虹ヶ咲のシンガーソン軍師   作:初見さん

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EXステージ3 もう一人の俺

 勘助は暗い部屋にいた。あの後栞子を少し体験入部させて、家に帰って眠ったのだが、夢の中でもさらに夢を見ているのか、それとも勘助の本来の肉体が夢を見てるのか分からないが、なぜかよく分からない場所にいた。

 

「……俺は忙しいんだ、さっさと出せ」

「随分と冷静なんだね」

 

 声のする方を見て勘助は固まった。なぜならその声や容姿はどこからどう見ても勘助自身だったからだ。

 

「誰だお前」

「僕は山本勘助、正確に言うと歩夢と幼馴染の勘助さ」

「あの世界線の本物の俺か?」

 

 勘助の言葉に彼は頷く。

 

「んで、もう一人の俺は俺に何の用だ」

「お願いがあるんだ」

「お願い?」

 

 彼は勘助にあるお願いをした。それは、同好会を救ってほしいということだった。それを聞いて自分で何とかしろと返す勘助だが、彼は強く言った。

 

「僕じゃ無理なんだ。僕だってやったんだ必死に。三船さんを説得したし、みんなにも話をしてせつ菜ちゃんのメンタルケアもした。でも現状が変わらなかった」

「そんなとき僕はこの世界にいて君が、もう一人の僕が体を借りて、力技と冷静な頭脳で三船さんを同好会に引き留めた」

「君なら、これからの危機を救える」

「栞子はどうした?」

「うまくやれたみたいだよ、少しずつだけど同好会になじんできた。歩夢ちゃんが少し栞子ちゃんに口添えしたおかげさ」

「待てよ、栞子で終わりじゃないのか?」

「いや、僕の予想ではもっと質が悪くなってくるはずだ、このままじゃ終わらないってなんか感じるんだ」

 

 勘助は少し考えてふと、同好会に本来いたのに今はいない人間を思い出した。流石の勘助も嫌な予感で恐怖を覚える。

 

「じゃあお前も協力しろよ」

 

 彼の言葉に勘助が伝える、勘助にはギターがない。だからピアノで作詞作曲をしないといけないとのことで、きつくなったら出てきてほしいと言ったが、彼は首を振った。

 

「本来この世界では山本勘助は1人だけ、二重人格もないからそういうことが出来ないんだ。一応今僕が前に出ているんだけど、そろそろ君に任せないと大変なことになりそうなんだ」

「テメェは逃げるのか?」

「……ごめんよ。でもお願いだ、助けてくれ」

 

 勘助は彼の言葉にため息をついて言った。

 

「乗り掛かった舟だ、やってやる。でも、次お前に会ったらぶん殴る」

「俺は、山本勘助は曲がったことが大嫌いだ、本来お前と同好会のメンバーで何とかするところをただの部外者に任せてんじゃねえよ」

「うん、本当にそうだね。……ごめん」

 

 その瞬間、勘助の体が光りだした。戸惑う勘助に時間だと彼は言い勘助はそのまま消えたのだった。

 

「……みんなで何とかするか……確かに君の言う通りだ」

「ごめん。もう一人の僕。でもどうか……みんなを助けてください」

 

 ☆

 

「……さん、……すけさん……勘助さん!」

「……ん? どうしたせつ菜?」

 

 やっと起きたかと怒りながら言ったせつ菜。何の話だと問うと、どうやら作戦会議中だったそうだ。

 だが、不可解なことがある。それは以前より同好会の人数が減っていたことだった

 

「そういえば、何人かいないな。栞子さんに果林さんと愛さん、そしてしずくさんはどうした」

「勘助先輩! 皆さんは裏切ったんですよ!」

「裏切った?」

 

 かすみの話を勘助は聞く、勘助が夢の中にいる間とんでもないことが起こっていた。

 鐘嵐珠という人間がミア・テイラーと共にスクールアイドル部というものを作り、その圧倒的な人気と、スクールアイドルは2つもいらないという持論で同好会をつぶしにかかったのだ。

 最初は反感を食らっていたが、彼女の母が理事長のせいもあり、ほぼお咎めなしで財力を使い、高品質のマシーンや設備を使って練習場所を制作。

 高い実力を身に着けられるという言葉に愛と果林が、そしてしずくが同好会から部に移ったらしい。栞子も最初は反対していたが、幼馴染というのもあり強引に部に行くことになったと。

