虹ヶ咲のシンガーソン軍師   作:初見さん

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第32話 卒業

「大ニュースです! スクールアイドル同好会が部になるらしいです!」

「部の申請は自由じゃなかった?」

「ええ、そうですね」

 

 かすみの大ニュースは勘助とせつ菜の一言のおかげで一瞬で終わった。

 

「ですが部にするのも可能です。実績もあるので」

 

 栞子曰、部になると専用のトレーニングルームが使えたり公式大会に出られたりするらしい。つまりラブライブ! に出られるそうだ。

 

「まぁ、そこに関してはおいおいだな。俺はまだこの部室が好きだからここにいたい」

「勘助さんの言う通りですね。それよりも私たちは、定期試験を頑張りましょう!」

 

 せつ菜の言葉に何人か苦い顔をしたが、勘助はミアの方を向き、今度は同着にしてやると宣言した。

 

「……ん? メール? これは……」

 

 その時、勘助が携帯を見て右手をグーにしたのを璃奈は見逃さなかった。

 

 ☆

 

「勉強なんてなんでするんだろうな」

「そんなこと言ってるならその問題集を高速で解くのはやめればいいのに」

「バイビーちゃんそこ間違ってる」

「ミアさん私は?」

「勘助に教えることはないよ……そういえば勘助」

「何だ?」

 

 勘助にミアが少し耳打ちする。勘助は眼を開いたがすぐにばれたかと言ってた。

 

「どうかしたの?」

「いや、私のこれからが決まっただけだ」

「これから?」

 

 その先は内緒だと侑の鼻に指先を一つ立てたのだった。

 

 ☆

 

「部のこと決めちゃいませんか!」

「俺は同好会でいいと思う」

 

 かすみの言葉にみんなで部にするかをアイスとか食べながら、決めることになった。勘助は即刻答えを出したが、みんなは悩む。侑はどうして勘助が悩まないのか不思議に思った。

 

「私が、私たちがここにいるのは、ここまでやってこれたのは楽しくスクールアイドル活動をしてきた同好会だからだ。別に部が嫌ってわけじゃないけどさ、なんか部って言うと違うかなって」

 

 勘助の言葉に少し考えたらエマや歩夢も同意する。

 

「私もこの場所じゃなければスクールアイドルやってません」

 

 栞子の言葉に侑もミアも賛成する。結局どんなことがあっても自分たちはスクールアイドル同好会だと、そう決めたのだった。

 

 ☆

 

「菜々さんはこれから生徒会どうするんですか」

「スクールアイドルに専念しようと思ってます」

 

 栞子の言葉にせつ菜も返す。せつ菜がスクールアイドルに専念したいということは、必然的に生徒会長は誰かに明け渡すことになる。

 

「やりませんか? 会長」

「私がですか?」

 

 せつ菜は栞子が生徒会長に指名した。栞子は戸惑うがせつ菜は真っすぐ栞子を見た。

 

「栞子さんならできます、その代わり一つお願いがあるんですけどいいですか?」

「私が……というかお願いですか?」

「実は最近生徒会の人手不足が露見しまして……会長、副会長、書記は固定ですが、庶務も一人迎えることなりました」

「庶務ですか、確かにその話は良いと思います」

「そこで、庶務として一人推薦したい人がいるんです」

 

 そして、せつ菜はある人物を指名した。その人はきっと栞子が生徒会長になっても支えてくれるだろうと言って、その人の名を出した。それを聞いた栞子は驚いたが、すぐに笑顔になった。確かにあの人なら自分の支えになってくれると。

 

「私、決めました。生徒会長に立候補します!」

 

 ☆

 

「珍しいですね果林さん、屋上に一人なんて」

「勘助……またギターを弾くの?」

「ええ、ギターは私の専売特許ですから」

「変わらないのね、貴方は……いえ、貴方も変わってゆくからそう言ってるのね」

 

 勘助は物思いにふけた果林に疑問を感じた。勘助の経験上果林はどうしたと聞いても答えてくれない。ならば気が付かなければならない。なんだ、果林は何に悩んでいる……深く考えようとしたら果林が口にした。

 

「悲しいのよ、私」

「え?」

「私と彼方、それにエマは今年で卒業でしょう、同好会メンバーと言えどもいつか別れが来るわ」

「それが、悲しいんですね」

 

