「というわけで家臣にしてください!」
「Why!? どういうわけだよ! しないって言ってるだろ!」
山本勘助はミアに3回目の弟子入り宣言をしていたが悉く断られていた。
「なんでだよ? ランジュとは組んでるのに私と組まない……弟子にしないってこんなの絶対おかしいよ!」
「そもそもランジュは弟子じゃない! 利害が一致しただけでただのBusiness partnerだ」
「仲間じゃないのか?」
「僕は自分の実力を発揮するためにランジュとここに来ただけさ」
「つまり孤高ってことかよ」
独りよがり、孤高、唯我独尊。勘助があまり好かない言葉である。勘助は少し苦い顔をしながら、ミアを見た。
「とにかく君を弟子にするつもりないから。Bye」
そう言ってミアは勘助のもとを後にした。
☆
「なぁ、せつ菜」
「今は菜々です。どうしました?」
「俺って間違ってんのかな」
「はい?」
勘助の言葉によくわからないと返す菜々。勘助はミアの言葉を聞いて、独りよがりでも良いことがあるのか分からなくなってきたという。
勘助の父、信玄は母の死から一人で曲を作り、歌い、日本の音楽の頂点に君臨した。
死に際に父からギターの免許皆伝を食らいながらも、父の生き方を反面教師として歌い、曲を作ってきた勘助だが、ミア・テイラーという少女は反面教師にするまでもないが独りよがりな目的を口にしていた。
だからこそ自分が正しいのか分からなくなっていたのだ。自分が苦手な思想の人が成功者であるなら尚更わからない。
「独りよがりって良くないものだと思ってたんだけどな……」
「でも裏を返せば孤高というすごい人になると。だからこそ勘助さんも揺らいでるんですね」
頷く勘助はどこか元気がない。せつ菜は歯がゆかった。せつ菜はギターや曲作りに勘助ほど詳しくない。
父の死などを合わせて作った勘助の信念や理念などもっと分かるわけもなかった。
それでも、せつ菜は頭を使い、愛する人の助けになるような案を考えて、出た言葉があった。
「自由に考えればいいのではないでしょうか」
「自由に?」
「何がいいとか悪いとか考えず物は試しに弾いてみては? 勘助さん第1回スクールアイドルフェスティバルの企画書の時にやった、試しに大まかに書いて出してみるってやつです」
「独りよがりでも、みんなのためを思っても何でもいいからやってみてはいかがでしょう?」
「なるほどな、流石菜々だ」
「いえ、勘助さんの前回の案が無ければ私も思いつきませんでしたから」
少し肩が楽になった感じがする勘助、お礼を言うと菜々からもいつものお礼ですと逆に返されたのだった。
☆
合同ライブで璃奈、かすみ、彼方、エマがユニットを組むと言ってから必死で練習をしている間にも勘助は悩む。
「違うな。もう少し自我を出して……」
「せつ菜ちゃん、勘助君も頑張っている……というかなんか悩んでるね」
「侑さん。勘助さんは新しいことを挑戦してるんですよ」
結局勘助は練習をうまくできないので、気晴らしに別の行動を取ることにした。
「よう、お疲れみんな」
「勘助先輩! 練習はいいんですか?」
「身が入らんからやめた、というか璃奈さん抱き着かないで」
「嫌だ」
勘助の言葉に彼方が珍しいと言い、明日は嵐だと騒ぎ立てるかすみをエマが制する。
勘助はユニットを組む予定の4人を訪ねたのだ。
「璃奈さんに言っただろ、私だってギターを弾きたくない時もあるって。今がその時さ」
「勘助君は、何に悩んでいるの?」
「エマさんたちが納得するか分かりませんが、自由な演奏ですかね」
勘助は軽く自分の考えを話した、独りよがりは絶対悪かということと、菜々のアドバイスでそれを探るためにとにかく数撃ってみること。
対してかすみたちも衣装やユニットの仲のために合宿すると言っていた。勘助も誘われたが、全力で拒否をした。合宿の二の舞にはなりたくないと。
そんなやり取りの後、果林が愛と勘助に朝7時に起こせと急に依頼をしてきたので愛はダジャレ全開で、勘助は朝っぱらから大声でユニコォォォォォォォォォォォォォン!! と叫び果林の鼓膜ごと起こしてあげたらしい。
☆
