「はいやってまいりました。第1回スクールアイドル同好会VSスクールアイドル部の対抗トーナメントです」
司会は山本勘助が取り締まるそうだ。なぜ勘助が司会なのかというとだ。ランジュが勘助に司会をしてもらうよう指示、得点は客がつけるため勘助が司会をやっても問題ないとのこと。スクールアイドルではない勘助は了承。これによりトーナメント戦が行われることになった。
「最初の試合は愛さんと璃奈……さんの対決。はじめるよ」
「勘助さんこれ持っていて」
「璃奈ちゃんボード? いいのか?」
「うん。愛さんに本当の自分で勝負したいし。それに世界線の影響かな、やっぱり勘助さんといると胸の奥が熱くなって心地よくなるんだ」
それは勘助が璃奈と付き合っているからとは今この場では言わなかった。そうか。なんて当たり障りのない言葉を言って頑張って来いとたった一言言ったのだった。
「そういえば歩夢さんはどこいったんだろうな。大事なものを取りに家まで戻るって言ってたけど……」
勘助は、歩夢を心配しながらも、これから起こりうることに対して少し警戒をしていた。
かくしてそれぞれの思惑の中、ライブバトルが始まったのだった。
☆
「1回戦目の勝者は愛さんです」
璃奈はボードを預けて自らの力で何とかしようとしたが、一歩及ばず。これにより璃奈が敗退となった。
かなり悔しい僅差であったが、愛も璃奈のパフォーマンスに褒めるしかなかった。
続く第二戦ではしずくとランジュが対戦。ランジュが圧倒し勝利を取った。それでもしずくは決して手を抜いたわけではない、少し涙を見せながらランジュにはかなわないと言ったが、ランジュは少し俯いて何かを言っていたのを勘助が見逃さなかった。
「……もしも俺が、俺の予想があってるなら、鐘嵐珠は何か焦っている。何をするか分からんが、少し警戒するか」
☆
そして番狂わせが起きたのは3回戦。かすみと果林の対決。多くの人は果林に軍配が上がると思っていた。だが勝ったのはかすみ。
「やっぱりかすみんは最高に可愛いパフォーマンスが出来ますね!」
「……マジかよ」
92票対8票。圧倒的勝利だった。これには勘助だけでなくみんなも驚きを隠せない。せいぜいかすみが勝っても僅差いや負けても僅差だと思っていた勘助だが、この結果に間違いはなかった。
「くそ、果林さんに話を聞きに行きたいが司会だから動けねぇ、嵐珠、これが狙いか?」
勘助は未だランジュの考えを見通せていない……
☆
続く栞子とせつ菜の対決ではせつ菜が制した。流石は幼馴染だと若干関係ないことを思う勘助だが、申し訳ない話をするとせつ菜は栞子に絶対勝つと思っていた。栞子はまだ日が浅いのもあるが、せつ菜とは覚悟が違う。
そして愛、ランジュ、かすみ、せつ菜の4強がそろったのだが、
「これだけだと興ざめするから部VS同好会になるようにしましょう」
とランジュが新たにルールを変えてきた。さらに驚きが言葉を勘助を襲う。
「そして勝った人がそこの司会者、山本勘助と決勝するの。彼、歌には自信があるみたいだから」
「なん……だと……」
それがランジュの狙いだったのだ。あのパフォーマンスのせいで勘助にも警戒を怠らなかったランジュはいっそのこと同好会を打ち負かした後、マネージャーである彼の心も完膚なきまでに折ってやろうとしたのだ。
勘助にはもうギターはない。夢だから、違う世界線だから、愛用のあいつは持っていない。かといって勘助はピアノは少ししか引けない。でも、ランジュに対して勝てるレベルでは到底ないのだ。それに今から軽音楽部からギターを取っても間に合わない。
「……それが狙いかよ」
勘助は流石に舌を打つ、どうするかと悩んでいる間にも4人のトーナメントが進む。そしてランジュが最終的にせつ菜を破り、勘助と戦うことになった。
「先行は私でいいかしら?」
「……ああ、好きにしろ」
