虹ヶ咲のシンガーソン軍師   作:初見さん

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番外編8 日常編3

【弁当交換】

 

「勘助さん、はいこれお弁当」

「ありがとう璃奈。これお前の分な」

「ありがとう」

 

 そう言って勘助と璃奈はお昼ご飯を食べる。最近お弁当交換をしている二人だが、勘助は璃奈から借りた小さめのお弁当箱、璃奈は勘助から借りた重箱の1段(さすがに3段作らせるのは申し訳ないので勘助が我慢した)でお弁当を作り、手渡している。

 勘助は一人暮らしなので料理は出来るが、正直璃奈が料理できるとは思わなかったというと少し怒ったような口調でどういうことか尋ねる。

 

「いや、璃奈はさ、機械に強いからやっぱり安い出前とかの情報入手して食べてんのかと思ったんだよ。まれにあるじゃん、栄養バランス良いけど安くて自炊してる意味が無くなりそうな出前」

「確かに調べたらある。でも、だからと言って全く料理しないのはどうかと思う。私だって女の子だから」

「女の子だからって無理してまで料理できる必要もないだろ。あのスカーレットは壊滅的だぜ」

 

 中川菜々の事である。勘助の言葉に璃奈は少しばかり苦笑い(勘助視点)するも、出来るに越したことはないと璃奈が言った。

 

「そういえば勘助さんって苦手な食べ物無いの?」

「菜々の手料理」

「それ以外。と言うかそれは同好会メンバー内の9割」

「1割は?」

「味見もせずに独創的にアレンジ加えて人を殺しかけるスカーレットさん」

「菜々じゃねぇか。意外と璃奈も毒吐くんだな」

「表情の代わりに言葉責めを鍛えた」

「あんまりアイドルが使わない言葉はやめような」

 

 そう言って璃奈の頭を撫でて勘助は考える。少しして、一つあったと璃奈に伝えた。

 

「おはぎは食べたことない。と言うか食べられない」

「おはぎ? 珍しい」

 

 勘助曰く、おはぎのもち米は少し米粒が残っているのもあり、もしも完全な餅ならあんこ乗っけたり、おしるこで食べられるが、おはぎのような少し中途半端な米か餅か分からない触感の場合、ご飯にあんこかけて食べてるみたいで少し嫌らしい。そんな勘助の独特な意見もあって食わず嫌いなんだとか。

 

「それじゃあ、今度勘助さんが食べられるようにやってみる」

「どうするんだ?」

「完全な餅と、もち米の間とまんまご飯のものにあんこかけて食べ比べしてもらう。最初は餅から食べてもらって慣れさせる特訓」

「なるほど、とりあえず俺は食わないといけないと」

 

 勘助は璃奈にお礼を言って今度作ってきてもらえるようにお願いする。逆に璃奈にも聞いてみたが嫌いなものはないそうだった。もしかしたら精神年齢は璃奈の方が上なのかもしれないと、自分の子供じみた舌に対して少し苦笑したのだった。

 

【お悩み相談】

 

「勘助さん、相談したいことがあるんですが」

「どうした?」

 

 同好会の部室で勘助は突然しずくに声を掛けられる。勘助は少し警戒しながらもギターを置いて聞く姿勢になる。

 

「そんなに緊張しないでください。確かに勘助さんに振られましたけど、今回は勘助さんにとってもうれしい悩みだと思うので」

 

 どういうことか皆目見当がつかなかった。勘助はしずくに告白されたが、璃奈と付き合うためフッた。だからこそ、最近勘助自身も少ししずくを避けてしまっていたのもあったが、しずくにはそれが分かっていた。だからこそ、しずくは話す。勘助が見当つかない相談事を。

 

「最近かすみさんの事が好きになりそうなんです」

「幸せになれ」

 

 お悩み相談が一言で終わるが、しずくが慌てて勘助に話だけでも聞いてほしいと言う。

 どうやら勘助に振られた後、かすみがしずくを慰めていたようだ。

 しずくもかすみに慰められてるうちに調子を取り戻して冷静になって気が付いた。

 過去にしずくが悩んでいた時、しずくが大好きだと告白じみたことを言ったかすみの姿を思い出し、本当に大切なものはすぐ近くにいたのだと思い始めたらしい。

 そこからかすみを意識するようになったのだが、勘助の件で自棄になってると思われたくないのもあり、思いを伝えられないとのこと。

 

「それは……確かに私にとってはしずくさんが新しい一歩を歩んだと言うのには喜ばしい話だな。だが、かすみさんもバカではあるが間抜けではない」

「しずくさんが心の底から思いを伝えれば納得はしてくれると思うのだが」

「その心の内をさらけ出すのが怖いんですよ。前に私が悩んでいたこと分かっているでしょう?」

 