「曲を自分で作る課題か。しかも菜々曰く文化祭とスクールアイドルフェスティバルの合同だと……やること多すぎかよ」
「これは手に負えなさそうだね……」
「侑さんは勉強しろよ、ただでさえ危ないんだから」
「両隣の勘助君とミアちゃんの満点聞いてたらやばい人に囲まれてるなって思うんだ……」
そう言って虚空を見つめる侑だが、勘助が勉強やばかったら教えると言って侑も頼み込んできた。校内のど真ん中で、しかも土下座で。
侑たちが話している間にもかすみ、璃奈、彼方、エマ、の4人はライブの案を考えたり、かすみの黒歴史アルバムを見たり、勘助に鍛えられた遥が彼方の母と作った料理を食べたり、していたらしい。
☆
「よう、はんぺん元気だな」
「ほんとに勘助君はんぺんに懐かれるよね」
「どうして二人がここに……」
勘助と侑が小さな噴水辺りで話をしてたらはんぺんが飛び込んできて何なら追いかけてたミアもエンカウントしててんやわんやしていた。
「課題曲出来た? ミアちゃん」
「僕は出来たよ。ってか僕は先輩だよ、ミアちゃんってなんだよ」
「そうだぞ侑さん、ミア師匠と呼べ」
「呼ばなくていい!」
「そういえば3回も弟子入り申し込んだんだっけ?」
「三顧の礼だ。失敗したけどな」
侑がその後ミアに作曲の相談を持ち掛けてミアもしぶしぶ答えていると、勘助もミアの話を聞いて意見を出す。
「そういえばさ……君はどうして僕に弟子入りを言ってるの?」
「ミアさんがいいから」
「そうじゃなくて! ……僕はテイラー家だけど、ギター専門じゃないよってことなんだけど」
なるほどと勘助が顎に手を当てる。侑も気になっていたが勘助はさらっと言った。
「ミアさんを超えるためかな」
「どういうこと?」
「私からしたらミアさんの曲は侑さんの言葉で表すと、ときめいたんだ。でもミアさんの信念は独りよがりっていうより自分の力を示すための孤高。私の反面教師にしてた親父の尊敬版みたいな感じでさ」
だからこそ、疑問なんだと勘助は菜々に言った反面教師が成功者の理論を上げた。
ミアもうすうす、勘助の父が有名な人だと気が付いたので勘助の父の名を聞いて納得した。ミアも聞いたことがある日本の伝説、山本信玄の息子である山本勘助。
だからこそミアは自分を超えるなんて馬鹿なことを考える勘助に不本意ながらも納得した。
「私はな、あの反面教師を否定して、みんなのためにを第一に考えて頂点に立てば自分がすっきりすると思っていた」
「それでも! なんかその考えも独りよがりな気がしてな、ミアさんの話とか聞いて少し思ったんだ。独りよがりな演奏でも成功はするって」
「だからその理由が知りたいし、それを知って視野を広げ成長したい。そのために私と完全ではないが逆の思想であるミアさんの音楽をたくさん聴きたいんだ。だから弟子にしてほしかった」
「タチが悪いのは、批判だけをして自分は何もしない人間だ。私がいくら独りよがりが嫌いでも、その人間にはなりたくない」
ミアと侑は静かに勘助の話を聞いていた。勘助自身もここまでよく自分の想いが口にできたものだと呟いたが、同時に本心だと言った。
ミアは一つ呼吸をして、勘助にあるものを投げた。勘助はそれを受け取り自分の手を見た。
「へぇ、Leftなんだ」
「私は大雑把に言うと左利きだ、これは?」
「音楽科の課題曲。もう一つ別の作るからそれあげる」
「そんな大事なものいいのかよ!?」
「僕から見て曲はそれだけじゃないしね。ベイビーちゃん、相手が何を求めているかを考えて曲を作ればいいさ」
「相手が何を求めているか……」
それだけいってミアは去っていった。勘助に残されたのは今ここにいる侑と左手にあるUSBメモリーであった。
☆
エマたち4人は最終的にQU4RTZというユニットを組んだ。かすみや彼方、エマ、璃奈の長所を4人で見つけて自分のことを教えてもらう合宿を行うことになり、一人一人で新しい色を作ることを目標に国際学園との合同ライブは成功した。
「みんな頑張ってるんだな、私も……俺もユニコーンと共に見つけないと」
「自分だけの可能性のギターを」
さらにはそろそろ自分の気持ちにも素直になってみようと思った勘助だった。