勘助は何も思いつかない。ただ無慈悲にランジュのパフォーマンスの時間が過ぎていくだけである。しかもみんなには今の勘助がギターを弾けることに疑問を持っているだけだ、持ってきてくれる可能性はゼロ。
パフォーマンスが終わり勘助の番。勘助が考えても答えは出なかった。
「どうしたの? 貴方の番よ? ……ああ、ギターもピアノもないから弾けないのね」
その言葉に勘助は……何も言い返せない。このまま不戦敗しか手がないのか。そんな時、勘助の耳に声が聞こえた。
「勘助君! 受け取って!」
「歩夢さん!?」
誰だ、お前はというまでもなかった、せつ菜の驚きに、勘助は眼を開いて笑いだす。
ああ、やっぱり持つべきものは
「なによ、急に笑い出して、大人しく負けを認めなさい」
「断る。せっかく幼馴染が持ってきてくれたものを受け取らんわけにはいかん」
そう言って勘助は歩夢の方に走って、歩夢と目を合わせる。
「遅くなってごめんね? これ、探してたの」
「これは……ユニコーン!? なんで……」
「勘助君はピアノをやっちゃったけど、お父さんは勘助君のためにこのギター買ってたのを思い出したんだ」
歩夢は言う。勘助がピアノをやる前は、父親が道を間違えるまでは、ギターを少しだけ触っていたらしい。父親も過去に、勘助がギターに興味を示していたので、買っていたのだと。
そのギターは少しだけ埃かぶっていたが、勘助が元の世界で愛用してたユニコーン。レフティーのエレキギター。
「なんで一人用なのにアコギじゃねぇんだろうな……全く、どこまでも狂ってやがるぜ。この世界線は」
勘助は歩夢からもらったギターの弦とピックを受け取り礼を言いながら調節を終わらせる。
「そう言えばなんで俺の部屋は入れたんだ?」
「Stalking dreamしてるから勘助君の家の合鍵持ってるんだよ」
「何それ怖い」
「ちょっと! 勝負はどうするのよ! 早く負けを認めてランジュに跪きなさい!」
「うるせぇ! 今その面ぶっ壊すから10秒待て!」
「なっ!?」
ランジュの言葉に一喝入れて、ギターを持ち立ち上がる。チューニングもピックもすべてがそろった。
そして、彼は呼ぶ、あいつの名を……
「さぁやるぞ、俺の相棒! ユニコォォォォォォォォォォォォォン!!」
「……っ! なんて、声なの!?」
勘助の咆哮にみんなが耳を塞ぐ。勘助は気にせずピックを飛ばす。
一枚のピックは時にギターを演奏する道具になり、
時に人の心を打ちぬく弾丸となる
瞬間勘助は……魅せた。
「な、何なのよ、この音は……」
「どうして、たった数秒でここまで心が震えるんだ……」
「これは……私の曲じゃないですか」
ランジュも、ミアも、愛も、果林も、歩夢も、せつ菜も、かすみも、エマも、彼方も、栞子も、しずくも、璃奈も心が震える。それだけじゃない観客席全体の心を芯まで揺らす圧倒的なサウンド。
そして歌いだす。一番初めにこのギターをトラブル解決に使った時、確かこの曲を弾いたと勘助は懐かしむ。せつ菜が同好会に入る、入らない、それでひと悶着した時全力でかき鳴らした記憶がよみがえってくる。
勘助は笑っていた、楽しそうだった、この歌はカバーみたいなものだが、自分が最初に作った曲でもある。元の世界で最高の幼馴染である優木せつ菜のCHASE! 勘助の始まりにして初めて誰かと協力して作った渾身の一曲。
(なぁ、嵐珠。この世界でお前は一人で何に悩んでんのか俺にはわからねぇ)
(それでも、俺はあの世界の嵐珠とミアとのほうが好きだ、同好会を楽しいって、好きだって言ってくれたお前たちが好きなんだ)
(だからよ潰すなんて悲しいこと言うな、俺はまたお前たちと……写真が撮りたいだけなんだぜ)
勘助の心が届いたのかは分からない。それでも、最後に勘助が見た光景は、ランジュが泣きながらミア達と一緒に膝をついていた姿だった。
☆
「終わったみたいだね」
「全部やってやったぜ、おら、お仕置きだ!」
「痛い!?」
