「勘助さん、すみませんでした」
オンラインライブ作戦実行日の前に桜坂しずくが勘助のもとに来て一言謝った。
どうやらしずくも同好会から部に行ったが心残りがあるそうで、勘助に会いに来たと言う。
「別に怒ってない。謝るなら同好会に謝ればいい」
「……私、実力を試したかったんです。向こうの方が設備がいいですし、より良い練習になるんじゃないかって。でも、それが結果的にかすみさん達を裏切ることになるなんて……」
「よく言うだろ、環境の変化って。人間同じ環境にいすぎると物足りなくなって、他のことをしたくなるものさ。私もそうだからな」
「勘助さんもですか?」
勘助はギターの話をしようと思ったが、この世界の勘助はピアノなので、少し苦い顔をして嘘をつく。
「まぁ、私はピア……ノなんだが、ギターやベース、三味線や和太鼓なども試したことがあった」
「そんなにやってたんですか!?」
勘助は前の世界でやった楽器をあげて、練習したけどやっぱりピアノが一番だったとオチをつける。
しずくは勘助の苦い顔はピアノ以外上手く行かなかったことだろうと少し思っていたが、勘助からするとしずくに本当のことを言えないのが心苦しいだけである。とにかくバレずに話をして、結局自分がしたいことをすればいい。と勘助は結論付けた。
「……私、最近部の活動が苦しくなってきたんです。でも、ああいった手前戻るに戻れなくて……」
「スクールアイドル部……まぁ、あっちの目もあるしな……」
勘助は少し考えて、一つ提案した。オンラインライブをしないかと。しずくは少し疑問だったが、勘助はしずくならいいかと事の発端を話した。
「なるほど、確かに中継を変え続ければ、妨害も何とか抜けられます。でももし機械がハイジャックされたらどうするんですか?」
しずくの純粋な疑問に勘助はあっけらかんとして問題ないと答える。
「私のこ……いや、同好会には機械に強くて天才的な頼れる少女がいるからな」
「璃奈さんの事ですか?」
本当は恋人だと言いたかったが、ぐっとこらえた。しずくの言葉にそうだと頷く。
しずくは、勘助が璃奈とそこまで仲が良かったかと疑問に思ったが、勘助が同好会のみんなに信用されているのは事実なので勘助も璃奈を信用して頼んだのだろうと思った。
「まぁ、あいつの機械知識はそこら辺の大人を超えるしな。鐘嵐珠のハイジャックなんてもろともせん」
「璃奈さんとそんなに仲良かったでしたっけ?」
しずくの言葉に勘助は静かに頷いた。勘助は一刻も早く恋人の璃奈に会いたかったが、今の世界の璃奈にあっても意味がない。それでも、無性に会いたくなった。
「まぁ、考えておいてくれ。一応、この策は……」
「大丈夫です。ランジュさんにも愛さんにも果林さんにも言いませんよ」
「それなら良い」
「ただ、そちらに向かえるかは……」
「構わん。その場合は俺が行く」
「勘助さん。私は同好会を壊す気はないですけど、自分の実力のために部に行きました。それでも、少しくらいなら協力します」
「うん。それでいい」
そうして勘助はしずくに良い返事を待つと言って別れた。
☆
「侑様、勘助様。愚かなわが身をこの剣で切り刻んでくださいませ。私は醜き下郎でございます」
「しずくちゃん!? 芝居口調は置いておくけどその剣って本物の包丁だよね!? 絶対しないよそんなこと!」
「どうか、どうかこの忌々しい私めに罰を。なにとぞ、なにとぞ!」
「落ち着いてしずくちゃん!?」
一方で侑のいる世界では栞子とランジュ、ミアの他に土下座組が一人増えた。