 果林は自称気味に笑い頷いた。勘助は少し悩んでから果林に言葉をかける。

 

「別に悲しむことはないんじゃないですか?」

「え?」

「貴方には彼方さんやエマさんがいるでしょう。いなくても同好会メンバーがいつでも連絡取れる」

「果林さんはこれから俺たちに託すんですよ。3年生のパフォーマンスや考え方を果林さん、あなたは俺たちに託すんです」

「だから俺は、俺たちはそのバトンを受け取って、次は俺たちが1年生に託す。世界ってそういう風に出来てるんです」

 

 難しいことを言ったと一言勘助は謝り、はっきりと伝える。

 

「果林さん。俺も果林さんと別れたくない。寂しいから。だから俺は、果林さんたちと繋がる方法を考えた」

 

 そう言って勘助は一通のメールを果林に見せる。そこにあった言葉に果林は驚いた。だってそれは……

 

 合格。

 

 そう書かれていた。勘助が見せたのは果林の所属事務所の合格通知だったからだ。

 

「勘助、貴方まさか……」

「これで、俺が果林さんとみんなの橋渡し出来ますよね」

「俺はシンガーソングライターとして、果林さんの事務所の歌手部門に所属します」

 

 ☆

 

「ええ!? 勘助先輩が果林先輩の事務所に!?」

「すごいです勘助さん!」

 

 勘助の突然の報告にかすみとしずくを筆頭に、同好会一同驚きの声を上げる。勘助は次から見習いではあるが果林の所属する芸能事務所で働くことになった。

 きっかけとなったのは叔父の言葉。もともと叔父は勘助にのびのびとお金のことに気にせず生きてほしかったらしい。そこで、勘助のしたいことを進めたところ、勘助は自分の夢を叶えられて尚且つお金に困らない芸能事務所に所属することを決意した。

 そして、叔父と一緒に条件を見て、偶然にも勘助の学業優先という条件が一致した事務所を受けた。つまり果林に内緒で果林の事務所を受け、合格したのだった。

 

「やっぱり合格したんだ」

「りな子は知ってたの?」

「彼女に隠し事は無しだからな。みんなにはイベントもあるし、私が落ちたらあれだからって口止めしてたんだ」

 

 そう言うとみんなは納得する。これからやるイベントで仲間に悲しいことが起きたらそれどころじゃない。お人好しなみんなの性格をよく見てる勘助はあえて言わなかったのだ。

 そんな話にゆっくりと栞子とせつ菜が手を上げる。

 

「どうした? 二人とも」

「大変申し上げにくいのですが……」

 

 そう言って栞子が勘助に話す。自分が生徒会長になりたいこと、せつ菜が人手不足から庶務として空きが一つ新しく増えるらしいこと。そしてその空いた場所を勘助にやってほしいこと。

 

「私が?」

「勘助さんなら大隊長としてフェスティバルだけでなく生徒会の仕事も両立してお手伝いをしてくれたので、生徒会の仕事を任せるうえで適任かと思ったのですが……」

「芸能事務所に同好会、学業もあると難しいですよね」

 

 栞子とせつ菜の言葉に少し考えて勘助は首を縦に振りやるよ。と言った。

 

「正気ですか!?」

「仕事は生徒会長のほうが多いだろ、全体的な仕事以外ならあまり負担はかからんと思うぞ、今も同好会と学業は何とかなってるしな」

「それに、仕事だって今まで鎌倉まで行ってた仕事先がここ周辺まで近くなっただけだし、私からしたら別に問題ないんじゃないか?」

 

 勘助のあっけらかんとした言葉に栞子も息を整えて、それじゃあとお願いした。

 結局勘助は学業と同好会、生徒会に芸能界という4足わらじを普通に成し遂げたので全く問題はなかったらしい。

 

「あ、そうだ。みんなに次のライブの案があるんだけど……」

 

 勘助の話が終わってから果林は同好会のメンバーでファーストライブの案を言う。それはソロもユニットもすべて披露するデカ盛りメニューだった。

 

「なんですかそれ最高じゃないですか」

「悪くないんじゃない?」

 

 そして、みんなで考える虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会ファーストライブの内容を……

 ちなみに勘助のテストの点数はミアと満点同着だったそうで、教師や生徒からその二人だけ化け物扱いされたとか。

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