「最終日か、初手はランジュ。あいつを超えるための曲を作らねばならぬ」
「いやもうあらかた作ったんだけどね」
「だが、納得いってないんだろ」
「……そうだよ行き詰ってる」
「今日は私も手伝おうか?」
「いや、勘助君も忙しいでしょ?」
「別に。大隊長なんて呼ばれたら行けばいいし」
「嘘でしょ!?」
勘助と侑は部室内で最後の発表曲について話をした。完成はしてるが、やっぱり違うと侑が何度も書き直していたので終わってなかった。一方勘助は出番もファン対応も終わり、残りは大隊長の仕事のみだが、せつ菜や栞子を筆頭に生徒会軍団が有能なため、虹ヶ咲のトラブルが起きたら生徒会軍団が、他校と何かトラブルがあれば文化祭実行委員が行くといういい意味でお払い箱になっていた。
「栞子さんからも侑さんのサポート任されたしな」
「栞子ちゃんが?」
栞子はあのライブの後、このフェスティバルが終わったら同好会に入るということでみんなから下の名前やあだ名で呼ばれることになった。そんな栞子が勘助にこう言ったのだ。
勘助は実行委員と軍師系スクールアイドルの二束わらじに最後の歌を作る侑のサポートがある。何より最終項目を決めずに最後の最後で台無しにされるより、今すぐ侑のもとでアドバイスして最終項目を作って来いと。
簡潔に言うと半ば追い出された。それでもそれは栞子なりの優しさだったのだろう、一見のほほんとしてる勘助もトラブルがあればすぐにそれに一番対応できる人間を呼んで人同士のわだかまりを避けるというある意味精神的にきつい仕事が多かった。だからこそ栞子は最終日のある程度落ち着いた時間を勘助に渡したのだ。
「たくっ、誰が軍師系スクールアイドルだ。私はただのシンガーソングライターだっての」
「あはは、軍師系スクールアイドルって……そういえば勘助君と栞子ちゃんってなんでそんなに仲いいの?」
「家が特殊だった、三船家と私の母親の三条家が所縁あったんだとさ。後、お互い波長が合った」
「二人ともやるときは真面目だもんね」
栞子は常に真面目だが、勘助はオンオフしっかり分ける真面目。それでもお互いバカ真面目なのには変わりなかった。
軽く話してから侑と勘助は最後の演目の曲を協力して作ることになったが、9割侑の曲で1割は勘助のアドバイスを入れて勘助も歌詞を覚えることにした。
そして数十分後……
「侑、勘助、もうすぐランジュのライブ始まるわよ」
「トキメカナイヨォ!!」
「侑さんときめかないのはわかったけど頼むから、抱き着かないでくれ!? なんか当たっちゃいけない膨らみが当たってる!?」
ときめきを探して精神がやつれ、なぜかジャージをの上を脱いで勘助に抱き着いてる侑と顔を真っ赤にして大声で叫んでる勘助の姿がそこにいた。
「か、果林さんちょうどよかった! 侑を止めてくれ! あれ!? 果林さんなんで笑顔なんです……こら静かに扉閉めるな朝香果林! 栞子助け……ちょっとごみを見るような眼で見ないで!? 彼方さぁぁん!! エマさぁぁん!」
この後最終的に恥ずかしさをリミッター解除した勘助が数分気絶したという。
☆
そんなわけで侑と勘助は栞子の提案により気分転換として、フェスを回ることにした。
「大事なフェスの曲なんだけどみんなの素敵なところとかファンのためとか、同好会にいる答えにふさわしいかとか考えると自信なくしちゃったんだ」
「とりあえず肩の力抜けよ。気張るな俺も頼れ」
「それに侑ちゃんの曲なら、自信をもって歌えるよ」
侑の悩みに勘助と歩夢が声をかけてそれを筆頭にみんなも声をかける。
少し力が抜けたのか、侑も少し笑顔になった。
その後、ショウ・ランジュのライブを見た勘助がまたも感動し、
「……俺やっぱりミアさんと曲作りたいな」
「しかもランジュさんこの前よりうまくなっていた」
先にプレッシャーをかけられたという果林だが、こっちにも仲間がいるんだ出来ないことなんてないはずだ。
「というわけで私を家臣にしてください」
「4度目だぞ! しかも土下座! プライドってもんがないのかお前は!?」
