少し短めですかね。
執筆のために色々調べてたら、めっちゃラーメン食べたくなってきました…
今日もいつもの空き地で店を開き、やってきた客に出来立てのラーメンを提供する。
地元で知る人ぞ知るラーメン屋『修練』の店主は、カウンター前に立ち来店者への対応を行っていた。
たまに店に来るお年を召したウマ娘を見送って開店後の最初のピークが過ぎたあと、一通り食器等の整理が終わったところで、新しい客が暖簾をくぐってきた。
「おーっす、おっちゃん!今日も賑わってんじゃねーか!」
「ピーク後の人捌けた後で言う言葉か、それ。まあ、確かに賑わってるっちゃ賑わってるが。いらっしゃい、ゴールドシップ」
暖簾をくぐって入ってきたウマ娘、ゴールドシップに店主は返答する。ゴールドシップはニッと笑うとそのまま席について、手に持っていた袋をカウンターの上に置く。
「つれねぇなぁおっちゃん、ゴルシで良いっつってんのに」
「流石に客だしな。店の外でならともかく、この場では普通に呼ばせてもらうさ」
店主はそう言うと、ゴルシがいつも頼むだしスープを作り、ネギの青い部分を輪切りにしたものを別添えの皿に入れてスープと一緒に提供した。
ゴールドシップは出てきたスープにおもむろにネギを入れ、ネギごとスープを啜る。
「かーっ!やっぱおっちゃんの出汁は美味いよなー!」
まるでビールを飲んだかのような感想に店主はほほえみつつ、ゴールドシップに話しかける。
「何かいつもよりテンション高いな。何か良いことでもあったのか?」
「良いことってわけじゃねぇけどよ、今度販売するゴルシちゃん焼きそばの改良案が形になったんだ。ほら、これ試作品」
ゴールドシップは先程カウンターに置いた袋をゴソゴソいじると、中からパックに入った焼きそばを渡してくる。
店主はそれを受け取ると、カウンター下から割り箸を取り出してパックを開き、一口啜る。
「…へぇ、ソースの味の中に出汁を感じるな。出汁ソースってやつか。いつもとは違った風味だが、和風な感じがして美味い」
「だろ?今回のやつはちょっと和風でいってみたくてよー。けど、なーんかいまいち味が足りねぇ気がすんだよなー」
「そうだな…ソースの味が強いから、若干かつおだしが負けてる感じはするな。これでも十分美味いが、だしの感じを推したいならもう少し比率を高めても良いかもしれない。もしくは、青のりと一緒にかつお粉入れてみるとか」
「あー、なるほどそういうアプローチもあんのか。もちっと改良案考えてみるかなー」
ゴールドシップは店主の言葉にウンウンと頷きつつ、焼きそばの改良案について首をひねりながら考える素振りを見せる。
真剣な表情でありながらも、楽しむような感じでいる。そんなゴールドシップと彼女の作った焼きそばを見て、店主はポツリと言葉をこぼす。
「…現状に満足せず、常により上へ模索し続ける。ゴールドシップ、お前のそれはある種料理人以上かもな。俺もまだまだだ」
その呟きを聞いて、ゴールドシップは視線を店主の方に向ける。
「ゴルシちゃんの場合、やりたいことやってるだけだから、本職には負けると思うけどな。おっちゃんはラーメンの味だけじゃなくて、金とか店全体見て模索し続けてんだろ?それはあたしにゃ難しい。おっちゃんは十分すげぇよ」
「…ゴールドシップにそう言ってもらえるならありがたい。その言葉に嘘をつくような事にならないよう、精進せねば」
ゴールドシップの本心からの言葉に、店主はフッと笑いながら感謝と覚悟を伝える。
店主の覚悟を聞いたゴールドシップは、ニッと笑ったあと姿勢を直してカウンターに向き直る。
「んじゃ、そんなおっちゃんに注文するわ。中華そば1つで、にんじんとメンマトッピング。んで…」
「トッピングは全部別皿、だろ?」
「わかってんじゃねーか。流石おっちゃん、頼むぜ!」
ゴールドシップの注文を聞いて、店主はラーメンの準備を始める。その様子を見ながら、ゴールドシップはふと気になった事を店主に聞いてみた。
「そういやよ、おっちゃんの店ってにんじん系のトッピング種類少ないよな?トレセン近いし、他の奴らから何か注文とかねぇの?」
「…あー、確かに。来てる学生からは特に何もなかったが…。ウマ娘の客も多いし、メニュー増やしても良いかもな」
「だろ?なら、あれどーよ。にんじん1本どーんと」
「ラーメンにか?あー、まあウマ娘ならいけるか…?どちらにせよ、メニューに入れるなら開発しないとな…」
「味見ならあたしも手伝うわ」
まだ見ぬ店の新メニューについて花を咲かせつつ、店主はラーメンとトッピングの準備を進める。
麺を茹で終えたところでスープに入れて、出来たラーメンと別皿に入れたトッピングをゴールドシップの前に置いた。
「おまち」
「おう!んじゃ一口…」
ゴールドシップは麺を一口啜る。出汁の芳醇な香りと旨味、そしてカエシの風味が、鼻と口を刺激する。
「やっぱうめぇ…出汁使って何かやるなら、この出汁のレベル目指さなきゃいけねぇな…」
ゴールドシップがラーメンのスープに対して思案していると、ふと視界の端に何かが入ったような感じがした。
「…ん?おっちゃん、カウンターの端になんかねぇか?」
「カウンターの端?何だ…?」
店主はカウンターの内側から出て、ゴールドシップが何かを見つけた席に向かう。
すると、テーブルの上に『デフォルメされたネズミのシルエット』と『ガラスの靴』のイラストがプリントされた手帳が置かれていた。
「あー、これいつものウマ娘のお客さんのやつだな。前忘れていった時『そのまま預かってて』って言われたし、うちの方で預かっとくか」
店主はそう言ってカウンターの手帳を手に取ると、客の忘れ物を預かっている荷物ボックスにしまうためにカウンター下にしゃがむ。
(ウマ娘…ネズミ…ガラスの靴ってことは…気のせいか?いや、まさかな…)
ゴールドシップはちょっと引っかかる部分があったが気にしないことにし、そのまま残りのラーメンを楽しむことにしたのだった。