前に見た精神世界で、黒い部屋が真っ白くなっていた。勘助はもう一人の勘助の脳天をギターでぶん殴る。悶絶してる彼に自業自得だと吐き捨てる。
「そもそもテメェがみんなともっと悩んで解決しなかったのが今回の悲劇だろうが。勝手に諦めてんじゃねぇよ」
「……何も言い返せないかな」
「お前が俺をここに呼んだわけじゃないんだよな?」
「それは違うよ、目が覚めたらここにいて、ビジョンのようなものが見えた……もう一人の僕が歩夢ちゃんに起こされてたんだ」
「へぇ、じゃあまぁいいや、お前が助けを呼んだならもう一発と思ったけど」
「本当に容赦がないね君は!?」
「自業自得だと言っただろ」
勘助がそう言うと彼はボソッと言った。
「僕は君みたいに強くないから」
「俺だって強くねぇよ、現にせつ菜に抱きしめられた時泣いたし」
「でも、強くないから人ってのはみんなを頼って託すんだろ? お前も異世界の俺じゃなくて今いるメンバーに自分の本心伝えて、助けてくれって、託せばよかったんだよ」
勘助の言葉にはっとして彼は笑顔になった。うん、そうだね。と真っすぐ勘助の目を見て。
「……んじゃ、用が無いなら帰るぜ。俺は侑と璃奈とせつ菜と……とにかく向こうの奴らに会いたいんだ」
「うん、本当に世話になった……あ、そうだ勘助君」
「あ? なんだ……」
勘助が言い終わる前に1枚の色紙が渡された。そこには一切何も書かれていなかったが、彼は答える。
「向こうの世界に帰ったら、見てみてくれないかな。きっと喜ぶから」
「夢の中なのに持っていけるのか? ……んじゃ、一応貰っとくわ。ああそうだ」
「ピアノ、頑張れよ。後、歩夢を泣かせるなよ。ついでにお前の親父も、少なからずお前を愛してはいたぞ」
「……うん。ありがとう」
「ふん、もうこりごりだけど楽しかったぜ」
「ねぇ、最後だけ一緒に演奏しない? 歩夢ちゃんにも聞かせたいんだ」
そう言えばそんな約束をしていたと勘助が思った瞬間、この世界からグランドピアノとユニコーンが光の粒子から出てきた。
「夢なら何でもありかよ……仕方ねぇ、おい勘助。ボイスレコーダー用意しとけ」
「うん、ありがとう。勘助君」
そう言って二人の勘助は演奏を始めたのだった。
☆
「勘助さん……会いたかった!」
「うわぁぁぁぁ! 勘助さん!! よくぞご無事で!」
「璃奈、せつ菜心配かけた……なんだこの状況!?」
勘助が目覚めるとすぐに璃奈とせつ菜が飛び込んできた。頭をなでようとしたが、その隣に土下座している栞子、ランジュ、ミア、愛、果林、しずくがいて、その向こうにかすみがエマと彼方に本気を出したら自分はすごいんだぞアピールをしていた。
すぐに土下座組が目覚めた勘助に気が付くと
「すみませんでした!!」
きれいに日本文化を象徴する土下座を決めた。
「……向こうとここのお前らは違うだろ、気に病むなよ」
そして勘助はどうしても許してほしいなら。と言ってこう告げた。
「もう一回、みんなで写真撮ろうぜ。今度は同好会の教室内でさ」
土下座組、勘助の優しさに大泣きである。
璃奈も勘助に謝ったが、楽しかったからいいと。しかもあんな夢だったが、目のクマが取れていたので璃奈にお礼を言って、結局今日は解散とした。
家に帰って勘助はポケットから出てきた1枚の色紙を見つける。そこに書かれていたのは一枚の写真。勘助はこれこそ夢なのにと不思議に思ったが、その一枚を見て笑ってしまった。そこにあったのは……
ありがとう勘助(君、さん)!
そういくつか一言書かれた文字とスクールアイドル同好会13人全員の写真だったという。
「ありがとよ、みんな。そして頑張れ、もう一人の俺」
勘助のつぶやきは空高く消えていったと言う。
一応今回のお話でこの小説は終了となります。
ただ、番外編は私の妄想が捗り次第書いていくので、たまに更新するかもしれません。
ここまで見てくださってありがとうございました。
良ければちょくちょく上げる番外編も見てもらえれば幸いです。