させてもらっている。うちの子と遊んでくれたお礼と称して、男の子のお母さんが好意で僕たちに言ってくれたからだ。

 

 後はそう、お花畑の妖精さんから「この後、あたしに1つだけ付き合って!」と、強くお願いされたのも大きいかな。

 あのカオスな大はしゃぎ大会以降の予定はなく、例によってさあ何をしようか状態だったのもあり、誰からも不満の声などが上がることもなかった。

 

 そして、さっきまで僕たちと一緒に遊んでいた里の子供たちにも「友達なんだし、君たちもあたしに付き合って!」と声をかけ、返事も聞かず半ば強引に連れてきている。

 

 相性がよくて付き合いが長いのか相当仲良しみたいだし、最終的に勿論行くよってなるにしても、一応返事は聞いておいた方がいいのではと思うけど、まあ外野の僕があれこれ言うことじゃないか。

 

「うーん、一体何なんだろう。この中の誰かへのサプライズ、かな?」

「さあね。正直、私にも見当がつかないわ」

「お花好きなこの子のことだから、新しい綺麗なお花でも見つけて、どうしても共有したくなっちゃったのかも?」

「なるほどな! あたいだったら、珍しいものとか見つけたら大ちゃんとか、皆に見せて歩くから気持ちは分かる!」

「そのノリで、凍らせた変な模様のキノコ? まあ、そんなものを見せられたこともあったぞー」

「あはは……チルノらしいや。好きだもんね、物とかを凍らせる遊び」

 

 にしても、サニーがとっても喜んではしゃぎそうな天気の中、お花畑の妖精さんはどうして外が好きではないフランを連れ、偶然会ったであろう僕たちや里の子供たちを、わざわざ1ヵ所に集めたのだろうか。

 

 ただし、途中で尋ねてみても相も変わらず堂々たる態度で、「ちゃんと説明するから待ってて!」と、頑なに理由を言おうとしない。

 それに、フランも全てではなくともある程度知っていそうな雰囲気を醸し出しているから、余計に疑問が深くなっていく。

 

 けどまあ、ここで無理に詰め寄って即聞き出すべき正当な理由なんて全くないんだし、言ってくれるまで待っていよう。大切な友達を怒らせたり、逆に傷つけちゃうのはとても嫌だしね。

 

「よーし! メノウちゃんも他の皆も、さっきまでの疲れは十分に癒せたみたいだね!」

「うん、お陰様で。それはそうと、何で里の子供たちまであつまってもらったの? 僕、ちょっと気になる」

「確かに。わざわざ全員集めてるんだから、きっと凄いサプライズなんだわー!」

「フランさんまで連れてきてるくらいだもんね、リリーちゃん」

 

 そんなこんなで、フランたちが来てから更に30分。僕も含めて、大はしゃぎ大会を楽しんだ全員の体力と気力がほぼ回復した頃、お花畑の妖精さんがニコっとしながら手を叩いてこう言う。

 

(バラのお花? そんな入れ方して大丈夫なんだなぁ)

 

 で、畳に置いてた花柄の可愛らしいバッグのチャックを開けると、明らかにお高いであろう赤い宝石が埋め込まれた花瓶に入れられ、手厚く保護されている綺麗な赤と白色のバラの花が、それぞれ2本ずつ出てきた。これを見せたいから、皆をここに集めたってことでいいのかな。

 

 確かに綺麗かつ凄く生気に満ち溢れているお花だし、見ていて飽きないものではある。皆に見せたくなるのも、妖精さんの性格からして強く納得のいく行動だ。

 

「わぁ……お花畑で育ててるやつだよね? あれ、違う?」

「これが見せたかったの? 確かに、いつもあたいたちが見てるバラよりは綺麗だな!」

「ありがとう。でもね、あたしが見せたいのはバラそのものよりも……こっちなの」

 

 すると、綺麗なバラをチルノに褒められたお花畑の妖精さんが、嬉しそうにしつつも、貼り付けられていた「大切な私のメイド、お花が大好きな()()()()に。フランドールより」という、これまた赤い宝石が埋め込まれたメッセージカードを、感極まったと言わんばかりの瞳をしながら皆に見えるように掲げる。

