虹ヶ咲のシンガーソン軍師   作:初見さん

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番外編4 日常編

【果林と勘助】

 

「宜しくお願い致します。朝香果林さん」

「ええ、こちらこそよろしくね。山本勘助君」

 

 勘助は果林と水着で対峙していた。そもそもの発端は勘助のプロフィールに勘助の担当マネージャーがとある点に気が付いてしまったことだった。その点とは……

 

「同じ学校だからと言ってまさか夏雑誌の特集写真を果林さんと取るなんて恐れ多いです」

「あら、別にいいじゃない。最近写真集とか撮ってるなら、私とツーショットくらいわけないわよね」

「果林さん現役じゃないですか、俺は音楽のサブタスクですよ」

 

 勘助からすると芸人さんがアニメの声優をやらせていただいている感覚だった。音楽の仕事も多い勘助だが、撮影はサブタスク。多様性のこの時代で勘助もいろんな仕事に挑んだが、現役モデルと一緒に写真に移るのは少し気が引けた。

 こうして、監督の指示に従って写真を撮られたが、みんなは果林の美ボディだけでなく勘助の筋肉に興味津々だった。

 

「勘助君キレてるよ!」

「果林ちゃんセクシー!」 

 

 等の声が聞こえて鼓舞してくれるので、勘助もやりやすかった。偶に、取れたて新鮮肩メロンとか、前世は手榴弾ですかなど、鼓舞と言えない言葉が聞こえたりしたが、勘助と果林は一緒に写真をなんなくこなした。

 

 ☆

 

「なんですか今月の学生の夏特集、果林先輩は18歳未満禁止みたいな妖艶な笑みなのに勘助先輩はボディビルしてるとか意味わかりませんよ」

「私もなんでOKなのか分からん」

「まぁ、いいんじゃないかしら?」

 

 そこに写っていたのはオリバーポーズを決める勘助とモデルらしく座りながら妖艶なポーズを決める果林だったらしい。そしてコメントには18歳未満禁止のセクシー系スクールアイドルとプロテイン飲んだカメハメハ大王という言葉が書かれていたという。

 

【侑と勘助withミア・テイラー】

 

「侑さん、次回のTOKIMEKI乙女のステージなんだけど」

「え? まだやるのあれ」

 

 侑の言葉に勘助が頷く。どうやら、第2回スクールアイドルフェスティバルの際に組んだユニットが大好評だったらしく、特に音楽科の生徒がコンビを組んだと大騒ぎにした音楽科生徒本人たちがまたやってほしいと言い出したのでやりたいと勘助が言った。

 侑はしぶしぶだったが、ファンの期待に応えるのもスクールアイドルだと言った。

 

「私スクールアイドルじゃないんだけど」

「俺もだが」

「軍師系スクールアイドルじゃないの?」

「ときめき系スクールアイドルと侑さんが認めたら私も認めよう」

 

 勘助の言葉に侑は否定しながら笑う。そういえば軍師系シンガーソングライターからなぜか軍師系スクールアイドルにされた勘助の理由は未だに分からない。

 

「まぁ、みんながそう言うならやろうか。曲はどうするの?」

「ピアノとエレキが共鳴する曲がいいな」

「それならバンド組まない?」

「バンド?」

 

 侑は提案する、ピアノとギターで演奏するのはいいがリズム隊も1人入れようと。それを言ってしまえばTOKIMEKI乙女のユニットが崩壊すると思った勘助だが、女の子連れてくれば乙女だから大丈夫という侑のとんでも理由で一人お願いすることになった。そもそも勘助という男がいる時点で乙女とは程遠いが。

 

 ☆

 

「どうして僕がこんなことを」

「頼むよミアさん、TOKIMEKI乙女のサポートベースがいないとこの曲は成り立たないんだ」

「そうだよミアちゃん。勘助君もミアちゃんなら最高な演奏ができるって言ってるんだ」

「……まぁ、そこまでこの僕の力が必要ならやってあげてもいいけど」

 

 ミアテイラーはちょろかった。こうして次のTOKIMEKI乙女のステージには、サポートベースのミアをおいて、また最高潮のステージを作ることに成功した。その後、多くのファンからミアも入れてほしいと言うお便りを貰ったミアは時折TOKIMEKI乙女のサポートギターをする反面、ランジュ率いるR3BIRTHとミアを取り合うのは別の話。

 

【勘助とせつ菜】

 

「はぁ……どうしたもんかなぁ」

「はぁ……どうしましょう」

 

 ため息を吐くせつ菜と勘助は部室で勘助が入ってきたときに出会う。先に先手を打ったのは勘助。やはりみんなの悩みを解決していた男は対応が早かった。早速自分の事を差し置いてせつ菜にどうしたのかと聞く。

 

「実は私のお母さんの事なんですけど」

「せつ菜のお母さん? もしかしてスクールアイドルに反対を?」

 

 せつ菜もとい中川菜々の母は少し厳しいところがある。いつも菜々の勉強に重きを置いていたので、スクールアイドルにいい顔をしない可能性があったため、二人でスクールアイドルを隠していたことがある。今は正体をばらしたので心配ないと思ったが、何かあったのだろうか。

 勘助はそう考えたが、別に反対されたわけではないとせつ菜は言う。

 

「じゃあなんで悩んでいたんだ?」

「お母さんが……私のファンでして」

「え? それはよかったじゃないか。せつ菜のお母さんが認めてくれたんだろ?」

「いえ、確かに勉強さえすればと認めてくれたのですが……」

 

 そしてせつ菜は悩みを口にした。そしてそれを聞いた勘助は絶句した。

 

