突然だが、昼間から男女が抱き合っているのを見るとどう思うか? 風紀の乱れ? 軽蔑する? そんな状況に勘助は陥っている。
「勘助さん! お久しぶりです!」
「しずくさん久しぶり……なんで抱き着かれてんの私!?」
「え? 勘助さん? というかしず子? どういう関係!?」
「私の恩人です!」
勘助はかすみ、侑、歩夢と共にもともといたスクールアイドル同好会のメンバーと合流するために足をそろえたのだが、そこにいたのはあの痴漢事件の桜坂しずくであった。彼女は勘助を見つけてすぐに突撃して勘助に抱き着いたのだ。
「あらあら、お熱いことね」
「どなたか存じ上げませんが止めていただいてもよろしい!?」
「勘助君ってこんな風に慌てるんだ」
「ご、ごめんなさい。うれしくなっちゃって」
青いウルフカットの少女が少し笑いながら茶化すと侑も初めての勘助の悲鳴に驚いていた。しずくもしずくで勘助と会った状況を説明してみんなからの納得を得たが、勘助は幼馴染以外に耐性が無いと言いながら恥ずかしそうに自己紹介をするのだった。
☆
「ええ!? いじわる生徒会長がせつ菜先輩ぃ!?」
かすみの言葉にそうだと頷いた青髪の
かすみがコッペパンをやったら収まったようである。
「一応連絡入れたんだけど……」
「え? 本当? ていうか勘助先輩と知り合いなんて聞いてないんだけど!?」
「それも踏まえて連絡したよ。あと今話したし」
しずくがかすみに連絡を入れたことを話しながら勘助は顎に手をやる。
「どうしたの勘助君?」
「歩夢さん……いや、そろそろ私も話をする時が来たようだなって」
話とは何かを歩夢が聞く前に勘助がみんなに声をかける。
「実はみんなに隠していたことがあるんだ」
「隠してること?」
ロングウェーブのかかった茶髪の眠そうな女の子
「これせつ菜ちゃん? と山本君?」
「勘助でいいですよエマさん」
赤毛で頬のそばかすを少しかきながらそれじゃあ勘助君でと名を改めたエマ・ヴェルデとみんなは写真にくぎ付けになる。
「というかこれ生徒会長ですよね? 勘助先輩やっぱり……」
「だますつもりはなかったのだ、私とせつ菜……中川菜々の約束でな。正体を明かせなかった」
結論を言うと勘助の幼馴染は生徒会長の中川菜々、優木せつ菜であった。
勘助と菜々はスクールアイドルに興味を持ち、菜々をスクールアイドルにするために作詞作曲振り付け、練習など二人三脚で行っていたほど小学生からの幼馴染であった。
だが、菜々の親の眼もありスクールアイドルを秘密にしながら優木せつ菜としてニックネームを作り、正体不明として活動させた。
そして急に仲たがいで辞めるなどと訳の分からぬことを言い始めたせつ菜を許さない勘助は、もう一度彼女を同好会に引っ張りたかったらしい。
証拠がないのはあくまで優木せつ菜の写真が秘密のため一枚もなかっただけであり、
「だますつもりはなかった、隠し事に胸を痛めた、それでも、優木せつ菜の正体にかすみさん達が気づくまで黙らなければ、私はせつ菜に、菜々に顔向けできなかった。許してくれ」
「……頭を上げてください勘助さん。事情が事情ですし私たちは責めるつもりはありませんよ」
「確かに勘助君が正体を言ってくれたらすぐ解決できたけど、そういう話じゃ仕方ないよねぇ」
頭を下げる勘助にしずくと彼方が援護してくれる。それに対してかすみや侑、歩夢も同意してくれた。エマや果林も初対面だが、幼馴染のためにここまで隠し通している勘助の優しさにあてられて許すことにした。
一連の話が終わり、果林のせつ菜が戻るのは本人次第という言葉に、勘助は待ったをかける。
「果林さんが言う通りメンバーもそろってますし、菜々がいてもいなくても同好会をやるのは当然でしょう。ですが、私は菜々と喧嘩した時もうスクールアイドルしたくないのは噓だと思いました」
「それはどうして?」
「眼です」
果林の問いに答えた勘助は見たことを言った。菜々の眼はそんなことに納得していないと。自分のやりたいことは貫き通したいという眼だったと勘助は語る。
「それに、かすみさんが菜々を……せつ菜を入れることをあきらめてない」
「私も、せつ菜先輩には戻ってきてほしいです」
「意地を張り合う相手がいるってだけで違うもんです」
「せつ菜ちゃん素敵なスクールアイドルだし!」
「彼方ちゃん先輩なのにみんなを引っ張ってあげられなかった」
「作戦に良いも悪いもありません、せつ菜を引きずり戻しましょう」
勘助の言葉に賛同するようにみんなも言葉をつなげる。そして、侑が言葉を発する。
「私がお話してみてもいいですか!」
「なら私も行こう、幼馴染のためにあいつを持ってくる」
「あいつ?」
「果林さんの言う通り本人次第だが、あいつはちょっと口説けばクラっと行くぜ。その為にあいつを目覚めさせる、もう一つのギターを」
こうして、勘助たちはせつ菜を連れ戻す策を勘助の一言で練ることになるのであった。
「これより軍議を開始する。せつ菜、待ってろよ。首あらう前に連れて帰る」