虹ヶ咲のシンガーソン軍師   作:初見さん

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第31話 また泊まるの?

 勇気を出して課金をしたので今日の昼食はお祝いにしましょうか。と勘助はいつもの3重箱の中にもやしを敷き詰めていた。それを見た璃奈がかなりドン引きしたが、事情を聴くと納得した。どうやらランジュの件で勝ったチケットを無駄にしたので、貧困学生としてしばらく生きなければいけないとのこと。

 

「……まぁ、金より買えないものは存在するからな。後悔してねぇよ」

「ねぇ、勘助さん私がお弁当作ってきてあげようか?」

「そういえば璃奈も一人暮らしみたいなものだから料理できるんだっけ?」

「うん、お金にも困ってないから二人分作るくらい手間じゃないよ」

「俺は何を返せばいい?」

「貧困学生から抜け出したらデートの時にご飯奢ってくれればそれでいい」

 

 勘助はあまり納得しなかったが、今までのお礼もかねてという璃奈の言葉にうなずくしかなかったのだった。

 その後璃奈と勘助の弁当箱が同じになったのを同好会からからかわれるのは別の話。

 

「勘助さん何食べてるの?」

「……すまん、璃奈。弁当はとてもおいしくて完食したんだが、お腹すいてつい美味しい棒を100本食ってしまった」

「量増やしてあげるから節約して」

「……ごめん」

 

 勘助はこの日、本気で璃奈に謝った。

 

 ☆

 

「というわけで新入部員だ」

 

 勘助の言葉に歓迎の声が広がった。ミアもランジュも栞子も驚いている。

 

「まだまだ分からないことばかりですけどよろしくお願いします」

 

 そう言って入部届をせつ菜に渡そうとするが、部長じゃないとせつ菜が断る。次に侑のもとに言って断られ、勘助のほうに行っても断られた。勘助から部長はかすみだとというと、少し不思議そうな顔をしながら入部届を渡したのをかすみは悔しがった。

 

「ちなみに勘助さんは副部長ですから間違ってはないですよ」

「え?」

 

 せつ菜が勘助に言うと勘助は情けない声を上げる。みんなも勘助につられて疑問に思うが、いろいろ話しているうちに理解した。

 勘助がバイト中にみんなの意見でかすみを部長、勘助を副部長にすることを決定していたのだが、誰も勘助に伝えていなかったのである。みんなはせつ菜が言ってくれると思っていた、だがせつ菜も生徒会で忙しかったので、伝えるのを忘れてしまいまさかのここまでの期間、勘助が知らなかったというわけだ。

 

「嘘でしょ!?」

「事実だよ。勘助さん」

「まぁ、言ってなかった私たちが悪いから……」

 

 結局改めて副部長を勘助は許可した。

 

 ☆

 

「嫌だ、断る、死にたくない!」

「死にませんから行きましょうよ!」

 

 勘助がみんなの発言に久しぶりに駄々をこねたのでせつ菜が収める。というのも、かすみがしずくの家を使って連休にお泊り会をすると言いだし、勘助も来いと言ったからだ。

 これに対して勘助は全員女性であることと新入部員との社会的体裁があるため断固拒否。

 栞子は淫乱せつ菜よりましだから問題ない。と言ったが、勘助はさらに拒否した。

 

「別にいいんじゃない? 前の合宿の時は参加したんでしょ? むしろランジュに魅了されてくれないと困るわ!」

「なんでそんなに自信満々なんだこの人……ミアさんも璃奈も何とか言って……」

「ミアちゃん、勘助さんは私が見ておくからいいかな?」

「まぁ、璃奈がそこまで言うなら仕方ないね」

「すでに了承されとる!?」

 

 そんなわけでしずくの家でお泊り会開催です。勘助はギリギリまで駄々こねたが、璃奈に上目遣いされたので降伏した。

 

 ☆

 

「今日は、かすみんが部長としてみんなを引っ張っていきます」

「頼んだ部長。私はもうだめだ」

「勘助先輩が死んでる!?」

 

