「お疲れ璃奈……さん」
「あ、勘助さんお疲れ様。璃奈ちゃんボード『ギラン』」
「なんか俺に用があったのか?」
勘助の言葉に練習していた璃奈が頷く。璃奈は話をしたがその内容は璃奈ちゃんボードをつけずにトーナメントに出たいと言うことだった。
「素顔の自分でやるんだな」
「うん。そうしないと、みんなに勝てる気がしない」
「この戦いはお客さんに喜んでもらうことももちろんだけど、同好会の存続をかけた大事な試合。生半可な気持ちじゃできない」
「そうだな。それで、璃奈も本気を出すと」
その言葉に璃奈は頷く。勘助はいつもの言葉をかけた。
「為すべきと思ったことをやればいい」
「勘助さんって、本当に勘助さんなの?」
「まぁ、俺は勘助さんだぞ」
「嘘。勘助さんは私のことを呼び捨てにしない。ギターも弾かないし。せつ菜さんとも信用してるけど、歩夢さんより仲睦まじくない」
「貴方はいったい?」
勘助は迷った。今回ばかりはせつ菜と違う天使・天才・天王寺である。逃げられないし、なにより世界が違っても恋人を不安にすることは出来なかった。どうするかと思ったが、頭から声が聞こえてきた。
【多分歩夢ちゃんにもバレてるから璃奈ちゃんにも言っていいと思うよ】
「あいつ……割と無責任だな」
「あいつ?」
「いや、何でもない……そうだな他言無用でいいな少しだけ話すが」
「うん。絶対言わない。璃奈ちゃんボード『お口チャック』」
そして、もう一人の自分から許可が出たので勘助は自分がこの世界の人間でないことを話す。璃奈は最初驚いていたが、勘助の今までの態度などを見てきた中で納得のいくことしかなかったので、6割ほど信じることにした。
「違う世界から……しかも、その世界の私たちは恋人で、せつ菜さんが幼馴染。そしてここに存在しない高咲侑さんっていうピアニストがいる。そして今の勘助さんはピアノを弾くことは出来なくてギターで作詞作曲してた……信じられない」
「だから言わなかった。俺が璃奈の恋人だとかせつ菜と幼馴染だと言っても信じないだろ」
璃奈と勘助は少し無言になり、璃奈が先に口を開けた。自分たちの知っている勘助はどこにいるのかと。
「今俺の心の中にいる。おそらくこの問題が終わったら入れ替わって俺は元の世界に帰るから、お前たちの山本勘助に会えるぞ。今璃奈に話したのはこいつが心で許可を出したからだ」
「そうなんだ……」
「本当はね、少し落ち着いてるんだ。勘助さんといてもなんか安心するっていうか、心がポカポカってなったことがあるの。もしかしたら違う世界の影響もこの世界と繋がってるかもしれない」
「せつ菜に抱きしめられた時もそんなこと言ってたな。それが悪くならなければいいんだが」
「多分、短期的なことなら影響はないと思う璃奈ちゃんボード『大丈夫だ。問題ない』」
そう話して、勘助は璃奈にこんな話をした手前だが。と先手を打って、璃奈にエールを送った。
「うん。任せて。びっくりしたけど、ランジュさんから愛さんたちを連れ戻さないと勘助さんも元の世界に帰れないから」
そう言って璃奈は決意する。
「私、素顔で歌う」
☆
「勘助さん、早く目を覚まして。そろそろ私限界。勘助さんに抱きしめてもらわないと悲しい」
「璃奈さん……」
「勘助さんが目を覚まさないならもうやりたい放題やっちゃいそう」
「何をする気ですか!?」
「ナニですけど。璃奈ちゃんボード『女は狼』」
寝ている勘助に同情しながら感動を返せと思ったせつ菜なのだった。それでも璃奈が寂しいのはせつ菜も否定できなかったので二人で勘助の手を握り起きることを祈っていた。