虹ヶ咲のシンガーソン軍師   作:初見さん

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第25話 神童覚醒

「合同開催は白紙かよ」

「……ええ、残念ですが生徒会長としてそうせざるを得なかったのだと」

「やらないってことか?」

「フェスティバルは延期です」

 

 勘助は栞子から事のあらましを聞く。菜々が決めたことだと栞子も肩を落とすが、勘助の答えは違っていた。

 

「断る」

「え?」

「栞子さん、俺に策がある。事が進めば合同文化祭が出来るかもしれないが、聞くか?」

「それは……本当ですか?」

 

 口調の変わった勘助に少し驚きながらも栞子が無言から何とか言葉を繋げた。勘助は栞子に頷く。

 だが、と一言前置いて言った。

 

「適性占いしてくれよ。俺の策が適性かどうか」

「それで、皆さんが救われるなら」

 

 栞子の言葉を聞いてから説明する。勘助自身の策を。

 そもそも勘助はこの話に疑問を持っていた。試しの今回の出来事を順番に話してみる。

 

 1, 合同文化祭を虹ヶ咲でやる。

 2, しかし参加者殺到によりキャパオーバーしてしまった。

 3, 今回の文化祭は合同辞めます。

 

 これが事のあらまし。だが勘助は3の部分だけ納得がいかないのだ。虹ヶ咲を中心にやるのは良い、だが、その城が陥落しただけであきらめるのは意味が分からないと。

 

「簡潔に、言ってもらっていいですか?」

「三船家なのに察しが悪いな。簡単に言うとこっちで入らない人数分、お前らも場所貸せよってことだ」

「まさか貴方……」

 

 一瞬で栞子は理解した。勘助曰、町が使えないならば、学校を使えばいいと。

 

「ここから近いのは紫苑女と東雲、後は藤黄。その他もあるがそこそこでかい学校から場所借りれば出来ないことも出来るようになんだろ。特に栞子さんのお姉さんも紫苑女学院だし、口くらい動かしてくれる」

「オンラインライブもありますから多少遠くても問題ないですね……」

 

 栞子は勘助の言葉に圧倒された。これならば許可さえ得れれば出来ないことはないと、栞子も考えた。そして虹ヶ咲学園だけでなくここ一帯のすべての学校すらも巻き込もうとするその作戦を、普通に提案する勘助という男の頭の回転も恐ろしく思った。

 もしかしたら第1回のフェスで町を巻き込む提案をしたのは勘助がいたから言えた技なのではとも。

 勘助は栞子に問題点は生徒会で何とかしてくれと言いながら、東雲学院らとの話し合いには参加すると約束した。

 

「この策を行うためには虹ヶ咲学園だけじゃなく、他校のみんなの協力も欲しい。それを踏まえてだ。どうよこの策、適性占いの結果は?」

 

 勘助が真剣に栞子の眼を見て聞く。栞子は栞子で少し考えた後、しっかりとこう言った。

 

「100点花丸です。流石武田軍の天才軍師ですね」

「だから占いは!?」

「まぁ、正直に申しますと問題はあると思いますが、今までよりはマシな案になるかと思います。だから、私の中では妥協点に感謝の点数も踏まえて100点です」

「本音は?」

「70点です」

「ダメダメじゃねぇか」

「でも天才軍師さんなら、100点にできると思います」

 

 栞子も歴史上の山本勘助を知っていたらしい。

 

 ☆

 

「よう、待たせたなみんな」

「勘助君、せつ菜ちゃんをお願い」

「歩夢さん、せつ菜を、菜々を説得してくれてありがとう」

 

 勘助が屋上に行くと少し泣いたであろうが、晴れ晴れとした表情を見せる菜々と同好会メンバーがいた。

 どうやら璃奈や歩夢を筆頭に菜々の暴走を止めてくれたらしい。

 

「幼馴染はちゃんと繋ぎ止めないとね」

「そうだな」

「……勘助さん」

「菜々、俺は一つとんでもない策を考えた。璃奈さんから聞いてると思うが、うまくいけば合同文化祭が出来る起死回生の案だ」

「それをするためには同好会メンバーだけでなく虹ヶ咲やほかの学校の人間にも協力してもらう必要がある」

「せつ菜、いや、菜々生徒会長頼む。俺に協力してくれ」

 

 そして勘助は頭を下げた。今回の策は勘助だけではできない。だからこそみんなで、菜々だけでなくいろんな人から協力を得る必要がある。

 故に、まずはこの学校の事実上のトップである生徒会長の許可を勘助は取りに来たのだ。

 

「……勘助さん、こんな私にもできるんでしょうか」

「それでもやるんだ。こんな俺でもこんな菜々でも、みんなと協力してやるんだ」

 

 そしてみんなのほうを向いて勘助はもう一度頭を下げる。

 

「こんなマネージャーと生徒会長だが、協力してくれ」

「私からも、お願いします」

 

 勘助に続いて菜々も頭を下げる。その瞬間、多種多様な大声での声援が聞こえた。急な叫びに勘助も菜々も顔を上げてぽかんとする。

 

「みなさん! 聞いてください! 我らが天才軍師の山本勘助様が、私たちのために破軍建返しの陣を作るそうですよ!」

「しずくさん?」

 

 しずくが持ち前の演技力で勘助を立てたかと思えばさらにみんなの声が一致して歓声になった。

 

「勘助様、指示をお願いします」

「璃奈さん?」

「なるほど、そういうことですか」

 

 勘助はいまいち理解を示してないが、菜々は気が付いた。ここにいる全員が、この山本勘助の場所を借りる作戦に同意したことを。

 そして勘助に菜々は命令する。

 

「生徒会長中川菜々が命じます。山本勘助さん。あなたにはこの合同文化祭のために多くの学校を取りまとめる役……即ち実行委員兼他校を取りまとめる大隊長役に任命します!」

「え、俺?」

 

 ☆

 

「これより大軍議を開始する」

 

 そして始まった虹ヶ咲生徒会および他校合同の話し合いで勘助は手腕を発揮する。

 まず現状の説明から入り策を一つ説明。そして一校一校の生徒代表のもとへ移動して東雲、藤黄、YGなどの生徒に頭を下げる。

 

「上から物を言っているようで申し訳ないが、頼む。力を貸してはくれないでしょうか」

 

 そう言って。その真摯な姿に反対者は誰もおらずみんな各々の学校と話し合って、くれることになったのだった。

 

「紫苑女もOKだな。鐘嵐珠さんのおかげだ」

 

 これで、すべての準備が整った。山本勘助はこの絶望的な状況を仲間と共に乗り越えたのだった。後は……やるだけである。

 

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