あらすじからの繰り返しにはなりますが、本作品は掲示板からインスピレーションを受けて作成したものとなっており、設定の一部に掲示板を参考にさせていただいたものがございます。
あらかじめご了承ください。
拙い文章ではございますが、楽しんでいただけましたら幸いです。
夜も更けたトレセン学園、その片隅にある一室からキーボードを叩く音が鳴る。
「あとはこれを入力して…。ふぅ、スペ達のトレーニングスケジュールはこれで大丈夫だな。明日共有しないと…っと」
パソコンで資料を作成していた男、沖野は椅子を回転させて窓から外を見る。
部屋の外は既に暗くなっており、部屋の光で照らされたところ以外は電灯の明かりが無い限り見えないようになっていた。
「すっかり夜がふけちまったな。今は23時か…。コンビニ飯は味気ねぇし、かと言って帰って飯作るのもな…」
沖野は腕を組み目を閉じて考える。少しして、沖野はふとあることを思い出した。
「そうだ、そういやあそこがあったな。今日はあそこで済ませちまおう」
沖野は椅子から立ち上がるとパッパと机の上の荷物を片付けて部屋の電気を消灯すると、鍵を締めてそそくさと建物の外へ向かっていった。
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トレセンの正門にいる警備員さんに挨拶しながら学園の外に出ると、そのまま壁沿いに歩き学園の裏の方へと向かう。
10分ほど歩くと、少し開けた広場が見えてきた。
そしてその広場の片隅に、赤い暖簾がかかった屋台が見える。
近付くと、『修練』と書かれたのれんの奥から光がこぼれ、暗い空き地の中で一際明るく見える。
「お、やってるな」
沖野は暖簾をくぐって、店主に挨拶する。
黒い服を着て頭にタオルを巻いた、無愛想な表情の店主が返答する。
「いらっしゃい。久しぶりだな」
「ちょっと忙しかったからなぁ。よっと」
店主と話しながら、沖野は席につく。席についた沖野の前に、そっと店主がメニュー表を置く。
「何か注文するものは決まってるか?」
「そうだなぁ…とりあえず、ビールとおつまみになりそうなトッピングを見繕ってもらえないか?」
「分かった。ちょっと待っててくれ」
そう言うと店主はカウンター下の冷蔵庫からメンマと白髪ねぎを取り出し、ボウルに入れてごま油、ラー油と共に和え始める。
混ぜ終えたものを小鉢に移したあと、瓶ビールとグラスを小鉢と一緒に沖野の前に置いた。
「お待ち。和え物は、辛さが足りなきゃカウンターのラー油で調整してくれ」
「おっ、うまそうだ。まずはビールを注いで…そしたら和え物からいくか。いただきます」
沖野は小鉢の和え物を一口食べる。噛むたびに、シャリシャリ、ポリポリといった音が鳴り、フワッとごま油の風味が口の中に広がる。
「うん、美味い!白髪ねぎとメンマの食感が良いな!風味もいいし、疲れた身体に塩味が効く…これに合わせて…」
沖野はビールの入ったグラスを手に取ると、グビッとあおる。
ゴク、ゴクと飲み進め、すぐにグラスは空になった。
「ぷはぁ!いやあ、ビールに合うな!美味いもん食うと、日頃の疲れもぶっ飛ぶわ」
「そりゃ良かった」
沖野の言葉に、店主は微笑む。
沖野は小鉢をつまみながらビールを飲みつつ、店主との会話に花を咲かせていた。
「そうか、チームスピカに新しいウマ娘が入ったのか」
「ああ。トウカイテイオーって言うんだが、結構な逸材だ。あいつは伸びる」
「お前が言うならよっぽどだな。まあ、何にせよ、嬉しい悲鳴なんじゃないか?チームメンバーが一人になっちまったって悩んでた時期が懐かしい」
「そうだなぁ…。ま、大切なのはこれからだ。あいつらが無事走りきれるようにトレーニングしてやらないとな」
「頑張れよ、トレーナー。俺はトレーナーの仕事やウマ娘のトレーニングとかは分からないが、辛くなったら話を聞くことくらいは出来るからな。必要な時は来ると良い」
「ああ、そうさせてもらうよ」
店主と他愛もない話に花を咲かせ、笑い合う。そんな時間がゆっくりと過ぎていく。
しばらく談笑したあと、沖野はふと腕時計を見て時間を確認した。
「お、0時半前か…明日も早いし、そろそろ帰らねぇと…」
「ん、早朝トレーニングでもあるのか?」
「いや、トレーニング計画に合わせた場所の手続きとかがな。んで、そろそろ帰るんで〆に中華そばを頼みたいんだが…」
「ああ。トッピングは追加するか?」
「いや、今日は追加しないでいい。そのままで頼む」
「了解。ちょっと待っててくれ」
沖野の注文を受け、店主は麺を取り出して茹で始める。その間に器を用意し、お湯で器を温めてから、カエシと出汁を注ぐ。
茹で上がった麺はお湯を切ったあとスープに入れて、その上からチャーシューを2枚と味玉、海苔をトッピングする。
「中華そばお待ち」
沖野の前に、出来立てのラーメンが置かれる。まずレンゲでスープを飲み、次に箸で麺を持ち上げてすすった。
「…うん、美味いな。ザ・中華そばって感じだ」
一口、また一口と麺をすする。
カエシに含まれる醤油の風味と、混ぜ合わされた出汁の風味が沖野の鼻腔を刺激する。
続いて沖野はトッピングを口にする。
カエシを使って作られたチャーシューは濃厚な風味で、肉厚でありながらしっとりした肉から肉の旨味が溢れ出る。
半熟で作られた味玉は、カエシの旨味もしつつ、濃厚な黄身の旨味が食欲を更に刺激している。
一心不乱に食べ進め、スープを飲み干しふぅ、と息を吐くと、ぽかぽか感と満足感が沖野の身体を満たしていた。
中華そばを食べ終え一息ついた沖野は、会計を済まして席を立つ。
「ごちそうさん。また来るわ」
「おう、頑張れよトレーナー」
簡単な言葉を交わし、暖簾をくぐって沖野は帰路につく。
(あの店はやっぱり良いな。今度スペ達が勝ったら、あそこに連れてってやるのもありかもな…)
そんな事を考えながら歩く沖野の足取りは、心なしか来たときよりも力が漲っている感じがする。
「よし、明日も頑張るぞ!」
そう声に出しながら、自室へと歩みを進めるのであった。