 確かにそうだと勘助はあらためて気づく。しずくは自分をさらけ出すことに完全に慣れたわけではない。一世一代の告白とあらばなおさらだ。ふと、何かをこっそり操作して、しずくに聞き返す。

 

「とりあえず、かすみさんに愛の告白をしたいけど私の件もあって勇気が出ずに言い出せないってことでいいのか?」

「そうですね。どうすればいいんでしょうか?」

「練習してみたらどうだ?」

 

 練習と聞き返すしずくに勘助は頷く。部室にいるのはこの二人なら、こっそり練習して告白に慣れておくことが大事だと勘助は言うが、しずくは警戒した。

 

「今携帯いじってましたけどかすみさんがここに来るようメッセージ打ったとか無いですよね」

「携帯? ああ、璃奈に今から恋愛劇の練習をしずくと部室でするからってメッセージ送っただけだぞ。誤解されたくないし」

 

 鋭いな。と勘助は苦笑いしつつも携帯のメッセージをしずくに見せた。しずくもそれを見て納得したようである。

 そして勘助の合図で、演技を始める。一応言いたいセリフはノートに書いてきたようだ。

 

「ええっと……こ、こんなところに呼び出してどうしたのしずく……しず子」

「かすみさん、聞いて。私かすみさんに伝えなければいけないことがあるんです……あるの」

 

 お互い先輩後輩もあってか一瞬不器用な喋りになったが、しずくは演技力。勘助は場に飲まれたのもあり、真剣に演技をする。

 

「珍しいね、しず子がかすみんに改まって話なんて。どんな話?」

「その……私ね、かすみさんが好きなの」

「え?」

「覚えてる? 私が勘助さんに振られた時、何も言わずに手を引っ張って、パンケーキのお店とか、ペットショップとか、かすみさんが興味ないような映画にも連れてってくれたでしょ?」

 

 そんなことしてくれていたのか。と勘助は心の中でかすみに感謝して、きっとかすみならしずくと仲良くしてくれるだろうと親目線のようなものも感じていた。

 

「そうやってかすみさんが何も言わなくても私のことを大切にしてくれる姿を見てるうちに、私のことを本当に大切に思ってくれてるのはかすみさんなんだなって」

「もちろん勘助さんの事も好き。だけど、今はこうして私のことを大好きって言ってくれて、一生懸命私を思って慰めてくれるかすみさんが一番大好きなの!」

「だから、私と、付き合って下さい」

 

 そう言い切った。勘助は眼を閉じて、少し笑った後、流石しずくだ。と言う。しずくもこんな感じですか。と勘助に言うが、完璧だとしか返さなかった。そして、おもむろに携帯を取り出して、こう言い放つ。

 

「だってよ部長。しずくさんの事頼むぜ」

「え?」

「……か、かすみんだって、しず子の事……大好きだよ!」

 

 急に現れたかすみの声に、しずくは声にならない悲鳴をあげた。

 どういうことかと勘助に詰め寄ると、勘助はしずくに璃奈へのメッセージを見せた一瞬でかすみに電話をかけたらしい。スピーカーにするとかすみの声が聞こえるので普通にしたが、しずくが演劇モードに入れば声は大きくなるし、部室には2人しかいないのでスピーカーにせずとも筒抜けになるともくろんでいた。

 

「かすみさん、後は頼んだ。今すぐ部室に来い。いいな?」

 

 そうして勘助は電話を切ったのだった。しずくに向き合い、たった一言。

 

「しずく、頑張れ」

「ちょ、ちょっと待ってください!?」

「どうしたしずくさん」

「どうして、幻滅しないんですか? 女性を好きになったんですよ!」

「確かにかすみさんへの想いは本物です、でも、もともと男性のあなたに告白した人が実は女性も好きでしたと聞いて幻滅するはずじゃ……」

「しねぇよ」

「え? 即答ですか?」

「俺も一回ユニコーン(ギター)とはんぺん(猫)に結婚申し込んだし」

「しずく、言わせてもらうぞ。しずくが望んで変な子だと言われたいなら、ギターか猫に告白してみろ。俺を超えたらドン引きしてやる」

 

 そう言い残して勘助は部室から出て言った。言葉を言い残しながら勘助は、涙をためながらも精一杯の笑顔でお礼を言ったしずくを見たと言う。

 後日、同好会メンバーから祝福の言葉が、しずくとかすみにあったのは言うまでもない。

 

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