「んで、まんまと追い返されたと」
「はい、でもやっぱり本心ではなさそうで……」
あの軍議の後、とりあえず誘ってみるかという勘助の案のもと栞子をスクールアイドルに引き込もうとするが、あえなく失敗。
それでも、少しムキになっていたからもしかしたら本意ではないのかもしれないというせつ菜の話からもう少し考えることにした。
「珍しいわね、勘助の策が失敗するなんて」
「安直に誘えっていえば、まぁこうなる可能性のほうが大きいでしょうね。失敗したな」
果林の言葉に勘助も反省した。薫子と話したときスクールアイドルの話が地雷原というとこまでは分かっていたが、ここまで拒否されるとは思っていなかったのだ。浅はかだったと己の考えを省みる。
「別にカンスケのせいじゃないっしょ?」
「そうだよ、先生だって姉の考えとして栞子ちゃんがスクールアイドルをやりたいんじゃないかって思うって言ってたから勘助君も私たちもそれに従っただけじゃん。誰が悪いとか無いよ」
愛と侑が勘助を慰め、それにみんなも頷く。ただ、勘助含む同好会メンバーは栞子は何かを隠しているということが分かっていた。
おそらくスクールアイドルをしてた姉の背中を見て育ったのもあって、スクールアイドルに何か因縁があるのだと勘助は予想した。
「割と栞子さんもシスコンだからな。姉の姿を見てこんな思いを自分はしないとか、みんなにさせたくないとか思ったのかもしれねぇな」
「遥ちゃんもいつの間にか大きくなってるし、きっと妹は姉の成長を見て尊敬する反面悪いとこはそれを教わるのかなぁ」
「反面教師だけに教わるですか?」
勘助の言葉に彼方が頷くと高咲赤ちゃんとロリコン愛が大きく笑う。
勘助には兄弟がいないが、栞子の言葉も分かる気がする。兄弟ではないが自分は親の背中を見て良いところと悪いところを見てきた。ここにいるみんなもそうだが、親をここまで追いかけてるのは勘助だろう。
「どちらにせよ……」
「やるかやらないかは本人次第、ですよね。果林さん」
「分かっているなら言わせないで頂戴」
「わかったから私が代わりに言ってあげたでしょう?」
「生意気言うのはこの口かしら?」
そう言って勘助の頬を少し強めに引っ張る果林。こんなことしてても勘助は果林が割と心配性なのを知っているし、果林も勘助が自身のことを嫌って発言しているわけではないと知っている。だからこそ、頬を引っ張る側も引っ張られる側も笑っていた。
「それでも放っておけないよ。きっと後悔するって思うんだ」
「……貴方たちって本当にお人よしね」
「果林さんも心配なくせに」
「勘助、また引っ張られたい?」
「割と痛いんでいいです」
果林と勘助のやり取りで少し和やかな雰囲気になる。せつ菜の言葉により自分たちの想いをもう一度伝えるという発言から、三船栞子と話し合うことにした。
☆
「三船さん、フェスティバルの間、休憩取ってないよね? 一緒に行こう!」
「私は責任者ですので、そんな時間は……」
「栞子さんが責任者で自由時間無いなら、大隊長の私はなんで休憩してるんだ?」
勘助の作戦通りだった。勘助は立場上大隊長、実行委員の責任者と仕事量もやることもほぼ同じなわけであるが、勘助は見回りを自由時間に使うことを決めていた。だって楽しみたいから。それが山本勘助だった。
大隊長の勘助が休憩を取れば栞子も必然的に休憩を取らなくてはならない。真面目な栞子を正当な理由で納得づける作戦だった。
「別に今のとこトラブルも起きてない、起こったら私が対応するから一緒に行こうぜ。私とあなたの仲だろう?」
「……ではお言葉に甘えて」
そして勘助たちは栞子を連れてフェスティバルを楽しんだ。
勘助が射的でみんなのほしいものを根こそぎ狙い撃ち落とすという荒業のおかげでお土産もゲットした。本人曰くニュータイプの性能は伊達じゃない。とのことだったが射的の的はバラバラでも銃自体は同じである。
夕方まで遊びつくした後栞子をある場所へ連れて行った。それは姉、薫子が過去にスクールアイドルとして立っていたステージだった。
「ここは……」