 

(あっ……フランに付けてもらえたんだね、大切な名前)

 

 その瞬間、僕は理解した。このロゼネルという名詞はお花畑の妖精さんのことを指していて、それを授けたのはフランであると。

 

 わざわざ僕たちを集めたのも、恐らくは集中できる状況に置くことで授かった名前をしっかりと記憶してもらいつつ、早速呼んでもらいたくなったのだろう。

 

 そりゃそうだ。大好きな主からの、何にも勝る最高の贈り物なのだから。

 

「ロゼネルかぁ。由来はバラなのかな? うん、わざわざ花瓶ごとバラの花を持ってきた時点で、きっとそう。素敵なお名前」

「ふふっ、よかったね。えっと……ローゼちゃんって呼んでいい? それとも、最初の内はフルネームの方がいいかな?」

「愛称が本名になるのもあれだし、あたいはロゼネルかな。それに、ノゼアンの愛称のノーゼと混同して呼んじゃいそうだしさ」

「クラピの言う通りですよー! って言いたいところだけど、私はロゼちゃんって呼ぶつもり!」

「まあ、愛称を本名って勘違いして覚えなきゃいいんじゃない……? 後は、誰かに紹介する時には本名の方を絶対に先にするとか」

 

 そして、お花畑の妖精さん……ロゼネルは、仲の良い皆が自分の名前を呼び、会話のネタとし、愛称まで考えてくれているこの状況にこの上ない歓喜の感情を露にした。

 

 僕としても、大切な友達がこうして喜びと幸せを感じてくれるのならば、沢山フランにつけられた名前を呼んであげよう。

 

 ちなみに、僕はピースと同じ考え。全体にある程度定着するまでは、フルネームのロゼネルと呼ぶつもりである。

 

(……へ?)

 

 なんてことを思っていると、僕たちがわいわい盛り上がることによって、ロゼネルの中で溜まりに溜まっていた高揚感が爆発したらしい。

 

 すっと立ち上がったかと思えば、間髪入れずに障子を突き破って外に出ていってしまったのである。靴どころか靴下すら履かず、裸足で。

 

 まさかの予想外の展開に、障子を突き破られた家の持ち主も含めたこの場にいる全員、正確にはお母さん以外の動きが止まり、雰囲気もガラッと変わってしまう。

 

「うっわぁ……ノーゼ、スフェ。申し訳ないけど、不始末の対処をお願いできる? その代わり、私の権限で休日を1日延長させるから」

「フランさま、了解しましたー」

「お任せあれっ!」

「ありがとう……ロゼネルの保護者として、監督不行き届きで本当に申し訳ないわ。まさか、障子を破壊して出ていくなんて思わなくて」

「うふふ、あの子も余程嬉しかったのねぇ……こっちは大丈夫。行ってあげて」

 

 が、そこは流石のフラン。この場の誰よりも早く立ち直ると、電光石火の早業で指示と簡易的な謝罪をこなし、ロゼネルが履いてかなかった靴と靴下を持って家を出ていった。

 

 と同時、指示を受けたノーゼとスフェがこの家の持ち主、雰囲気ルナ似男の子のお母さんに改めて謝罪、道具の場所などを尋ねてからすぐ、二大妖精長としての手腕を発揮しての作業を始めた。

 

 他のメイド妖精さんや、雇われメイド妖精である僕もお手伝いしようとしたけど、ノーゼにやらないでいいと言われたから、もう少しだけここで休んでいることとしよう。

 

 本当に大変でお手伝いが必要であれば、やらないでもいいなんてことを言う訳がないんだから。

 

(これも、紅魔館の妖精さんたちが穏やかで優しい子ばかりだからなろうなぁ)

 

 しかし、男の子のお母さんは自分の家が少しとはいえ壊されたというのに、決して怒ったりせずに穏やかなままの態度を保っているのは凄い。

 わざとではなく、フランや二大妖精長からちゃんとした謝罪があり、なおかつ責任を取って修復作業を行っているにしても。

 

 妖精に対するイメージが、僕が思う以上にいいのだろう。もしくは、雰囲気がルナ似の男の子とロゼネルがとても仲良しであり、自分の家族と同等か匹敵する存在として考えているのかも。

