許せなかった…ヴラド3世が罪人格だなんて… 作:ナマハゲィータ
いやぁー初対面の相手に名前を言っちゃうとか警戒心薄過ぎないか?
おい風見鶏お前使ってるだろ?という目線でフーシェの方を見ると彼はそんな俺の顔を見て首を短く縦に振った。
まぁそうだろうな、いかにまだ中学1年生とはいえ実家の目の前に立つ知らないおじさん二人に名乗るとか危機意識が欠けてるというしかない。
原作で扇寺兄弟の両親はあまり出て来ないがかなり厳しい人間だったのが伺える以上普通はありえないと判断できた。
「元気な挨拶だねぇ。そうだ一つ君に質問したい事があるんだけど良いかなぁ?」
俺はそんな西耶少年を見て笑みを浮かべ普段とは違ったきさくな感じで話しかける。
明らかに不審者だがそんな俺に疑問を抱かず、はい!と返事する姿に罪悪感すら覚える。
ちゃちゃっと終わらせたいと思い俺はポケットから輪廻の枝を取り出しそれを西耶少年に見せる。
「これ知ってるかな?」
「っ⁉︎…し、知らないです。あのもう良いですよね?それじゃあ。」
彼は明らかに動揺し目を泳がせながら知らないと言って自宅へと走っていった。
原作では出来るお兄ちゃんでキレ者という感じであったがこの頃はやはり年相応なのか反応が分かりやすい。
まぁ自分以外の廻り者なんて初めてだろうから驚いたのだろう。
「あの反応…クロですね。いやあ噂とやらもバカにできないものですね。流石我らがリーダー。」
「煽てても何も出んぞ。この調子で件の放火魔も討伐できれば完璧だな。では戻ろう、宿は取ってあるのだろう?」
「ええ、もちろん。」
そんな彼の反応を見たフーシェは彼が廻り者だと確信しその情報を持ってきた俺を褒める。
明らかに煽を受け流しつつもう一つの目的達成のためにしばらくこの付近に泊まることを決めていた俺たちはフーシェが予約を取った宿に向かった。
ちなみに俺は知ってるから流したがフーシェが西耶少年を廻り者だと思った理由はやはり輪廻の枝を見せたときの反応だ。
見た目ナイフの輪廻の枝を知らない人間に見せたならどう反応するか?
危険だ!と抗議するか、驚くか、はたまた凄いナイフだ!と反応するかとにかくそれをナイフだと判断する。
ノータイムで知らないと言っても疑われにくい。
だが西耶少年は動揺した上で知らないと言って逃げるように走っていった。
これでは疑ってくださいと言っているようなものである。
万能の天才も発現したばかりではまだまだということなんだろうな。
自宅へと帰った扇寺西耶は両親と赤ん坊の弟にただいまと告げると自室に向かった。
そこで彼は動悸が激しい事に気づき息も荒くなっている事に気づいた。
「…なんで僕は見ず知らずの人に名前なんて。」
一度時間を置いてから気づいた失態。
彼らはこの辺りの人間ではなかった筈なのにまるで近所の人に会ったような感覚で名乗ってしまった。
あの輪廻の枝を見せられた事で思考が急速に冷静になり現状の危険さに気づき走り出したがなぜ止められなかったのか疑問だった。
「…僕がコレを持っているって分かった上で接触したって事なのかな?」
彼は隠していた輪廻の枝を見ながらそう考えた。
思えばいつ自分の手の中にあったのかは覚えてない。
ただ弟が生まれ一歳の誕生日が近いとなった日にふと弟に誇れる人間なのだろうか?と思い始めたのがきっかけだと感じていた。
輪廻の枝で廻り者になってから平凡だった人生から生まれ変わったかのように感じた。
指導を受けた物はなんでも吸収し指導者を凌駕するほど成長していく。
その時にこれが才能なんだと理解できた。
「これで僕は弟に胸を張れる兄になれたのかな?いやまだ足りないかもしれない。もっと…もっと色んなことを覚えないと。」
一つ習熟したら次、そしてまた次と彼が抱える渇望は留まることを知らない。
その内、一つの考えが浮かぶ。
「僕を捕まえることができたのにしなかった…もしかしたら初めて廻り者から教えを乞うことができるかもしれない。」
思い浮かぶのはさっきまで恐怖の対象だった二人である。
もう一人の顔はあまり覚えてないが、おそらく廻り者に違いない。
あのとき自分に危害を加えなかったなら話が通じるのかもしれない。
危険かもしれないがやってみる価値はあるかもしれない、全ては尊敬される兄になるために。
こうして彼はついさっきまで恐怖の対象だった二人に会うのを待つようになった。