許せなかった…ヴラド3世が罪人格だなんて… 作:ナマハゲィータ
戦闘が終わりその場は静かになった。
その場に居るのは俺とまだ能力が解除されない頼親、そして気絶し輪廻の枝を弾かれた少女だけだ。
ジャクソンが居た場所には輪廻の枝が残るのみであった。
「終わったな…。」
「うむ…しかしすまんな。某が動けなかった故にあちこち怪我をし、片足は折れてしまった。」
「折れたというより足がぷらぷらしてる感じであるな。ただ気にするな、しっかり機を伺い決めたのだ。それを責める者はおらぬよ。私はまだ完全な廻り者ではない故医療機関を受けられるしな。むしろ貴方のおかげで勝てたのだ、感謝するほかない。」
「その言葉はありがたいな。完全な廻り者となれば表の医療など受けられぬからそれに関しては不完全であるのが功を奏したな。その足では帰るのも苦労するだろう、家に戻るまで肩を貸してやろう。」
「ありがたい。」
肩で息をし足の痛みからへたりと座り込んだ俺に頼親は話しかける。
しかし頼親の能力はかなり強い。
対象から目を離すではなく一定の距離を離れるってのが解除の条件の一つなのでこうやって俺を対象として透明化し護衛することが出来るだけでなくこうして本来関係ない相手の暗殺も俺が近くにいれば可能となる。
そんな彼が謝罪をしてきたがこちらは気にするなむしろ助かった、と返した。
その感謝に顔は見えないが照れてるように感じた。
彼としてもこのような戦闘の経験は殆どないだろう。
それなのに焦って飛び出さず俺が痛めつけられているのに必死に機会を待っていたというのは並の廻り者では出来ないだろう。才能による殺人衝動もあるだろうから余計に。
そんな彼から帰宅まで肩をかそうというありがたいお言葉をいただけたのでそれに甘える事にした。
「ところでその女子はどうする?念の為に止めを刺すか?」
「出来ればしたくない、輪廻の枝没収もしたくない。甘いと言われるかもしれんがな。あと救急車も呼んでやってくれ。」
「足をそのようにされたお前がいうなら良いがこの女子はあの石女と同じ組織の廻り者であろう。また誰かに凶人を振るう恐れもあるだろう。」
「だから『悪魔公』を使った。洗脳されていたならそれを吹き飛ばすほどの恐怖を叩き込めば良いだろう。ほれあの顔を見ろ、酷い夢を見てそうだ。」
帰る前に頼親はジャック・ケッチの廻り者である彼女の処遇について尋ねてきた。
まぁまだ完全な廻り者じゃないし不完全な廻り者が輪廻の枝を失ったらどうなるかも分からないから今回は助ける事にした。
戦闘中の態度から周りに被害を齎す事を頼親は危惧していたが、『悪魔公』によって植え付けられた恐怖映像に魘されている彼女を見せたら引き下がった。
まぁ命を取られなかったことに喜び己の所業に反省してくれたら良いな。
そうして頼親が救急車を呼んだ後俺らはその場を後にした。
拠点に戻ったら先に戻っていた道雅が驚いた顔をして救急車を呼んでくれた。
「しかしそんな金あるのか?」
「金ならあるぞ?ほらこれ見ろ。」
現世と繋がりを絶っている廻り者に金なんかあるのか?と尋ねると新聞を見せてくれた。
「俳句コンテスト…ってお前まさか。」
「才能使って荒稼ぎ。ここで完全な廻り者になったからなる前の名前は分かっていたし免許証やらなんやらも手元にあるから自分の記憶はなくてもこれが俺なんだなってのは分かるしな。」
衝撃の事実である。
完全な廻り者となったらそれまでの過去は殆ど忘れ事実上生まれ直しになる。
それなのに彼は完全な廻り者になりながら過去の自分の来歴を利用してしっかり溶け込んでいる。
廻り者となっても顔はそのままってのもデカいのだろう。
これがニュートンやシュレディンガーみたいに顔が変わっていたならこうもうまくいかなかっただろうし。
しかし完全な廻り者でありながらこうも現世に溶け込むとは素直に感心するしかない。
こういう感じで廻り者でありながらも完全に現世と関係を切らず生きていける…そんな集団を作りたいと少し思ってしまった。
原作じゃあ廻り者だけで固まって隠棲していたり、全人類廻り者計画だったりではなから共存とかする気がなかったし。
まぁそういうのが出来るのは王の廻り者とかだろうから難しいんだろうがね…明確に排除しなきゃならない廻り者は出てくるし項羽はそういうの嫌うだろうしなぁ。
前途多難だなぁと思いながら俺は救急車に乗せられ病院へと向かった。