「プライドなんて……そんなもんでいい曲が作れるかよ!」
「まぁまぁ、勘助君」
みんなと別れて侑の様子がおかしかったので勘助は何も言わずに侑について行った。そこでミアにあった勘助はさっそく土下座をぶちかましたのであった。
「んで、ベイビーちゃんはどうかした?」
「うまく言えないけどランジュちゃんで心がいっぱいになったんだ」
「ランジュは最高のプレイヤーだ。ランジュ以外にもそんなスクールアイドルがいる」
「なんか、ミアさん変わったな」
「僕が? Jokeにしては面白くないね」
「僕たちは求められる曲を作って評価されるだけでいいじゃないか」
「みんな喜んでくれるさ」
勘助はミアの態度に違和感を感じた、なんだかすごく丸くなったような。
「勘助」
「なんだ……いや、先輩だからなんですか、かな?」
「別にいいよいちいち指摘するのもめんどいし……」
「この前のライブ、すごかったよ」
「……っ!?」
勘助は驚愕した。これがあのミア・テイラーだったかと、プライドの高く、人なんて絶対褒めそうにない人間が勘助を褒めた。
正直何があったか知りたかった。それでも、今は侑のときめきケアが先である。直にお礼を言った後、侑の様子を見る。
「……そっか、私はスクールアイドルの音楽だけじゃなくて同好会のみんなの姿にときめいていたんだ」
「みんなに近づいて、私のことを伝えたい! 勘助君、ミアちゃん来て!」
侑が語りだしたかと思えば、侑に手を引かれ、勘助とミアが連れてかれた。部室に戻り侑の案を聞いたミアは冗談だろと英語で言ったが、勘助は好きにしろと言った。
「手伝ってくれるよね」
「侑さんの作る最高の曲だ。そのために私にできることならなんでもしよう」
「ベイビーちゃんも勘助もめちゃくちゃだ……」
そうして勘助が夢に見たミアと侑この音楽科3人で曲を作り上げるという異色のプロジェクトが発揮された。
最終演目を迎える。いよいよ最後のステージである。
「次が最後の曲になります!」
かすみの声にみんなもある人たちがやってくれたから成長できたと、ここから次の夢があるとそしてみんなの言葉が終わった瞬間、客席の後ろにスポットライトが当てられた。そこにいたのは珍しくデストロイモード、右利きのアコースティックギターとユニコーンのレフティーギターを背負った勘助とピアノに向かう侑がいた。
勘助に頼まれた課題は、侑と一緒に生演奏して侑が緊張するのを抑えることだった。
「行くよ、侑さん」
「お願いね、勘助君」
勘助は2つのギター置きにそれぞれのギターを置いて侑に一言、そして一息吐いて勘助の合図でピアノを弾く侑とギター置きから肩にかけたエレキギターを奏でる勘助。
そして侑が弾いている間にものすごい勢いでエレキをギター置きに戻したと思えば今度はすぐ肩にかけたアコギで優雅に勘助の歌うパートを弾き語る。
「これがアコギとエレキの両方弾き。ギタリストの最高点技リターンだ、今回の曲名に合わせて勢いでやってみたぜ」
この技は元室町幕府将軍、足利義輝の伝説から生み出したもの。自分の持っている名刀を畳に数本突き立てることで、手持ちの刀が刃こぼれしても素早く次の刀を手に持って敵を切るという伝説があった。
勘助もそれを真似てユニコーンとデストロイ、二本のギターをパートごとに弾けるようにギター置きを畳代わりにしたのだ。危険ですのでマネしないでほしい。
そのかいもあってか最後はしっかりとフィニッシュを決め、第2回スクールアイドルフェスティバル合同文化祭は大成功という形で幕を下ろしたのだった。
「璃奈、君の瞳に乾杯」
「勘助さんダサい」
「だからかっこつけさせてよ!?」
「普通の勘助さんが好き」
「……俺も璃奈が好きだよ」
「かすみんもう口の中甘すぎてジュース飲めないんですけど」
「いいじゃない、たまにカップルのイチャイチャにムカつくこと多いけど、この二人ならほほえましいわ」
「果林ちゃん怖いよぉ」
その後の打ち上げで璃奈と勘助の夫婦漫才をつまみに同好会メンバーが美味しいものを食べたのは言うまでもない。