 ぐでっとしてる卵みたいに溶けた勘助を見ながらかすみは突っ込んだ。

 勘助は心身気合を入れないとまずいからと気合を入れなおして、かすみを引いてショッピングする。

 歩夢たちと勘助は合流し、この帽子なら侑も似合うと言ってくれるなどと歩夢に侑の話もしながらショッピングを楽しんだ。

 ちなみに果林とミアが迷子になったのでエマに頼まれた迷子GPSでなんとか見つけることが出来た。

 その後はみんな集まりバレーボールをしたのだが、

 

「うきゃん!?」

「大丈夫かしずくさん!?」

「しず子球技苦手だから……」

「おのれしずくさんの仇だ、一回だけ打たせてもらうぞ」

 

 男である勘助はリベロとして一切アタックしないが、しずくの敵討ちのため一度だけアタックすることに。

 

「勘助さん抑えてくだ……」

「垂直落下式スカイラブハリケェェェーン!!」

 

 せつ菜が勘助に注意を言う前に勘助は地面に向かった全力でボールを叩き落とした。そのとたん轟音が響き、砂が舞い散ってボールが地面を抉るように穴をあけていき……

 

「やっべ」

 

 クレーターの完成である。流石にせつ菜に怒られた。

 

「勘助君ってすごいパワーだね……」

「そういえばこの前部室でスチール缶を親指と人差し指で潰してました。利き手じゃないほうで」

 

 歩夢の言葉にしずくがぶつけた鼻を抑えて答える。次から力仕事は勘助に任せようと誓った同好会メンバーだった。

 

 ☆

 

 列車とバス乗り次の目的地に向かう次はしずくの家だったが、もはや豪邸だった。

 

「初めて人の家に上がるので緊張します」

「ランジュもよ」

「お邪魔します」

「どうぞ勘助さん」

「勘助さん!?」

 

 栞子とランジュの不安をよそにさっさと中に入る勘助。驚く二人だが、それは同好会メンバーも同じだった。

 話を聞くと鎌倉でバイトをしているとき璃奈と付き合う前は、少しだけ家に上げてもらい叔父の仕事やバスの時間を待たせてもらったり、夕食をごちそうになったりしたそうだ。

 

「あの時は助かったよしずくさん」

「いえ、私の母も恩人だからと張り切ってしまって。勘助さんが大食いでよかったです」

「美味しいからなしずくさんのお母さんの料理は」

 

 そう言って勘助は嫉妬しながら腕に抱き着いてる璃奈を撫でながら、しずくと共に中に入る。すると勘助の視界が急に真っ暗になった。

 

「勘助さん!?」

 

 しずくが心配してくれたが、勘助はしっかりと両足で踏ん張って立っていた、この重さと鳴き声、間違いなくあの子だ。

 

「久しいな、オフィーリア」

 

 勘助がそう言うとオフィーリアと呼ばれた犬は一つ吠えた。

 

「もう、主人の私より勘助さんのほうに行くなんて……」

「そう怒らんでやってくれ、久しぶりだからうれしくなったんだろ」

 

 オフィーリア。しずくが大事にしている犬である。勘助が初めて来たときも、勘助が動物に好かれるのもありすぐ仲良くなった。今も勘助のことを忘れていなかったらしく全力で甘えてきた。

 その後、勘助はしずくの母と久しぶりだという会話をしながら、今日はよろしくお願いしますと一礼し、夕食を食べた。

 

「相変わらずうまいな」

「手巻きって難しいわね」

「まぁ、丁寧に作るより自分が食べられる量で少しずつ楽しみな」

 

 勘助はそう言ったが、みんなが勘助の手元を見ると、まるでお店で作ったかのようにきれいに米と具材が丸められていた。これを見てみんなは思った。

 

 超でかい恵方巻だと。

 

 食事後にゲームをしたがほとんどかすみが負けまくった、勘助もかすみの次くらいで二人で本当に最下位同士が白熱したらしい。

 

「ゲームは将棋と囲碁しかわからん。コツがつかめん」

「でも前ジョイポリスでうまくやってなかった?」

「運動系のゲームならな。ジェンガとか集中力持たない」

「では、今度将棋を一局しましょうか?」

「栞子さん頼むぜ」

 

