「テメェの血は何色だ、栞子」
「……貴方は確か」
勘助が歩夢から話を聞いた放課後、勘助は生徒会室に向かった。生徒会長である三船栞子は顔を歪めながらも勘助の名を言う。
「そうだ、スクールアイドル同好会のマネージャー山本勘助。今日はスクールアイドル同好会の廃部について話を聞きに来た」
「前にもお伝えしました通り、スクールアイドル同好会は廃部にします」
「それはお前の言う適性の話か?」
勘助の言葉に栞子は頷く。栞子曰、適性のないものが適性ではないやりたいことをやったところで結果もろくに出せず思い悩む。そんなことをさせたくないからだと言ったが、勘助はそれに意見する。
「俺はそう思わないけどな」
「と言いますと?」
「例えば、お前が日本舞踊の適性があるとして、生徒会長なんかやるより日本舞踊やれって言われたらどう思うよ」
「……それは」
勘助のストレートな例え話に少したじろいだが、だからこそ自分が率先して適性を見極めるべきだと反論した。勘助は栞子が適性を見ただけで分かるというのを知っているので確かに一理あると答えながら少し提案をする。
「ならよ、一つ賭けをしようじゃねぇか」
「賭けですか?」
「俺の適性、一番何が強いか見えたら答えろ。見えなかったらそうだな、一つ俺の考えを聞いてもらうぞ。見えたら、俺はもう口出さない」
勘助の言葉にすぐさま乗る栞子。栞子自身はやく彼を追い返したかったし、彼といるとなんだか嫌な予感がした。
すぐにでも適性を見極めて、彼を追い返せば同好会も廃部ですぐに話は終わる。
そして見る、彼の、山本勘助の適性を……だが、罠にかかったのは栞子だった。
「こ、これは……」
「どうした、答えてみろよ、俺の適性。確かお前の見立てでは数十個だっけか?」
勘助を見た栞子は驚愕した、適性が10いや、20以上あるのだ。
勘助は芸能事務所で歌だけでなく果林と学校のモデルをしたり、しずくから演劇を習ったり、侑から作詞作曲、愛からはもんじゃやお好み焼きの焼き方、彼方からは料理、エマからはスイス語、ランジュから中国語、せつ菜からダンス、かすみからは写真の写り方や写し方、恋人から機械いじりを習ったり多くのことを伸ばした結果、栞子でも一番が読めないほどの適性で覆われていた。
さらに夢と言うこともあり少しだけ適性を勘助自身で調節できたのもあり、ほぼどころかギター含め全く同じ順位付けで示すように調節できたのだ。
ちなみに向こうの栞子から習ったことは……
「一番は分からなかったか?」
「どうしてすべての適性が全く同じ順位で分配されているのですか……」
「俺はすべてが出来る。いや、出来るようにしたんだ。ギターと同じくらいな」
「ギター? 確かにその適正もありますが……」
「姉がスクールアイドルふがいなかった影響か知らないけどよ、押しつけもよくないぜ?」
「なっ!? どうしてあなたがそのことを!」
言葉巧みに人を翻弄させる、言葉の言い回しだ。
勘助は一番は読めないだろう。と言って栞子に約束は守ってもらうと宣言した。
「……スクールアイドル同好会の廃部は諦めませんよ」
「そんな考えがなくせるような条件を提示するぜ」
そう言って勘助が言った条件は……
「そんなわけで今日から体験入部するしおにゃんだニャン」
「……え!?」
「どうして私がこんなことを」
同好会のメンバーからとてつもない驚きが聞こえたのは言うまでもない。
☆
「どうやったんですか? 勘助さん」
「せつ菜……さん、まぁ、少し賭けをね」
賭けと尋ねるせつ菜に対して勘助は言葉を濁す。
「そういえば、傷は癒えたのか?」
そう言った勘助の言葉に少し俯いて言う。
「正直今でも悔しいです。でも三船さんの言う通り、独りよがりで生徒会長とスクールアイドルをやっていたのも少し心当たりがあるんです」
「だから、今は少し反省してます」
そんなせつ菜に対して勘助は……
「確かに生徒会長が独りよがりはダメだな」