 無茶苦茶なことが起こると勘助は苦笑いをする。

 

「あいつの言っていた嫌な予感はこれか。確かにいねぇ奴が大暴れしてやがる」

「勘助先輩どうしましょう」

「高難易度クエストにもほどがあるな、だが、嵐珠さんはどうやって同好会をつぶす気なんだ?」

「お金を使って右月さんと左月さんをボディガードとして雇い、生徒会権限などを使い同好会のライブをそもそもさせないという手段です」

「タチ悪すぎて吐きそう」

「勘助さん、どうにかできないかな?」

「璃奈……」

 

 勘助は迷った、同好会のライブをそもそもさせないならどこにステージ張っても同じだと。その時ふと璃奈の機械技術から妙案が浮かんだ。

 

「なぁ、璃奈。お前パソコンとかカメラワーク得意だよな」

「珍しい、勘助さんが私を呼び捨てにするなんて」

「すまん。嫌ならやめるが……

「ううん、大丈夫驚いただけ。璃奈ちゃんボード『機械は任せて』」

「なら、ここにいるみんなにも手伝ってもらうか」

「どうするの勘助君?」

 

 そして勘助は提案する。

 

「チキチキ、ばれたら即交代オンラインライブ作戦だ」

 

 勘助の案はとても簡単。いろんなところに彼方やエマ、かすみ、璃奈、歩夢、せつ菜を配置してライブと言う名の1フレーズあたりを歌わせる。ばれたら璃奈の遠隔操作でマイクパスをして別の人に繋げる。

 

「もし全部ハイジャックされたらどうするんですか?」

「璃奈にハイジャックで勝てるやつはいない。そしてさんざんマイクパスした後、最後は俺に回せ」

「勘助さんに?」

 

 勘助の言葉にかすみとせつ菜が驚いて話す、勘助曰く、スクールアイドルしてない奴ほど警戒が薄い。

 

「まさか俺が最後決めてライブのお知らせ兼演奏するなんて誰も思わないだろう。あ、後、念のため軽音楽からギター借りてくる」

「え? 勘助君ギター弾けるの? ピアノならとっても上手だからそれでいいんじゃ?」

「……少しだけだ、ピアノでもいいが、グランドピアノなんて目立つから座り続けてられない。多少弱くても、次に弾ける楽器で実力を示した方がいい」

 

 勘助がギタリストなのは誰も知らない、歩夢が言った通りこの世界の勘助はピアニストだが、今の勘助はギタリストだ。あえて勘助は、ギターをピアノの次に弾けると嘘をつく。罪悪感がひどかったが何とか説得した。

 そして勘助の策にみんなが乗り、作戦が開始されたのだった。

 

「ランジュ様、ある男が軽音楽からギターを持っていきましたが?」

「放っておきなさい。別に何かするわけでもないでしょ。そんなことより早くスクールアイドル同好会をぶっ壊してやりたいわ。あいつらにランジュが一番だって示すのよ!」

「かしこまりました」

「ミア、音楽の準備できたかしら?」

「当然だろ。僕を誰だと思ってるんだ」

「世界のテイラー家だぞ」

 

 彼女たちは知らない、ミアテイラーを超えると本気で食らいついた挙句、その熱意に彼女が認めた世界線の人間が、この世界に来ていることを。

 

 ☆

 

「信じて侑! 確かに私は孤独だし、自分の実力を誇示した発言もしたけど、同好会を壊すなんてそんなことしないわ! 大事な場所よ!」

「ベイビーちゃん、ごめん。僕もランジュと同じだ、こんなランジュには絶対屈しないだから見逃してくれないか」

「ミア!? こんなって言わないで!」

「私はいつまで謝られなければいいのかな?」

「愛さん、果林さん……覚悟はいい?」

「りなりー、さすがの愛さんもみんなを裏切ることなんてしないって!?」

「そ、そうよ。確かにもう少しハードなのもいいって考えたこともあったけど、だからと言って同好会から去るなんて……」

「それじゃあ果林さんと愛さんだけ練習量10倍にしましょうか」

 

 いつものモニターを見た侑率いる同好会、侑はランジュとミア、栞子の土下座から逃げられず、方やせつ菜の言葉に果林と愛が悲鳴を上げるのだった。

 

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