虹ヶ咲のシンガーソン軍師   作:初見さん

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1期の最終回です。


第18話 スクールアイドルフェスティバル

『勘助……俺みたいになるな』

 

 父親の言葉が頭に刺さる、勘助は独りよがりになるライブはしないと誓った。

 だからこそ、単独のライブはしたことない。怖いから、一人でステージに立つのも、みんなを喜ばせられるかと考えるのも、すべてが怖い。

 

「勘助さん!」

「よう……菜々」

 

 今はせつ菜だと答えるどうやら話し合い中に考え込みすぎたらしい。

 何かあったかとせつ菜に言われるが勘助は答えずただ首を振るだけだった。

 

「あの……勘助さん、しっかりしてください。これからあなたのライブも考えるんですから」

「ああ、そうだよな」

 

 勘助の表情は晴れなかった。

 

 ☆

 

「勘助さんやっぱり怖いんじゃないですかね」

「怖いですか?」

 

 しずくの怖いという言葉に反応するせつ菜、そこに璃奈も追加して話す。

 

「うん、勘助さんは独りよがりのライブになるのが怖いって言ってた。私たちと同じライブをやる前の恐怖心に近いのが勘助さんにもあるのかも」

「情けないわね、あれだけ大口叩いといて」

「果林ちゃんが言うの?」

 

 エマの突っ込みに果林が項垂れる返す言葉がないようだ。とはいえ勘助のせっかくの初ライブ。

 ずっとみんなの支えとなってくれた勘助のために、ステージに上がってほしいというのはあるらしい。

 せつ菜の時は全力で歌っていたとせつ菜本人が言うと、身内と他人ならハードルが違うと帰ってきた。

 今回勘助のステージではダイバーフェスを軽く超える可能性がある。その大勢の中で単独前座のライブをするとなると重みも責任も違うのだ。

 どの道果林の伝家の宝刀、本人次第で片付いてしまったのだが、せつ菜は納得がいかなかった。

 その後、せつ菜と勘助が対峙する。というか勘助はせつ菜に屋上に呼ばれていた。

 

「屋上で話すなんてあの時以来ですね」

「そうだな、せつ菜を引き込んだ時以来だ」

「調子は良くなさそうですね」

「だが、生きている」

「勘助さん、私は勘助さんにライブ出てほしいです」

「出るけど……俺は怖いよ」

「みんながいます、何かあったら全力で止めます」

「俺は……出来るのかな」

「人は、弱くて……不完全で……だから託すんです! 託されて、歩き続けるんです。どんなにつらくても」

「せつ菜……」

「それに私は……」

 

 優木せつ菜は語る自分がスクールアイドルをやめてしまおうとしたとき、勘助は怒って無理やりにでも自分の大好きを繋ぎ止めて託してくれたこと。

 優木せつ菜は語るしずくや璃奈、彼方に果林達の不安を取っ払ってライブが見たいと託してくれていたこと。

 優木せつ菜は語る、だからこそそんな真っすぐで不安を吹き飛ばしみんなに前を向かせてくれるそんな山本勘助が……

 

「笑顔で歌う、貴方のことがずっと昔から大好きなんです!」

「……っ」

 

 勘助は泣いた、久しぶりに泣いた。みっともないよなとせつ菜に言ったが、せつ菜は返す。

 

「人や自分のために流す涙は私は大切だと思います」

「決めたよ……俺は……やっぱり、歌うのが好きだ」

「なら、始まったのなら! 貫くのみです!」

「せつ菜……いや菜々、ありがとう」

 

 勘助の涙を覆うように膝をついて泣いた勘助を、せつ菜は小さい体で抱きしめたのだった。

 

 ☆

 

「あれ、歩夢さんいい顔になったな」

「勘助君も変わった?」

「まぁ……な。よく出来た幼馴染だよあいつは」

「幼馴染ってことは、勘助君もせつ菜ちゃんに励まされたんだ」

「お互いダンプカーに惹かれたな。車だけに」

「侑ちゃんじゃなくてごめんね」

「いや私も悪かった」

 

 そう言って勘助と歩夢は笑う。二人の問題は幕を下ろしたのだった。

 そして迎えた当日本番。私たちの虹を咲かせに行く円陣を作り、フェスティバルが始まった。

 勘助は前から璃奈にあるお願いをしていたので今回ギターを背負っていなかった。

 そして開幕のステージ舞台裏に立つ。

 

「んじゃ、璃奈さんありがとう。よろしくな」

「うん、勘助さん、頑張って。私がいるから」

「頼もしいな」

 

 そして勘助は()()()で歩く。

 

「父さん……母さんごめん。俺は……夢の虹を咲かせに、その先へ、行くよ!」

 

 時間カウントダウンは0。

 ジャストの時間に舞台に上がり一礼、マイクで自己紹介をした後、全力で叫ぶ。

 

「ユニコォォォォォォォォォォォォォン!!」

 

 そして璃奈に頼んでいたワイヤーにつながれたレフティーギターが、回転しながら勘助のもとに運ばれる。

 それを肩にかけ、勘助はピックを弾きつかみ取る。

 

 一枚のピックは時にギターを弾く道具になり

 時に人の心を打ちぬく弾丸となる

 

 そしてこの日、山本勘助は伝説になった。

 雨が降るトラブルも見舞われてしまったが、ファンのみんなが待っていてくれたのもありスクールアイドルフェスティバルは全員で踊って成功した。

 侑と勘助は見ているだけだったが、アイドルオタクのような全力オタ芸でみんなを応援した。

 

「勘助君……」

「なんだ侑?」

「楽しいね!」

「……ああ!」

 

 ちなみにフェスティバル中にまさかの勘助ファン(軽音楽部その他大勢)がスクールアイドルと同じ展示ブース(楽器の試し弾き)を作るのを急に決めたので、間接的に生徒会を勘助が痛めつけたというのは別の話であった。

 

 ☆

 

「はい、大丈夫です。次の方……」

「遅いなぁ、大丈夫かな?」

 

 高咲侑は音楽科の試験を受けていた、そわそわしながら課題曲を何とか弾いて、ある人物を待つ。

 そして、彼の出番になった時、扉を開けた音と共に息を切らした男の子が一人。

 

「連絡通り遅れました、これ鎌倉からここまでの列車の遅延書です」

「……はい、受理します。それではどうぞ」

 

 眼を合わせて遅れたと男の子は謝り、侑はドンマイと苦笑い。そしてエレキギターを一本アンプにつなげて……

 

「山本勘助、ユニコーンレフティギター、弾きます!」

 

 何事も全部うまくいくなんてないし、実際は後悔することばかりだと思う。

 それでも! 始めてよかったと思う! 

 

 侑と勘助のそしてスクールアイドル同好会の物語は始まったばかりだ。

 

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