「よう、愛さん。果林さん。調子はどうだ」
「……カンスケ」
「何の用かしら?」
勘助はしずくの次に愛と果林に出会っていた。
勘助は単純に調子を聞こうとしたが、警戒されていた。勘助の考えはやれることややりたいことをやってみろの精神なので、同好会から部の話を聞いて胃を痛めたが、愛たちの選択には理由があると思い、真っ向から否定はしない。
「いや、そのままの意味なんですけど」
「嘘ね、恨んでいるんでしょう? でも後悔はしないわよ」
果林は信じられず言葉を口にしたが、勘助は本気で気にしてなかった。
「愛さんや果林さんがストイックなの知ってますし、部の方がいいっていうなら何も言う気ないですよ?」
「怒ってないの?」
「同好会のメンバーはわからない。エマさんは果林さんにキレてるけど、私は別に」
「為すべきことだと二人が思ったのなら何も言わんよ」
「へぇ、寛容なのね」
「まぁ、どうしても怒ってほしいと言うなら……」
そう言って勘助は右足を上げて床にたたきつける。その瞬間大きな音と共に床にヒビが入った。
勘助は怪力である。そんな勘助を見て二人は言葉を失いながら恐怖した。
「そ、そういえば勘助ってスチール缶暇つぶしに握りつぶしてたよね……」
「そ、そうね。暇つぶしって言ってそんなことしてたわね……」
二人の言葉に勘助はこの世界でもやってたのかと苦笑する。実はピアノを弾くのと、性格が内気な以外基本自分の力は同じなんじゃないかと思い始めた。
「まぁ、私はさっきも言った通り調子を聞きに来ただけだよ。元同好会のメンバーの心配をするのは当たり前だろ」
「元って……やっぱり、怒ってる?」
「いや、事実だろ。もう部に行ったんだから」
勘助はただ事実を淡々と話しただけなのにやはり愛に怒りの有無を疑われる。そんな時果林が言った。
「そうね、調子は問題ないわよ……まぁ、自分の成長を促すためにここへ来たからね。エマには申し訳ないけど、知らないわそんなの」
「そうですか。愛さんは?」
「ええっと……まぁ、調子はいいかな」
さらっと話す果林に対し少し迷いがある愛。それでも、調子は良いとのことなので、勘助はそれ以上何も言わなかった。
「そうだ、鐘嵐珠に伝えてほしいことがある」
「ランジュに? なんて言えばいいの?」
そうして勘助は一言。
「貴様の進軍もここまでだと」
その一言は、とても冷たく宣戦布告をしているようなそんな言葉だった。彼の光る二つのオッドアイは愛と果林を逃さず、二人は勘助の威圧に恐怖した。
そして、頑張れよ。とエールを送って去って行った。残された二人の足は震えていたという。
「悪いな二人とも。私は怒っていないから、こうする気はなかったが、同好会のメンバーがお怒りなんだ。特にエマさんと恋人がな。俺はただ、それを伝えただけだ」
もう姿の見えない二人に向かってひとり呟いた勘助の目は、ひどく悲しそうな眼をしていた。
☆
「アタシってホントバカだよね。なんでりなりーの事が大切なのにこんなことしちゃってんだろう。カンスケが目を覚ましたら伝えないと……愛さんの代わりにりなりーをよろしくって……りなりー愛してたよ、愛だけに」
「愛ちゃんそのロープどっから持ってきたの!? 危ないから私に渡して!?」
「ゆうゆも愛さんの冥途の土産にダジャレを言ってくれたんだね。わたしにわたしてって」
「ふふっ、あは……わ、笑ってる場合じゃない! あ、愛さん……ははっ……ロープを……あははは!!」
「侑ちゃんしっかりして!? 愛ちゃんもロープ早く頂戴!!」
「私はもう、人間として終わりなのね……サバサバとした発言だって少し自分も思っていたけど、まさかエマの事も捨てて、自分の欲望に逃げてしまうなんて……何が夢を与えるスクールアイドルよ……もう何も怖くないわ」
「果林さん!? ここ1階じゃないですから飛び降りようとしないでください!? 同好会のメンバーで自殺者なんてシャレになりませんよ!」
こうして侑に、侑たちに土下座をする人間が6人に増えた。
「勘助さん、怒ったらこうなるんだ……ちょっとあの目で見られたらぞくぞくする」
「りなりー、カンスケと仲良くね」
「愛ちゃんロープを渡して!!」
一人まずい扉を開きかけた桃色の女の子がいたが、とりあえず侑、歩夢、璃奈、せつ菜、かすみ、彼方、エマの大勢で、今はここにいるこの世にさよなら土下座軍団を何とかすることにしたのだった。