虹ヶ咲のシンガーソン軍師   作:初見さん

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第3話 可愛いとは

 お日様というのはいいものである。晴れた学校の庭で楽しく動画を撮影する中須かすみ、ギターがつぶれないように慎重にベンチに腰を掛けて親のように見守る山本勘助、なんか知らないけどすごくときめいてる高咲侑(たかさきゆう)、そして……

 

「あゆむだぴょぉぉん!!」

 

 顔を真っ赤にバニーちゃんしている上原歩夢(うえはらあゆむ)の姿があった。

 

 ☆

 

「カワイイコワイカワイイコワイカワイイコワイ」

「週末にできるようにしてくださいね」

 

 目が虚ろで呪術を唱える歩夢。苦笑いする勘助、侑。追い打ちをかけるかすみがいた。

 あの騒動の後丁寧に自己紹介をした歩夢、侑、勘助3人にかすみが加わり今はかすみの可愛い講座をしていた。

 

「でもせつ菜ちゃんかっこよかったな」

「せつ菜先輩を知っているんですか?」

「遠くで見ていただけだけどね」

「せつ菜はカッコいいからな」

 

 侑の言葉にかすみが返して勘助も同意する。

 

「勘助君はせつ菜ちゃんのこと知ってるんだっけ?」

「まぁ……知り合いだよ」

 

 勘助の言葉にかすみが本当かと怪しげな目で見つめるが、勘助はかすみを見なかった。

 

「可愛い、よりカッコいいですか」

「カワイイッテナニ?」

 

 かすみの言葉にさらにトラウマを刺激させられて、呪文を唱える歩夢だった。

 侑がそのあと、同好会の廃部の原因を聞いて、勘助に言ったように、かすみがせつ菜と仲たがいをした話もしながら会話が終わったように見えた。

 

「このままじゃ可愛いなんてまだ先で……」

 

 その瞬間、言葉を出す前にかすみが気づく、自分は可愛いを押し付けているということを。

 そこに対して考えながら勘助も一言。

 

「かすみさんは執念の塊だからな、気が付かずにみんなに押し付けてたのかもしれんな」

「可愛いだけがアイドルじゃねぇしな、クールとかイケメンとかそんなアイドルもいるだろ」

 

 全部が全部可愛いだけではないと、勘助はそう語るとかすみは肯定しながらも、静かに項垂れたのだった。

 

 ☆

 

「これより軍議を開始する」

「またですか、というか侑先輩と歩夢先輩は?」

「今日はかすみさんだけの軍議だ」

「かすみんですか?」

 

 勘助がかすみを呼び出したのは言うまでもない、かすみが可愛いの押し付けをしたのもありそれに落ち込んでいたため少し話をしようと思ったのである。

 勘助曰く、確かにスクールアイドルは多種多様であり、可愛い以外にも存在する。

 かすみのように可愛いスクールアイドルを目指すもいいが、それをみんなに押し付けてはいけないと至極まっとうな話をしていた。

 対してかすみは少しだけ納得がいかない顔をした。

 

「例えばアイドルで1曲合わせるならイメージとか統一しませんか?」

「確かに5人とかで同じ曲をやるならそのイメージに合わせねばならないが、ここで一つ提案がある」

「提案?」

「自分の中の可能性を信じて力を尽くせば、道はおのずと開ける……つまりソロアイドルだ」

「ソロアイドル!?」

 

 ソロアイドル、一人で舞台に立ち歌って踊る文字通りソロのアイドルである。

 失敗も成功も自己責任だが、支えてくれるみんなのことを考えればできなくもないと勘助は言う。

 

「人が人を信じるのは本当に難しい。それでも! 過ちを気に病むことはない」

「ただ認めて次の糧にすればいい、かすみさんにはその根性や特権がある」

 

 真っすぐな目でかすみに言う。かすみはかなり悩みながらも声を出す。

 

「そんな話し方で、人を従わせようとするなんてずるいです……」

「従わせる気はないさ。その可能性を君が持ってるだけ。それに……」

 

 一つの案だと言っただろと付け加えて勘助は最後の言葉をかける。

 

「私には生まれついた家というものがある。音楽の家だ。でも、ソロ活動はやったことないんだよ。ステージなんて一切出てない。だけど、かすみさんならできるはずだ。出来ないなら、私がサポートしよう、優木せつ菜と一緒に」

「……かすみんにできますかね?」

 

 席を立ち、ほんとに出来たらでいいさと、声をかけてかすみにリンゴジュースを渡す。かすみが飲んだリンゴジュースは少し酸っぱかったという。

 

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