許せなかった…ヴラド3世が罪人格だなんて…   作:ナマハゲィータ

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第29話:一方その頃

ヴラド3世が救急車で病院に担ぎ込まれた頃一人の男が荒れに荒れていた。

 

ここは誰も住まなくなった廃村を密かに利用した「白道教」の拠点であった。

都市部から離れひっそりと隠れ潜んでいるが故に今のところ黒鋭隊に見つかってはいない。

 

そんな秘密拠点にて「白道教」の教祖であり、あのお方や大元任などと呼ばれた男が荒れに荒れていた。

 

「我の妻が不埒者に殺されたのだが!」

 

「大元任…もう10回以上同じことを繰り返しておられますが…。」

 

「ああ…おいたわしや大元任。どうか私の体で御慰めください!」

 

「今日はあの岩のような体とは思えん柔らかさと普段は勇ましいのにしおらしくなるあの女の気分だったのだが!」

 

「ああん。いけずですぅ〜。」

 

「漫才見せられる我々の身にもなっていただきたいのだが…。」

 

そこには赤ん坊のように駄々を捏ねる全身白塗り服すら真っ白で頭に被った黒い笠子帽が印象的であった。

 

そんな彼に寄り添い誘惑する女は江戸時代の町娘のような格好でありその袖は焦げていた。

 

その様を見て溜め息をつく二人。全員首から花弁が舞っていた。

 

「そもそもなぜ我が妻が殺されねばならんのだ!」

 

「いや大元任の命で脱会しようとした連中を消していたのは基本的に彼女でしょ。いくらこんな辺鄙な場所に隠れたとはいえどこで繋がるかわからないですし、遺族の決死の努力って奴では?」

 

「動機はそれで良いとしよう。ただあの大女を殺すなど廻り者でなければ不可能であろう。過去の襲撃でも彼女が文字通り壁になった事で我々は生き残り彼女自身も生還している。反応が消えた場所からして奇襲も厳しい路地だ。」

 

「まぁ二人居るって事でしょうね。もしくはあの娘が裏切ったか…。」

 

大元任の怒りと嘆きが混じった叫びに冷淡に返すのは男物のスーツを見に纏い幅広帽子を被った廻り者。

彼女の返しに疑問を呈したのは魔女の帽子のような兜を被り全身を鎧に身に包んだ廻り者。

顔や体のラインが隠れているが女性であり声はその姿に似合わず可愛い。

 

女武者の疑問に返答するのは犬頭をした女の廻り者である。

 

「洗脳が中途半端だったと?」

 

「可能性はあります。なんせ彼女が加入したのは半年前ですがまだ大元任のお手付きではありませんし。謎の廻り者二人に殺害されたと考えるよりありえるでしょう。」

 

「おのれ!この我が拾ってやった恩を忘れたのか⁉︎」

 

「このようなハーレムカルトなどと知ったなら幻滅して裏切る機会を探るなど当然だろう大元任。」

 

犬頭の説明に皆が納得する中で大元任だけは怒りを露わにし大声で恩知らずだと彼女ことジャック・ケッチを罵倒するのを女武者は溜め息をつきながら指摘する。

 

大元任を教祖として今集まっている彼女達を幹部とした白道教は女性救済団体を隠れ蓑に身寄りのない少女たちを甘い言葉で勧誘しそこから様々な奇跡体験で洗脳してから生まれ変わる為と称して大元任のお世話をさせている。

これが教団の実態である。

 

「流石に無礼が過ぎるのでは?」

 

「拙者は武士。戦いこそ本願というのに奴のペテンの手伝いを繰り返しておるのだ。不満の一つ二つ態度に出るのは許せ。」

 

女武者の態度に今までずっと大元任に媚びていた女が苛立ちを露わにし女武者を非難する。

それに対し女武者は意に返さず愚痴を溢す。

 

「こんなんだが鎧の中は可愛くてな?」

 

「あら〜。嫌よ嫌よも好きのうちという奴なんですねぇ。」

 

「黙れ!」

 

そこに大元任が口を挟み女は一転ニヤニヤしながら女武者を見つめその視線に苛立ち声を荒立てる。

 

「脱線したが結局どうするんだ?」

 

「彼女の場所は割れてます。ジャクソンの反応が消えた場所から遠くない病院です。」

 

「病院という事はジャクソンも抵抗したという事か。ケッチでは直ぐには殺しきれんからな。手傷を追うのは当然か。」

 

「はい。だから私の手駒に襲撃させようかと。」

 

「ふむ、許す。我の妻を殺した不埒者を殺せ。我は寝所に戻る故邪魔するな。」

 

「お七もお供させていただきます〜。」

 

「私もお供いたします。」

 

犬頭は彼女の居場所は既に分かっているので自身の手駒を使っての殺害を提案する。大元任はそれを許可すると寝所へと戻っていき、今まで側にいた「お七」と男装の廻り者はその後をついていった。

 

「好色者共めが。」

 

「仕方ないでしょう。お七は洗脳とか関係なくもう大元任に惚れ切っておりますし、テロワーニュは男とシながら女とスるのが好きな異常者ですし。」

 

女武者が侮蔑の混じった目で彼女らの背中を見ると犬頭が彼女らを擁護した。

 

「ところで貴方も混じってみては?」

 

「貴様私をバカに。」

 

更に犬頭は女武者に混ざって見ては?と笑いながら言うと彼女は刀に手を当てる。

 

ドン!

 

「混じって見ては?」

 

「ああ…そうだな。急に身体も疼いてきたし。し、仕方なくだ。仕方なくこの疼きを止めるために行くのだ。奴に情などない!」

 

犬頭が右足で強く床を踏み鳴らすと女武者の様子がおかしくなり、言い訳をしながら3人の後を追って行った。

 

「ククク、お可愛らしい事ですねぇ。やはり貴方が一番弄り甲斐があります。他の連中はこの場に集まれなかった連中含めて弄り甲斐もない異常者ばかりですからねぇ。」

 

犬頭は歪んだ笑みを浮かべ走り去る女武者の背中を見送りそう溢した。

 

「この教団は私の欲も満たせる素晴らしい遊び場。それを破壊なんかさせません。さて可愛い犬達に病院の襲撃を命じるとしますか。」

 

多くの女性達を不幸に陥れる教団を遊び場と称するこの廻り者もまた間違いなく異常者であろう。

 

そんな彼女は「飼い犬達」が待つ拠点へと帰る。

 

こうしてケッチの知らないところで魔の手が迫っていた。

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