虹ヶ咲のシンガーソン軍師   作:初見さん

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番外編7 日常編2

【生徒会役員の一コマ】

 

「これで、今日の仕事は終わりです。皆さんお疲れさまでした」

「お疲れさまでした」

 

 虹ヶ咲学園生徒会室にて、生徒会長の三船栞子の合図で今日の仕事は終わりを告げる。生徒会役員はこの栞子、副会長、書記の佐藤右月(さとううづき)佐藤左月(さとうさつき)という4人構成であったが、今期に入ってスクールアイドルフェスティバルなどの実行委員作った際、生徒会役員の人手不足を指摘する声もあった。そして新たに生徒会でも庶務として一人、せめて女性だけでなく男性も入れる意見もあったのでこの人を採用した。

 

「よし、栞子さん同好会行こうぜ」

 

 山本勘助。スクールアイドル同好会マネージャーにして、元文化祭実行委員兼、他学園とりまとめ役大隊長である。その功績を評価され、中川菜々前生徒会長と現生徒会長である三船栞子から直々に生徒会庶務として任命された男。

 勘助の声に栞子も返事をして同好会に行こうとするが、

 

「すみません山本勘助さん、少しよろしいですか?」

「どうした副会長」

 

 勘助を止めたのは生徒会副会長(名前不明だが、あだ名として副会長と皆が呼ぶ)だった。勘助が名前でいいと言ったのだが、副会長は今生徒会に山本は勘助だけだ。と言い、名字で呼ばれている。勘助が仕事の話かと問うと、仕事に関係ないから楽に聞いてほしいと言われた。

 

「何かあったのか?」

「ええっと……山本さんはスクールアイドル同好会で誰の推しなのか気になりまして」

「私が?」

 

 副会長曰く、勘助が同好会の天王寺璃奈と付き合っているのは学園周知の事実(スクールアイドルというのもありスキャンダルを避けて璃奈と話し合い公表したため)だった。

 だからこそ彼女は疑問だった。第2回スクールアイドルフェスティバルで公表された山本勘助と優木せつ菜(中川菜々)幼馴染関係を皮切りに、彼女と幼馴染どちらを推しとしているのか問題が学園で少しばかり話されているらしい。

 栞子や佐藤姉妹も耳にしたことはあったらしく、改めてこの場を借りて勘助に聞きたかったと言う。

 

「生徒会にいなければ山本さんとお話しする機会もないですし、今日は簡単な仕事で早く済んだため時間も取らせずに聞けるかと思いまして」

「なるほどな。そんな話があったのは初耳だが、まぁ、結論を言うと推しはせつ菜だ」

 

 副会長の疑問に手短に答える勘助。そしてその理由も付け加える。

 

「確かに私と璃奈は付き合っているが、それは人間である璃奈と付き合っていてスクールアイドルという偶像の璃奈とはまた違うと思っている。好きなことには変わりはないがな」

「たいして菜々は……いや、ここはせつ菜と言うか。私が小さい時からスクールアイドルをやりたいっていうせつ菜を応援してきたし、二人三脚でスクールアイドルの知識や特訓をしてきたからな。やっぱり応援したいんだ」

「結論としては、私はせつ菜がスクールアイドルをする前から応援してるから最推しは璃奈じゃなくてせつ菜。限界オタクみたいなこと言うけど、私が育てたせつ菜に何かあったら璃奈と相談したうえでいつでも絶対優木せつ菜の、幼馴染の助けに行く所存だな」

「もはやオタクの域超えているのでは?」

 

 勘助の持論に栞子が突っ込みを入れるが、副会長は感動しながらその話を聞いていた。とても感動的な絆だと言いながら勘助に握手をしてこれからも共にせつ菜を応援しようと彼女は言った。

 

「そういえば、副会長はともかくみんなの推しは誰なんだ?」

「私はそのスクールアイドルですので推しというのはいませんが、やはりせつ菜さんには負けたくないですね。彼女のようにカッコいいパフォーマンスに憧れます。まぁ、時には歩夢さんのように優しく微笑みかけてファンを魅了するのも好ましいですが」

「栞子さんはせつ菜と歩夢さんが好きなんだな」

「私は箱推しです! 侑さん含めて皆さんとても輝いているので応援してます」

「右月書記は全員か。それもまたファンの形だな。左月書記は?」

「私は……その、とてもお恥ずかしいんですが、大好きなのにサインが欲しくても、勇気が出ず貰えてないんですよ」

 

 左月書記は顔を赤らめて、勘助に言う。勘助が少し融通を利かせて、もし言ってくれれば頼んでサインさせようかと言ってあげたのだが、彼女は顔をさらに赤くした。

 右月がニコニコしながら左月を見ているのを勘助は見ていなかったが、彼女は左月が誰のファンか知っているようだった。

 

