許せなかった…ヴラド3世が罪人格だなんて… 作:ナマハゲィータ
お七の炎は自身が持つ恋心を燃料に燃え続ける。
ただ本来なら彼女のような重い人物に愛され耐えられる男性などそう居ないため最終的にその愛を拒絶し燃やされてしまう。
しかし今回彼女が恋したのは廻り者であり更に女性の心を取り込むのが得意な全龍海であるというのが悪さしている。
全龍海は彼女を拒む事はなくどれだけ燃やし人を殺そうとも笑い許す。
故に今の彼女は尽きぬ炎を見に纏い暴れ続けていた。
廻り者としての相性が良すぎたが故に並の廻り者すら敵わぬほどの力を得てこれまで燃やし続けていた。
そんな彼女は今目の前の相手に恐怖していた。
(な…なんなのよ、この男は!)
まだ中学生だと思われる少年を躊躇なく切り捨てでも自分を殺そうとしている目の前の廻り者、ヴラド3世。
(あの男から目を離してはダメだ、目を離せば殺されてしまう!)
彼の発言はお七の余裕を奪いその視野を著しく狭めさせる事に成功していた。
その結果、庭に火を放つだけで有利に持っていけるという状況が頭から抜けてしまっていた。
目を離した瞬間に吹き矢で貫かれるかもしれない。
人質を取ったらそれが荷物となり逆に自分の身が危うくなるかもしれない。
彼女の攻撃方法はただ炎を放つだけではない。
直接相手に触れただけでも燃やせるし火の鳥となってる今ならその機動力で翻弄すれば良い。
ただ片腕が吹き矢のせいで使えなくなっていた事もあり彼女の思考は恐怖で満たされ自分からその選択を狭めていた。
近づくなんてそれこそあの男のテリトリーで戦う羽目になるし、機動力に関してはやはり片腕が動かず無理矢理炎で羽を作ってる分遅くなり不安定であるためその選択も出来なかった。
故に距離を保ちながら炎を相手に飛ばすことしか出来なかった。
そうして自分から選択肢を減らしていった彼女の末路はもう決まっていたのかもしれない。
(勢いに任せて出て来たけど何も出来てない…。)
扇寺西耶は以前あった男が自分の事をあの炎の廻り者に言った時に後先考えず出てきたのを後悔していた。
初めて見た廻り者同士の戦い。
幸い家には誰も居なかったため自分が廻り者である事がバレないというのもありもっと近くで見てみたいと駆け出した。
初めて会ったときと違いあの男性、ヴラド3世からはまず恐怖を感じた。
続いて覚悟と執念も感じた。
大切なもののために他は切り捨ててでも相手を殺すという漆黒の意思に共感する自分が居た。
自分が彼の立場なら当然大切な弟を守るために同じ判断をすると思ったからだ。
故に嫉妬した。
それだけの意思を成すための力を持っている事に羨ましさを感じた。
今の自分にはまだそういった力はないからだ。
戦闘は彼の方が優位に立っているように見えたがそれでも徐々に相手も立て直していると感じた。
(…今の僕には何ができるんだ?)
ただ見ている事しか出来ない自分が恥ずかしくなり何か出来る事はないか必死に考える。
そこで一つ閃いた。
これなら勝てると。
そう思ったらあとは早かった。
まず戦場から少し離れたところにいた風見鶏の頭をした廻り者の元へ向かい自分の意思を伝える。
「あの、すいません!僕だったら吹き矢を上手く扱えるので話をさせてもらえませんか?」
「…このままではジリ貧です。分かりました賭けにでましょう。ただし巻き込まれても自己責任ですよ。」
彼は快く提案を受け入れ戦闘中の男の方へと共に走る。
「おじさん、その吹き矢貸してくれませんか?」
西耶は覚悟を決めてお願いをした。
「良いが…経験あるのか?」
「はい。色々叩きこまれましたので。」
戦闘中であるため背後を振り向くことなく尋ねるヴラド3世に西耶は自信を持って答える。
それを受けて吹き筒と矢が渡される。
「おやおやおや?その少年に吹き矢を渡して良いのですか?」
それを見た彼女は笑みを浮かべながら煽るもそれを無視して二人は行動に移る。
吹き矢は動きを止めしっかりと狙いを定めた上で放たないと中々当たらない。
故に西耶はじっと彼女を見据え筒を構える。
背中の帯を展開しその時を待つ。
一方でお七の方はあまり西耶の方に意識を向けていなかった。
ここまでの事で吹き矢の命中率は低いと認識したのが一つ。
そしてもう一つは下手にあちらに意識を割けばヴラド3世が放つ投げ槍を避けられなくなる恐れがあるからだ。
既に身体の至るところに擦り傷が出来、服は破れているため全く油断が出来なかった。
この状況は西耶にとって有利に働いた。
今までの経験を引き出しその時を待つ。
そしてその時は来た。
疲れが来たのかヴラド3世が体勢を崩してしまった。
それを見たお七は動きを止め炎を放とうとした。
明確な隙を西耶は見逃さず吹き矢を放つ。
それは吸い込まれるように側頭部へと吸い込まれていき、
『串刺公』
矢が鉄杭へと変わっていき彼女の頭を貫いた。
瞬間纏った炎は消え、彼女の体も溶けながら落ちていき輪廻の枝だけが地面に落ちた。
こうして扇寺邸での戦闘は終結した。
しかし
「僕に指導をしてください!」
「……。」
扇寺西耶との交流はここから始まった。