 

 時折イタズラをして皆を困らせたり、今日みたいに意図せずトラブルを起こすようなマイナスな面を、ある程度笑って許容できる程度にはね。

 

「そうなんですねー! その、やんちゃなお姉ちゃんは寺子屋ですか?」

「ええ。空に輝くお日様のように家でも外でも元気いっぱい、困った子でもありながら、とても優しい子でもあるのよ」

「ほうほう。つまるところ、サニーみたいな人間の子供ってことだな!」

「もしくは、チルノちゃんとかクラピちゃんみたいとも言えるよね」

「そう考えると、大人しめな弟くんは大変そうだわ。妖精に限定するなら、メノとかルナなら気が合うかも?」

「僕とルナかぁ。ラルバの言う通り……かな?」

 

 と思っていたら、どうやらこの男の子にはお姉ちゃんが居て、そのお姉ちゃんがサニーみたいな性格だってことが判明した。

 要するに、高ぶったサニーを彷彿とさせるロゼネルの振る舞いが、自分の娘さんから感じるような親しみを感じていて、故に限定で許容範囲が大きいのである。

 

 とは言うものの、妖精という種族そのものに対するイメージがいいのは変わらないようで、仮にこの障子ぶち抜き騒動を起こしたのが別の妖精さんであっても、この人はきっと許してくれた。

 

 勿論、いくら許容範囲が広い優しい人と言っても限度だったり、これ以上は絶対に許せないという一線を引いてはいるだろう。僕だってそうだもの。

 

 だから、この程度なら大丈夫なはずとかみたいに変に調子に乗らず、常識を持ち、時と場合を弁えなければいけない。でなければ、僕だけじゃなくて愛する家族や大好きな友達にも、多大なる迷惑がかかってしまうから。

 

「えっ。本当に居たの……?」

「勿論よ。そうでなきゃ、居るだなんて言わないわ」

「スターちゃんみたいな性格の男の子かぁ。将来、どんな人になるのかな?」

「料理が上手だけど、やることなすことが空回りして面白い、元気なお兄さん……?」

 

 それはそうと、サニーのような雰囲気と性格らしいお姉ちゃんに、ルナのような雰囲気と性格の末弟くん、この流れで行けばスターのような雰囲気と性格を持つ兄弟姉妹が居ても、全くおかしくはない。

 

 と思って、話の中でそれとなく聞いてみたら本当に居るらしい。しかも、性格やその雰囲気だけても似てるのに、趣味も料理とのことだからびっくりだ。

 

 サニー似の長女の弟くんでありルナ似の末弟くんの兄、男の子である点を考慮しなければ、ニッコニコで皆に料理を振る舞うスターが容易に想像できる。

 

(……)

 

 もし、スターとその子を会わせてみたら、一体どうなるだろうか。

 

 気が合いお友達になることを前提条件とするならば、基本は一緒に料理やお菓子作りをして楽しく過ごす感じかな。

 

 身体を動かすことは好きな方らしいので、鬼ごっこやかくれんぼ、大探検とかでも楽しく遊んでくれるかな。ただし、その場合は安全面を考慮して理想郷にした方がいいかもしれない。

 

 イタズラに関しては、サニーたちと暮らしていき順当に興味を持っていった妖精の僕とは違って、そこまで興味を向けることはないだろう。多分。

 

「あ、あの……妖精のおねえちゃん」

「えっと……なあに?」

 

 もう少しと言っておきながら、何だかんだノーゼやスフェの障子修復が済んでしまうくらいの長い時間過ごし、流石にもう帰った方がという空気がじわりじわりと流れ始めてきた刹那。

 

 この盛り上がる状況下、僕の隣で大人しく本を読んでいた雰囲気ルナ似の男の子から、凄い遠慮がちに声をかけられた。

 

 ただし、その後が続かない。勇気を出して声をかけてみたはいいものの、緊張感やらで口が動かなくなってしまったようである。

 

(まるで、僕を鏡写しで見てるみたい……)

 

 何にせよ、返事を返してくれるまで待ち続けるだけだ。仮に無理なら無理で、それも全く構わない。

 

