山本勘助は叫びたくなった。幼馴染に対しての怒りをどこかにぶつけたい。されどあまり叫んだら変人扱いされるのが世の常である。よって勘助は人気のないところで、叫ぼうと考えて……
「
「かすみんは、あきらめませんよ!」
我慢できない人間がここに二人いた。そして交わる2つの困惑の声が勘助の人生を大きく変えることを彼はまだ知らない。
☆
「これより軍議を開始する」
「いやどういうことですか?」
その翌日、勘助とクリーム色に近い茶色のショートヘアーである少女と共に、ベンチに座って自己紹介兼、策を練ることにした。事の始まりは前日の叫び。勘助は少女の
「そもそも山本さん……でしたっけ? どうしてせつ菜先輩を知っているんですか?」
「勘助で構わないよ、かすみんさん。山本なんて1万といるし」
かすみが気になっていたのは優木せつ菜という人物である。中須かすみは虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の一人である。よって、同じ部員の優木せつ菜とは周知の仲であった。だが、急にその名をこの勘助という男はいい放ったことに疑問を隠せない。
優木せつ菜はもともと正体不明のスクールアイドルであり学校でも見たことがないとかそんな幻の人間であった。
「結論言うと私も優木せつ菜の知り合いだ。かすみんさんと同じスクールアイドルではないけど優木せつ菜がスクールアイドルをしているのも知っている」
「かすみでいいですよ。かすみんは私だけの呼び名ですし。それにしても……」
かすみは信じきれないようだ、それもそうかと、勘助は言いながらならばと証拠らしいものを見せようとするが、優木せつ菜の知り合いの証拠は持ち合わせていなかった。
「かすみさん……それじゃあ証拠なら、これでどうよ?」
ふと勘助が気が付いたのは後ろに背負ったギター。それをさっと手慣れた動作でアコースティックギターを持つと一曲聞いてくれと、かすみに言い放つ。
「優木せつ菜に歌い方や振り付け、なんならあいつの持ち歌CHASE! を作ったのは私だ。それをここで弾けば完全まで行かなくともファンか知り合いの瀬戸際まで持っていける」
「え? まさかここで歌う気ですか?」
さらに言うとかすみは信じられない事柄が増えた。優木せつ菜に指導した人間がここにいることに、それを無視して勘助はアコースティックギターを首にかけてピックを持ち準備完了した。
「いくぞ、デストロイモード起動」
瞬間、勘助の声が響き渡り、同時にアコースティックギターを右手でかき鳴らす、場所が場所のため少し抑えているが、かすみはこの力強さや勢いや歌い方、このすべてを聞いたことがある。
まさしく勘助の歌い方は優木せつ菜その者の歌い方であった。性別は違うが、優木せつ菜と曲を作ったと言われれば納得がいった。
サビだけの演奏が終わり、信じてくれるかと一言。
「まぁ……完全ではありませんけど信じます」
「そうか……私はな、かすみさんがあきらめないというのはスクールアイドルをまた復活させるために何かすると思っているが事実か?」
その言葉にかすみは頷く。大した策はないが廃部にさせた生徒会長からスクールアイドル同好会の看板を盗むことやデモを起こすことを考えているそうだ。
「わかった。それじゃあ私は優木せつ菜に会ったら説得しよう。ついでにメンバーを集めて再復活も考える」
「再復活?」
勘助は別に一度同好会が解散してもメンバーさえ揃えればまたできると考えている。よってかすみから元々のメンバーを聞いて連れ戻そうとしていたのだ。
「かすみさん、解散した理由は?」
「ええっと……かすみんとせつ菜先輩が方向性の違いで」
「なら他の奴は関係ないからスクールアイドルが嫌いでない限りもっかい集めても問題なさそうだ。会長も再結成くらいなら手出しもできん」
かすみは驚く。勘助の頭は回転が速かった、確かに争いの当事者以外なら戻ってきてくれる可能性もあるし、メンバーを集めれば再結成できるかもしれないと言った。
勘助の言う通り再結成を止めることの権限は無いはずである。この短い話の中でここまで考えられたのはこの山本勘助がいてこそだ。
「……ありがとうございます。勘助先輩」
「何のことかわからんが、利害も一致してるし知恵を貸さないわけにもいかん。まして、スクールアイドルのためなら私は協力を惜しまない。幼馴染との約束だからな」
「もしかして勘助先輩の幼馴染って……」
そこまでかすみが言ったが勘助は指で罰を作ったそしてかすみの前に出して、証拠もないと、一言。
軍議はこれにて終了した。
☆
「ねぇ! 君さっきせつ菜ちゃんの曲弾いてたよね!? ファンなの? ファンだよね! もうときめきがとまらないんだ!」
「ゆ、侑ちゃん初対面だよ……」
「とりあえず君達は名を名乗れ」
帰り際に勘助が緑メッシュのツインテールと、外したら自我を持ちそうなお団子ヘアーの少女たちと会うのは秒の出来事であった。