 それを見かねた栞子が勘助に次回将棋の勝負を持ち掛けたが、三船姉妹諸共葬って勘助が圧勝するのは別の話。

 

 ☆

 

「かすみさんちょっといいか」

「勘助先輩? どうしたんですか?」

 

 少し話があると勘助はかすみを誘った。勘助が話したいのは部長の件だった。

 

「かすみさんは今頑張って部長らしくいようとしているが、私はもうすでにかすみさんを部長だと思っているぞ」

「え?」

 

 思えばと、勘助はかすみと出会った時を思い出す。勘助がせつ菜の件で怒っており、叫ぶのを我慢できずに叫んだのをかすみに見つかった。だがそのおかげでかすみと知り合い、お互いの利害が一致して、同好会を作った。

 

「もしかすみさんが諦めてたら、俺もせつ菜をスクールアイドルの世界の戻せなかっただろうな。みんなと会えてないんだから」

 

 あの時かすみを中心に、しずく達も動き合流してみんなでせつ菜を連れ戻した。そんな形であれかすみのおかげだと勘助は語る。

 

「改めてお礼を言いたい。かすみさん、同好会を作ってくれてありがとう。せつ菜を引き込んでくれてありがとう。かすみさんがせつ菜に戻ってきてほしいと言ってくれたからせつ菜もここにいる」

「そして、俺を同好会メンバーに入れてくれてありがとう」

 

 そう言って頭を下げた。沈黙が続く、しばらくしても返事がなかったので顔を上げるとかすみは号泣していた。

 

「勘助先輩。かすみんの方こそありがとうございました」

 

 かすみは言う、自分は頭が悪いし、ムキになって同好会を作ろうとしたが、よく考えれば一人だとこんなバカの頭じゃ何も考えられなかったと。勘助の知恵、侑や歩夢と一緒に、考えてくれなければきっとかすみでも諦めていたかもしれないと。

 勘助と同じだった。勘助もかすみも、お互いに勇気と知恵を貰っていたのだ。

 そして、大泣きするかすみを勘助は抱きしめ、頭をなでながら勘助自身も涙を少し流したのだった。

 

「……璃奈さんいいんですか? 恋人がほかの女の子を抱きしめてますけど」

「せつ菜さん。今日だけは、許してあげて」

「ふふっ、そうですね」

「明日いっぱい甘える」

「勘助さんをよろしくお願いします」

「うん。一生幸せにする」

 

 以上が勘助とかすみ、璃奈とせつ菜のお泊り会の夜だった。

 

 ☆

 

「猫を見つけてね」

「雑だな」

 

 翌日璃奈の開発した道のどこかにいるバーチャル猫を見つけるゲームを全力で楽しんだ。優勝は侑と勘助だったが、勘助は辞退した。理由は簡単、侑の方が若干全部見つけるのが速かったからというのと、勘助がほぼ動いてるだけでバーチャル猫が寄ってきてゲームにならなかったからだ。

 

「バーチャルですら動物が寄ってくるとかもう何でもありだな」

「これは私も想定外。璃奈ちゃんボード『びっくり』」

「とりあえず優勝は侑さんにしてくれ」

「あはは……なんか腑に落ちないけどそういうことにしておくね」

 

 そんなわけで、侑のお願いを聞くことになったのだが、そのお願いは……

 

「みんなの曲を作ってるから歌詞をつけてくれないかな?」

 

 みんなが侑の言葉に頷いた。

 

「そういえば勘助君は何をお願いしようとしたの?」

「私は……これだ」

 

 そして勘助が侑に見せたのはUSBだった。どうやら音楽バカはここにもいたらしい。

 結局侑の曲だけでなく同着だった勘助の曲にも13人で曲を作ってもらうことになったそうだ。

 

「はいポージング!」

「オリバー!」

「勘助君そのポーズ何!?」

「侑先輩あの有名なオリバーポーズですよ」

「全く分からないよ!?」

 

 その後、花火をしながらランジュのお願いとしてみんなで笑顔で写真も撮り、良い歓迎会の旅行になったのだった。

 

 

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