「お母さん……どうやら私が正体を言う前からファンだったみたいで、正体をバラす前からお母さんの部屋の中に私のグッズが大量に……」

「えぇ……」

 

 少し考えて勘助は言ってみた。

 

「もしかして……気まずいのか?」

「とても」

 

 それはちょっと反応に困る話である。まさか、二人して厳しい母だからと考えて隠しているつもりが、実はその母がスクールアイドル大好きで、自分の娘が推しだったと。まさにうちの子ならぬ、推しの子供であった。

 

「なんか、隠さなくてよかったんだな」

「ええ。まぁ……」

 

 あまりよろしくない反応を返したせつ菜だが、勘助の認めてくれただけいいと思え。という発言で納得させた。

 

「そういえば勘助さんもため息吐いてましたけど何かありました?」

「あぁ……叔父がな」

「信繫さんが何かあったんですか?」

「最近ホームセンターの木材で家のミニチュアとか作るのが趣味なんだが」

「すごい人じゃないですか。血は繋がってなくても、勘助さんと同じで器用なんですね」

 

 山本信繫。勘助とは血がつながっていないが叔父である。そんな彼は世に言う日曜大工のようなことをしているらしい。せつ菜はそれを聞いて素直に尊敬するが勘助はせつ菜が絶句する発言をする。

 

「まぁ、それはいいんだが、少し前に叔父がユニコーンを作ったんだ」

「ユニコーン? もしかして勘助さんのギターですか?」

「いや、伝説上の生き物」

「はい?」

「馬みたいな動物を木材で丁寧に作って、長めに接着したペットボトルを、馬みたいなやつの額にペンライトを付けた後に被せることで、暗闇でも広い範囲で光が届くように設定してた」

「……もしかして本当のユニコーン……まぁ、本当のユニコーンというか、皆さんが想像してるあの生き物のユニコーンですか?」

「それ。それ作ってライブ会場に持ってきてるせいでめっちゃ目立つし、叔父が気合入りすぎて見た目が拳の王様みたいに立ってるから恥ずかしい」

「えぇ……」

 

 勘助はお互い苦労するな。と言って、せつ菜がそれに相打ちを打ったのだった。

 

【せつしずりな】

 

「勘助さんと心だけでなく体も繋がりたい」

「確かに勘助さんはそう言うの壊滅的に苦手ですからね」

「うん。無理させたくないけど、付き合ってるから少しでも私と繋がってほしい」

「あの奥手には璃奈さんが攻めないと無理ですね」

「私にいい考えがあります!」

 

 璃奈の悩みにしずくが一つ案を出してせつ菜も乗る。璃奈は単純な話勘助と一線を越えたかった。そして、作戦は実行される。誰もセンシティブな状況に突っ込まず淡々と計画が始まってしまった。

 

「お疲れ様です……誰もいない、ノートしかない誰のだ?」

 

 勘助が部室に来たらノートが一冊。そのノートには落とし物だとメッセージがあり、もし時間のある人がいたらその落とし主を探してほしいと書いてあった。正直生徒会に言えばいいと考えたが、忙しくてすぐ外に出たのだろうと考えて、勘助はそのノートを開くことにした。

 

「……前田、絶対許さんぞ」

「どうしたの勘助さん」

「あ、璃奈……これはだな……」

 

 勘助が顔を赤くしながらとある演劇部の監督に怒りを燃やした瞬間、恋人である璃奈が隣にいた。勘助は驚いてノートを落とし、それを璃奈が見てしまう。

 勘助はうろたえていたが、璃奈はしばらくノートを見て勘助に言った。

 

「これしずくちゃんのだよね。璃奈ちゃんボード『テレテレ』」

「あ、ああ。そうなんだよ。まさか俺と璃奈が……こ、交尾してる描写を小説化するなんてな……あ、後で怒っておかないと」

 

 そういう勘助に璃奈は勘助の裾を握って言う。

 

「ねぇ、勘助さんは私とこういうことしたいって思う?」

「え、……そ、それは……」

 

 うろたえる勘助に璃奈は下を向いて言った。

 

「……私はせつ菜たちより背も、胸も小さいからやっぱり嫌かな?」

「そ、そんなわけないだろ!」

 

 璃奈の言葉に勘助は反射的に声を荒げる。少し落ち着いてから勘助は言う。

 

「俺は肉体とかどうでもいいと思ってる。いや、多少は大切だと思うけど、俺が好きになったのは表情に出なくて悩んでる璃奈とか、体に不安になってる璃奈とか悪いところもそうだけど、それでも努力して表情を学ぶ璃奈とか、時折声のトーンが明るくって俺に甘えてくる璃奈、機械に詳しくて、ずっと発明してる璃奈。とにかく璃奈の全部が好きなんだ。だから、俺も……まぁ、男だし。そういうことは、恥ずかしいけど……したい……とは……思って……」

 

 だんだんと声を小さくして顔を真っ赤にする勘助だが、璃奈は勘助を真っすぐ見てありがとう。と伝える。

 

「勘助さん、今度の休日家に来て……勘助さんと繋がりたい」

「……俺でいいのか?」

「勘助さんがいい」

「恥ずかしくて倒れたらごめんな」

「大丈夫」

 

 こうして勘助と璃奈は休日大人な日々を過ごすのだが、その前にみんなが見たのはいつもより距離が近くなった二人ではなく、縄で宙づりにされた桜坂しずくだったという。

 

「しずくちゃんありがとう」

「そう思ってるなら降ろしてよ」

「勘助さん次第」

「勘助さん、そろそろ許してあげたらどうですか?」

「せつ菜も共犯だっけ? やる?」

「もう少しこのままでもいいですね!」

「せつ菜さん!? 裏切り者!」

 

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