「貴方は、勘助君じゃないよね。でも、勘助君なんだよね?」
現在勘助はこの世界の幼馴染上原歩夢に詰められていた。急に話があると言われ歩夢に会った瞬間言われた言葉だった。
勘助はなぜか慌てることはしなかった。別の世界線でヤンデレ枠を獲得している歩夢だ。こうなることは勘助も心は勝手に想定済みだったのか慌ててなかった。
だからこそ、言わなければならない。
「俺の名は山本勘助。だが、この世界線の山本勘助ではない。この世界の勘助は俺の中にいる」
「世界線?」
どこから説明するべきかと勘助は少し悩んだが、搔い摘んで最初から伝えた。向こうの世界の璃奈の発明で眠ったらここにいたこと。幼馴染は歩夢ではなく優木せつ菜、中川菜々で、恋人は天王寺璃奈だということ。はっきりと、今の自分は上原歩夢の幼馴染ではないと言った。
「正直信じられないよ……でも、勘助君の今までの行動は私の知っている勘助君じゃないことは分かってた」
「ねぇ、勘助君と話ってできるのかな?」
「それは……」
勘助は迷った。そもそも入れ替わりなんてどうすればいいのか分かっていない。少し困って悩むと、頭からまた声が。
【少しだけ借りるね】
その言葉と共にギタリストの勘助は意識を失った。
☆
「歩夢ちゃん、久しぶり」
「その呼び方……勘助君なの?」
質問しながら会いたかった。と抱き着いた。彼も歩夢を抱きしめて言葉を続ける。
「ごめんね、三船さんや鐘嵐珠さんの問題は僕には難しかった。だから、ここに偶々ここに来た彼に任せることにしたんだ。逃げたんだよ僕は」
「どうして、私たちを頼ってくれなかったの! みんなで解決しようとすればこんなことにならなかったのに!」
「僕が、弱かったんだ。せつ菜さんが三船さんに生徒会選挙でコテンパンにされれた時、自分は大切な部員一人も守れなかったんだって絶望したんだ。自棄になってみんなから距離を置いてしまった」
「そしてあろうことか彼を頼ってしまった。彼には関係ないことなのにね。本当にごめんなさい」
そして勘助は歩夢と涙を流すそして、彼は言った。
「僕は見ているだけしかできないけど、彼が解決してくれたら僕はこの体に戻る。そして、その時はもう迷わない。歩夢ちゃん達を頼って同好会のマネージャーとして問題はみんなで解決するようにしていくから、それまで待っててほしい」
「うん。私も待ってる。勘助君のこと大好きだから。だから、絶対勝とうね、ランジュちゃんに」
「うん。事が終わったら、歩夢ちゃんにまたピアノ聞いてほしいな」
「絶対聞くよ。だから、頑張ろう」
歩夢が勘助の口にキスをする。そしてその言葉にこの世界の勘助は頷いた。そして目を閉じて。再び目を開けた。
「もう……いいのか?」
「うん。戻ってくるって約束したから」
「歩夢さん……なんかごめんな」
「ううん、勘助君は巻き込まれただけだし、それに君は、私の勘助君と同じで同好会メンバーを大切にする気持ちを持ってるから」
「ああ……絶対鐘嵐珠を止める。だから、協力してくれこんな偽物だがな」
「勘助君はね、お父さんがギターをしていたの。だけど、お父さんがわがままでそれが嫌になったからピアノにしたって言ってたんだ」
「俺と逆だな。俺も親父を反面教師にしたが、そうならないギター演奏を心掛けた」
「一応、ギターを教えてくれたのは親父だけどな」
「だから、あんなに上手だったんだね。……もし、出来たらだけど、勘助君のピアノと一緒に聞かせてほしいな」
「難しいかもな。でも、あいつに会ったら聞いてみるよ。とにかくだ、今は偽物の幼馴染だが、よろしく頼む。歩夢さん」
「うん。私も偽物の幼馴染だけど、協力するよ。勘助君」
こうして偽物とその幼馴染は握手をしたのだった。
☆
「歩夢? どうしたの顔赤いよ?」
「う、ううん! 何でもないよ。……もし侑ちゃんがいなかったら勘助君と……なんだか恥ずかしいなぁ」
歩夢の後半の言葉は侑には聞こえなかったが、ほんの少し勘助のことを意識してしまった歩夢だった。