「ですよね……」
「ただ、スクールアイドルは良いんじゃないか」
「え?」
スクールアイドルはソロ活動。確かにみんなと話し合うことはするが、ステージで表現するのは一人だけ。仮に独りよがりになっても多少自由に表現することが大事なんじゃないかと勘助は言う。せつ菜も勘助の言葉に思うところがあるようだった。
「過ちを気に病むことはない」
「ただ認めて次の糧にすればいい」
「それが人間の特権だ」
「なんだか勘助さん変わりましたよね。前まではどこか頼りなかったですけど」
「そうなのか?」
せつ菜は今ではなく前の勘助について語った。みんなのことをちゃん付け、3年生にはさん付けで呼び、少し頼りなく話すが、芯や道理は通っていて、みんなが助けられたこと。偶にせつ菜たちが勘助と仲良く話していると幼馴染の歩夢が病みだしてそれを勘助がおどおどして落ち着かせる。悪く言うと億秒で内気だが、よく言えば優しく、みんなをよく見てるおしとやかな感じだったと、そんな人だったのにと言った。
「……なぁ、せつ菜、一つ聞いていいか?」
「急に呼び捨て……まぁ、いいですけどなんですか?」
「高咲侑を知ってるか? 俺の思う最高のピアニストなんだが」
「……申し訳ないですけど分かりません。それに、ピアノで作詞作曲していたのは勘助さんではありませんか」
少し考えて発したせつ菜の言葉に勘助はそうかと納得した。
歩夢から聞いた通り、この夢の中では侑がいない。
逆に考えれば侑の立場がこの世界では勘助になっていた。
歩夢の幼馴染も、ピアノを弾くのも侑ではなく勘助なのだ。
侑から少し学んだピアノを考えながら、勘助は悲しくなった。
「侑さん……会いてぇな」
「知り合いですか?」
「ああ、まぁ」
大事な人だと言いたかった、みんなの仲間だと言いたかった。でも、侑はこの世界に存在しない。勘助は泣きそうになった。
その時、後ろから抱きしめられる感触が。振り返って見るとせつ菜が勘助を後ろから抱きしめていた。
「すみません、ですが、なんだか懐かしい感じがするんです。こうして勘助さんを抱きしめてたのが……基本勘助さんは歩夢さんとしかこんなことしないのに、初めてなのに。変ですよね」
「いや……ありがとうせつ菜」
そう言って勘助は泣いたせつ菜にも会いたいなと考えた瞬間……
「せつ菜ちゃん? 何をしているのかな? かな?」
「あ、歩夢さん!? これは違くて……」
「私の、勘助君を抱きしめて何が違うのかな? かな?」
「歩夢? 俺と歩夢って付き合ってんのか?」
「ううん。今はまだだよ、今はね?」
「じゃあ別に問題……」
「はぁ?」
「ありますねぇ」
最後まで言う前に歩夢の呪詛が炸裂して勘助は何も言えなくなった。その後歩夢も勘助を抱きしめたが、勘助は抱きしめられるなら璃奈がよかったと申し訳なさそうに心で思った。
「ホカノオンナノコヲカンガエナイデ」
「あ、はい」
☆
「違うんです侑さん、私は確かに適性を大事にしてますけど、それでもここまでするつもりなんてないんです! 信じてください、信じてください!」
「う、うん分かってるよ。でも勘助君がここまで私のことを思ってくれてるなんて、すごい顔が熱くなっちゃうな……」
「歩夢さん、せつ菜さん正座」
「私たちは何もしてないじゃないですか!?」
「そうだよ、勘助君だって本当は璃奈ちゃんの方がいいに決まって……」
「正座」
一方その頃、侑のいる同好会では栞子が土下座しながら侑にそんなこと思っていないと全力で拒否していた。
そして、向こうの世界線だが勘助を抱きしめたせつ菜と歩夢は璃奈に怒られていた。
「ねぇ、ランジュ。栞子がこれでまだ僕たち出てきてないけどもしかして……」
「そ、そんなわけないじゃない。流石に栞子より酷い性格の人はもう出ないわよ……出ないわよね?」
その端でランジュとミアが、まだ出てきてない自分たちに嫌な予感が芽生えるのは勘助は知らない。