 頑張ろうとはしていても、更なる1歩が踏み出せずにいる男の子の気持ちが、痛い程理解できるから。

 

「ありがとう。その、ぼくと……」

「いいよ。焦らないで、ゆっくり」

「……あそんでくれて。うれしかった」

「どういたしまして。僕もだよ」

 

 じっと待ち続けることおよそ20秒、いつの間にか静かになってた皆がこっちを見守るという緊張感漂う中、この男の子が発したのはお礼の言葉だった。

 

 さっきのくすぐりバトル、ないし大はしゃぎ大会が余程楽しかったのだろう。ほんの少し、その顔にはくすぐられてる時の笑いとはまた違う、温かな笑みが浮かんでいる。

 

 ルナよりは大人しく、前までの僕にも比肩するレベルではあるけれど、醸し出している雰囲気の大元はルナそのもの。

 

 読書が趣味なところも同じだし、会わせてみたら気が合いそうだ。自分の好きな本の話で盛り上がる可能性だってある。

 

「みんなも、ありが――」

「また、あたいと一緒にくすぐりバトルやろう!」

「おまえなら、霧の湖とかに連れてってもいいぞ! えっ、人里の外だし危ないところじゃないかって? あたいと大ちゃん、あのレミリアの勢力圏でもあるから安心安全! 何なら話をつけといてやる!」

「夏はともかく、他の季節だと寒いけど! 地獄の妖精であるあたいにとっちゃ、夏でも正直あれなのはご愛嬌だぜ!」

 

 なお、性格も含めた何もかもが真逆であるはずのピースとチルノは、今のやり取りでこの男の子のことを一緒に遊んでて楽しいお友達として、はっきり認定したらしい。

 当人が戸惑っているのも構わず、僕のことすらネタにしてグイグイ話しかけているのだ。

 

 雰囲気ルナ似の末弟くんからしてみれば、自分のお姉ちゃんと性格的に合いそうな妖精さんからどういう訳か、初対面で気に入られた状況。嬉しくない訳じゃないけれど、戸惑ってあわあわするのも致し方ないだろう。

 

(小鈴の次に、人里の人間さんと友達になるとしたら、この子がいいかな……僕も)

 

 でもまあ、1度遊んだだけではあるものの、ピースとチルノが末弟くんを気に入るのも何となく分かる。

 

 気質が大人しめ故に、あの盛り上がりに気圧されてる部分はあるけれど、一緒に楽しんで遊んでくれてはいるんだもの。僕みたいに、心にトラウマを抱えている訳じゃなさそうだし。

 

「もう。クラピちゃんとチルノちゃん、もう少し抑えてあげて。この子が2人の勢いが強過ぎて困ってるよ」

「おっと。楽しくて、メノとかルナみたいに大人しめな弟くんってこと忘れてた!」

「いつもこれだと、おまえは疲れるもんな! ごめん!」

 

 ただし、それは耐えられる限度を超えなければの話。サニーに性格が似てるというお姉ちゃんの相手を常日頃していて慣れてると言っても、本来の気質は僕やルナのように大人しめなんだから、普通よりかは気を遣わないとね。

 

 まあ、ここ最近の僕やルナは割とサニーやスターだったり、チルノ一行とかとわいわいすることが多くなってるから、大人しめなのかと問われれば、正直どうなのかなって思うけれども。

 

(ふふっ……)

 

 ちなみに、2人以外の妖精軍団の皆やルーミア、リグルからの末弟くんへの印象は良いと言える。チルノやピースが遊んでて楽しいと評する相手なんだし、印象が良くなるのも至極当然であろう。

 

 きっと、その内しれっと妖精軍団の皆の中に混じって、一緒に楽しく遊ぶようになる。今はまだ人里の中限定だろうけど、お母さんの信頼を勝ち取ることができた暁には、理想郷に連れていってあげたいな。

 

「だいじょうぶ……えへへ、またあそぼうね。おねえちゃんと、おにいちゃんもいっしょがいいなぁ」

「「……おうよ!!」」

 

 末弟くんが勇気を振り絞ってまた次も遊ぼうと約束を投げ掛け、それに代表してチルノとピースが息ピッタリに返事を返す様子を見ながら、僕はとてもあったかい気持ちになった。




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