「三船さん、自分のやりたいことをしてください」
「三船さんが私たちにしてくれたように私たちも三船さんに何かしたい」
「ですが、私は……」
「やってみろよ。栞子」
みんながそれぞれ栞子に声をかける中で勘助も栞子に声をかける。
「今日はみんなの夢を叶える日だろ。お前の夢を叶えてみろ」
「……私の夢」
「でも、姉は努力しても泣いて、後悔していたんです」
「してないよ。後悔なんて」
声のする方を見ると姉である薫子が立っていた。薫子は確かに悔しかったが、今ではやってよかったと後悔していないとはっきりと言った。
「私は貴方が応援してくれたから頑張れた。だから今度は貴方を応援したいって思ってる」
「……っ」
ここで勘助が一手仕掛けた。
「なぁ、栞子さん。面白い占いが出来るんだがやってみるか?」
「占い……ですか?」
「おう、何でも適性占いらしい」
それは過去に栞子が勘助に対してやったものだった、栞子はまさかと思い声をかけた。
「貴方も適性が見えるのですか?」
「……まぁ、そんなとこ」
そして、勘助は栞子の有無を確認せず真剣に栞子を見た。そして答えが出たといい、その結果を伝える。
「うん、やってみねぇとわからねぇな」
「……え?」
「栞子さんにはもしかしたらスクールアイドルの適性がかすかに輝いている、それを前のほうにまで引っ張ってくるには一回歌って踊ってみてくれねぇとわからん」
簡潔に話そう、勘助には適性が分からない。それでも、勘助は真剣に茶化さず栞子にスクールアイドルやってみてほしいと占いとか関係なく伝えた。もはや占いは言葉の綾、勘助はただこう言いたかったのだ。
「スクールアイドルやってみろよ、栞子」
「一応聞きますけど……曲と衣装は?」
「衣装は服飾同好会に頼んだらあるよ!」
「簡単なダンスくらいなら教えるよ」
栞子の言葉に歩夢とエマが言葉を返す。だが曲はと尋ねると侑が安心してほしいと言った。
てっきり侑が作るのかとみんなが思ったが、さすがにこの時間では高速で用意できない。だからこそ侑は彼を指定した。
普通科も、音楽科も定期試験含め色んな試験がある。学科ごとにその内容の問題が出るので学年別ではなく学科別に順位が発表されるのだ。
侑はギリギリ最下位ではなかったが、赤点ギリギリである。そんな人が高速で曲を作れるかと言われると難しい。まして侑は大器晩成型でゆっくりじっくり時間をかけて良い曲を作る人間である。
だが、その音楽科で2人の生徒がトップ争いを繰り広げてるのは音楽科では有名な話。その一人はミア・テイラー。テイラー家の娘ということもあり勘助が過去に弟子入りして断られた経験がある。それゆえに曲を作るスピード、完成度は天才的だ。
それではミアが曲を作るのかと言われるとそうでもない。ここにミアはいない、というかフェスティバルにあんまり興味を示していないのだ。それではもう一人の生徒が必然的に曲を作ることになる。
ミアと互角の成績で立ち向かい、スピードを入れると若干完成度はミアに劣るが、高速で曲を作れる尚且つここにいて栞子にスクールアイドルをやってほしいと心から願う人間。
その人こそ……
「曲作りなら任せてくれよ。三船さんに合うように軽音楽部の私のファンからありがたいことに三味線と横笛借りたんだ。あと和太鼓とか」
軽音楽部になぜ三味線と横笛があるのか大層気になるところだが、これを使いながら山本勘助が曲を作る。和風の歌詞に日本舞踊も入れようと。ウキウキ気分で栞子の曲を作る気満々だった。
「なんか、アタシたちの曲作るよりウキウキしてない? カンスケ」
「愛さんそりゃそうだろ、久しぶりに丸々一曲俺が担当するんだぜ? 気合も入るよなぁ!」
「栞子、ぼさっとすんな! 歌詞考えるぞ!」
「え、勘助さ……ちょっと!? ええ……」
勘助のNTDモードが覚醒したせいもあり、栞子を強引に連れまわした。
栞子は自分にできるか不安だったが、勘助と同好会メンバーがやってみろとごり押した。
そして、栞子の夢を叶えるために、勘助が本気で作った曲。
EMOTION
栞子のスクールアイドルとしての第一歩である。