「え、えっとお願いしてもいいんでしょうか?」

「ファンサービスは大事だからな、基本的には断らないと思うぞ?」

「スクールアイドルの方じゃないんですが……」

「なるほど侑か、まぁ、あいつも応援メッセージとかもらってるしサインくらいはしてくれるだろ。慣れてないから名前にハートをつけるだけとかになると思うが……」

「い、いえ、侑さんじゃなくてですね……」

「左月、言わないと伝わらないよ」

「そ、そうだけど……ええっと……」

 

 そう言って左月はちらちらと勘助の方を見る。栞子と副会長も左月の視線から気が付いたようだ。栞子が助け舟を出そうとした瞬間、左月が大声で叫んだ。

 

「か……勘助さん! 第1回スクールアイドルフェスティバルの時からずっとファンでした! さ、サインしてください!!」

「え!? 俺?」

 

 勘助は驚いた。まさか生徒会の中で自分のファンがいたことを。気を取り直して左月に差し出された色紙にサインしながら話を聞くと、どうやら勘助のギターテクニックに心を奪われたらしい。

 スクールアイドルフェスティバルというのにスクールアイドル関係なくステージに上がり、アウェイをもろともしない歌声と実力に心を打たれたと。尚且つ、私事だが、自分が左月という名前もあり左利きのレフティーギターを弾くときに親近感も沸いたそうで第2回で完全に虜になった。

 

「えっと、それじゃあ、僭越ながらちょっと調子に乗ろうかな。はいこれ、サイン」

「あ、ありがとうございます! って、ええ!? いいんですか、風林火山すべてのメッセージなんて!」

「まぁ、そこまで私のことを熱く語られたらね。嬉しいからあげるよ」

 

 勘助のサインは少し特殊である。まず最初にファンの人に風林火山の9つの項目うち1つを選んでもらいその一文を書いて名前を載せるのだ。

 

 1,其の疾きこと風の如く

 2,其の徐かなること林の如く

 3,侵掠すること火の如く

 4,動かざること山の如し

 5,知り難きこと陰の如く

 6,動くこと雷霆の如し

 7,郷を掠めて集を分かち

 8,地を廓めて利を分かち

 9,権を懸けて而して動く

 

 この9つの文から本来選ぶのだが、左月には他の人には内緒だよ。といって特別に全文を書いた。そしてしっかりと軍師系シンガーソングライター山本勘助の名も忘れずに。

 この日、左月がいつまでも勘助のサインを肌身離さず持っていたことを生徒会で右月に暴露されて、勘助と左月がお互い照れるのは翌日の話。

 

【侑と勘助】

 

「ねぇ、勘助って性欲無いの?」

 

 侑の言葉に勘助はむせた。幸いお茶を飲む前だったので口から発射は避けたが、女の子が何を言っているんだと突っ込んだ。

 侑は侑で自分もそういう年なんだとあっけらかんと答える。

 

「だって、私含めていいか分からないけどさ、女の子13人に囲まれてムラムラしないのっておかしくない? 彼女がいるのはわかってるけどやっぱり少しは目移りするんじゃないの?」

 

 侑の言葉にも一理ある。スクールアイドル同好会は勘助以外全員女の子。しかも個性は違えどみんな可愛い女の子である。そこに男一人は世に言う生殺しに近いのではないかということだ。

 それでも勘助は落ち着いて答える。

 

「なんていうか、璃奈以外は偶像として見てる」

「偶像?」

「アイドルの日本語版だ。私は歩夢さんたちはスクールアイドルとして崇拝まで行かなくても尊敬や憧れと言うのが強いから、性の対象とは別なんだよ」

「逆に璃奈は人間として私に告白して、真剣にスクールアイドルとしてじゃなく一人の女の子として一番に向き合ってくれていたからな。だから付き合った」

「だから交尾できたんだ」

「交尾言うな! ……と言うかなんで知ってる!?」

 

 勘助が顔を真っ赤にしながら侑に聞くと、実は侑にも璃奈から勘助の奥手について相談されていたらしい。

 ここまで相談されると逆に男としての尊厳とか皆無だと嘆いたが、同時に申し訳なくなり、璃奈とカラダコネクトする機会が少し増えたのは別の話。

 ちなみに同好会メンバー全員知っているが、尊厳のため外部には一切ばらしていないからと侑に落ち着かされたのも逆に恥ずかしくなる。

 勘助はお茶を含んで侑に結論を話した。

 

「……つまり、私はスクールアイドル以外の璃奈以外にはムラムラしない。まぁ、この前みたいに侑さんがときめかないって抱き着いてきたら少し危ないけど」

「つまり私でもドキピポするんだね」

「やめてください……と言うかなんでそんな話を急に?」

「最近さ、歩夢とせつ菜ちゃんが可愛くてすごくムラムラするんだよね。後、しずくちゃんのお尻」

 

 悲報、勘助口の中のお茶を爆散させる。そして床を吹きながら一言、もう歩夢に監禁してもらってくれ。とのことだった。

 

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