許せなかった…ヴラド3世が罪人格だなんて…   作:ナマハゲィータ

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第42話:絶望と覚悟

「まぁ…いるだろうな。あれだけ騒ぎが起こった以上居ないわけが無かったか…。」

 

俺は状況を把握しながら喋ったが内心の諦めが隠しきれず言葉の節々に現れていた。

いやこれはどうしようもない。

 

このまま彼女らと共に降伏したとして良くて拘束悪くて密かに殺害。

そりゃそうだ推定廻り者がこれだけ派手にやらかしているんだから俺を信用なんてできるはずがない。

 

そうでなくても廻り者化が解除され輪廻の枝が没収される可能性もあり辛いのだ。

 

「ケッチ…お前はまだ廻り者になっておらぬようだしこのまま奴らに保護でもされておくのだな。持ち物検査は…まあされないよう祈れ。」

 

俺はおぶっていた患者を降ろすとそのまま院内に戻る事にした。

 

後ろで俺を止める声や感謝を告げる声が聞こえたがそれには反応せずにだ。

 

 

 

 

「千佳!あの人なんで戻っていったの⁉︎」

 

あの黒い連中が下で集まっているのを見たオッサンはアタシに連れて来た患者さんを預けて院内に戻っていった。

まだ目を閉じアタシにくっついている患者さんはオッサンに感謝していたがママの方は困惑しオッサンを引き留めようとしていた。

 

それが叶わなかった後ママは不安そうな顔でアタシにそう聞いた。

でもアタシは答えられ無かった。

アタシだって不安だからだ。このまま保護されるのかそれとも…。

 

そう思いながらもアタシらはエスカレーターで下に降りていく。

アタシらの姿を見た黒い連中は喜びを露わにしてアタシらを保護してくれた。

持ち物検査は無かった。

 

あの後黒い連中の一人から色々聞いたがどうやら監視カメラで待合室での虐殺を確認した警備員の方が警察に連絡をしたが警察では手に負えないと判断されたのか彼らが代わりに呼ばれたようだった。

 

安堵の空気の中で助けられた患者さんがオッサンについて喋った結果場が凍りついた。

彼女は無邪気に自分を助けてくれた人について話し彼は他の人を助けるために戻ったと信じて彼も助けてくれるよう話したのだろう。

 

ただ首から赤い花弁みたいなものが舞っていたという情報は彼らにとって重かったのかもしれない。

 

顔も装備で隠れていて表情は分からなかったし遠かったので何を話していたかも分からなかったがオッサンの存在は彼らからしたらあり得ないもので何か裏があるのでは?としか思えなかったように見えた。

 

彼らにとって廻り者は悪であり排除すべき異物なのだと彼らの紛糾具合から察せたアタシはオッサンが逃げた理由に気付き内心怒るしかない。

 

(いや祈れじゃねーだろオッサン!敵のど真ん中に送っといて何が祈れだ!)

 

ただすぐママの顔を見てハッとした。

アタシはこんなアタシを見舞いに来てくれたママを見捨てられないし離れたくもなかった。

そんな様を何も見てないのにオッサンは察してくれたのかもしれなかった。

 

 

「千佳…あの人はなんなの?貴女もあの人と同じなの?」

 

精神状況のチェックも済み二人きりになるのを許された途端にママは必死な顔でそう聞いてきた。

 

そんなママを見てアタシも顔を悲痛で歪めながら肯定した。

 

「そうだよママ、アタシもあの人と同じ。これで変わりたかったんだ…周りから虐げられるしかなかった地獄を。」

 

その言葉にママはアタシに抱きつき涙を流しながらしきりに謝っていた。

そんなママにアタシはこれ以上何も言えず泣きながら抱き返した。

 

そうして一通り泣き終えたときに黒い連中に保護されたと思わしき人たちに声をかけられた。

 

「すいません…千佳さんでしょうか?」

 

「ああそうだけど?誰?」

 

アタシはそれに正直に答えた。思えば見ず知らずの人間に名前を覚えられている事に違和感を覚えるべきだった。

 

「そうですか。なら死んでください。」

 

アタシの返事を聞いた連中はそう答えるとポケットからナイフを取り出し襲いかかってきた。

 

(な⁉︎しまった⁉︎アレ全部デコイか⁉︎というか黒い連中は持ち物検査…してたらアタシはこの場にいねえ!やべえかわせな⁉︎)

 

咄嗟の事に思考はまとまらず動く事も出来なかった。

ああ死ぬ、そう思った時にアタシは誰かに突き飛ばされた。

 

いや誰かなんて分かっていたはずだ。でもそう信じたくなかっただけなんだ。

 

「マ…ママ?」

 

ママがアタシを突き飛ばしナイフを持って突っ込んで来た三人に刺されていたのだ。

 

ママが力なく倒れる。

それを気にすることなく奴らはアタシに目を向ける。

 

「殺す…殺してやる!」

 

アタシは無我夢中で輪廻の枝で首を切ろうとする。

 

「なっ⁉︎お前ら何してやがる⁉︎」

 

ただその前に黒い連中が駆け付け瞬く間に奴らを押さえ付け拘束していった。

 

「大丈夫ですか⁉︎」

 

「っ⁉︎そうだママ…ママが⁉︎ママを助けて⁉︎」

 

呼びかけにハッとした私はママを助けるよう懇願した。

だけどそんなアタシに対しそいつは俯いた。

 

ナイフによる腹部への深い傷が三箇所、どう考えても致命傷で助かりようが無かった。

 

「ああ…ああ…。」

 

アタシはそんなママに縋り付き泣くしか無かった。

後ろで救急車を呼ぶ声が聞こえていたがもうそんな事どうでも良かった。

 

ポン、とママが最期の力を振り絞ってかアタシの頭に手を乗せた。

 

そこに何の意味があったのだろうか。

ごめんねだったのかがんばれだったのかあるいはそれらが混ざっていたのか。

 

だけどアタシがその意味を聞く前にママの腕から力が抜けアタシの頭から地面へ力なく落ちていった。

それを見てただただ泣き叫ぶしかなかった。

 

 

 

しばらくして泣き止んだアタシは覚悟を決めた。

 

ママが救ってくれた命をかけて奴等を潰す。

その為にはこの黒い連中の協力が必要なんだと。

 

 

「すいません。アタシ…あいつらについて心当たりがあります。」

 

アタシは近くにいた黒い装備の男性に声をかけた。

手に持った輪廻の枝を見せながら。

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