許せなかった…ヴラド3世が罪人格だなんて…   作:ナマハゲィータ

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第68話:閉じた楽園

「いや〜お七まで死んでしまったねぇ。」

 

「それだけの強敵という事だ。悲しみ以上に興奮してしまうな。」

 

とある一室にてその場にはそぐわない格好の二人が談笑していた。

 

一人は幅広帽子を被り男性用の紳士服に身を包んだ女性の廻り者、テロワーニュ・ド・メリクール。

一人は鎧兜を身に纏い顔も面で隠れている女武者の廻り者高木鑑房。

 

二人は共に白道教の幹部であり、現在は表の看板である女性救済団体の社宅で寝泊まりしながら活動を続けていた。

 

「もう私らだけだねぇ。寂しくなるなぁ。」

 

「一応あと二人居るには居るが奴らとはあまり会わぬからな。」

 

そんな二人はお七の死を教祖である全龍海から伝えられ、寂しさを感じていた。

メリクールの方は表情が寂しそうで、鑑房も心なしか沈んでるようにも見える。

 

なぜかといえばお七は基本的に本部から動かない二人とは付き合いが長かったからだ。

 

「ジャクソンも死んでお七も死んで…転龍会時代のメンバーは大元任様除いて全滅かい?」

 

「いや今はおらん二人のどちらかがその頃のメンバーだったはずだ。」

 

「へぇ〜。まぁ私も高橋も白道教結成後に参加してるからかその辺りはうろ覚えだなぁ。」

 

メリクールはこれで転龍会の生き残りは全滅かと語るが鑑房はそれを訂正する。

それを聞き彼女は初めて知ったかのように反応する。

 

「一緒にするな。拙者もお主もパブロフの伝だったな。」

 

「まぁ今となっては大元任様が一番だけどね。あの人はどうにも傲慢さが鼻についてね。」

 

「違いない。誘ったのは私だ!と言外に主張して身内に引き込もうとするのは辞めて欲しいものだな。」

 

話題は自分達を誘ったパブロフの愚痴へそして自分達が教団に参加した理由へと移っていった。

 

「私はまあ女性だけの国ってのに興味があったから誘いに乗ったんだよね。この団体作ったのは廻り者になる前のアタシだから大元任様踏み台にしようとしたんだよねー。まぁ今は全部彼の方に売り渡してるけど。」

 

メリクールはその前世故か元々女性だけの国というものに興味を持ち、パブロフの誘いに乗ったのは集められた少女達を取り込み最終的に大元任を打倒し女性だけの国を作ろうと考えていた。

だが今の彼女は自身が作った女性救済団体を使って教祖に女を貢ぐ存在へと堕落していた。

 

「見事な堕落振りだな。拙者は強き廻り者と戦うため目立つ必要がありパブロフから拙者の才能を評価されたのもありこれ幸いと参加した。みるからに邪悪な教団である以上、これを潰さんと強者が集まるに決まっておるからな。」

 

「いつ聞いても狂った志望動機だよねぇ。まぁ必要とされた才能ってのが武辺ではなく教祖の神格化のための魔法ってのは笑えるけど。」

 

「黙らぬか!」

 

高橋鑑房は武士として強者との死合を望みその近道が倒されるべき巨悪になる事という狂った考えの下参加した。

そんな彼女をメリクールは茶化すと彼女は怒声をあげた。

 

 

「そういえばパブロフは何やってるんだろうね?」

 

「知らぬ。大元任様も部屋に籠っておるしどうなる事やら。」

 

話が終わったところでメリクールはパブロフは何をしてるのだろうかと思い鑑房に尋ねるも彼女は知らなかった。

大元任こと全龍海も姿を見せてないようで教団には暗雲が立ち込めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人がパブロフについて噂して居る頃、当の彼女は社宅の一室にて誰かに連絡を入れていた。

その顔は酷く憔悴していた。

 

「早く早く早く早く早く」

 

ぶつぶつと呟く彼女の携帯から声がした。

 

「いやいやまさか貴方の方から連絡を入れてくるとはどういう風の吹き回しでしょうか?」

 

男の声だった。

 

「同士トルストイ!私を私を助けてください!もうこの組織は終わりです!船を!海の悪魔を今すぐよこしてください!」

 

「同士パブロフ。随分と情けないですね。教祖を担ぎ上げ都合の良い実験場を作れたとウキウキで報告してから5年も経ってないじゃないですか。」

 

棘のある言葉を気にせずパブロフは無様に命乞いした。

そこにはこの世界を玩具箱と評した廻り者の姿はどこにも無かった。

 

そんな彼女に対して声の男は呆れたようなものだった。

 

「全て全て全て!あの廻り者が私たちの邪魔をしなければ!こんな事にはならなかったのに!短期間で幹部は二人も討たれるわ、私の手駒も殺されるわでめちゃくちゃです!」

 

そんな彼の様子を無視してパブロフは取り乱しながら一人の廻り者への恨み言を吐き出す。

 

思えばヴラド3世がトーマス・ジャクソンを倒してから歯車は狂い出したと言っても過言ではない。

 

病院に仕向けた廻り者も殆ど倒され唯一生き残った白鳥由栄は彼女の支配から逃れ行方をくらませていた。

 

加えて黒鋭隊の討伐を受けて切るつもりが無かった切り札を切る羽目になり根を張っていた村を捨てることになってしまった。

 

こうなったのは全てアイツのせいだと怒り嘆く彼女は止まらなかった。

 

「はあ…。同士パブロフ、貴方は錯乱していて正常な判断が出来てませんね。自分が散らかしたオモチャは自分の手で片付けねばならないものですよ。」

 

そんな彼女を男は容赦なく突き放す。

そんな彼の冷たい声に彼女の血の気がサァーッと引いていく。

 

「お待ちください同士トルストイ!私だけでは無理です!せめてせめて援軍を援軍をください!」

 

「見苦しいですよ、同士パブロフ。私は私で忙しいですし他の皆さんもそれぞれ活動してますからね。無理は言うものではないですよ。」

 

「そこをなんとか!」

 

「何をしておる?」

 

それでも尚食い下がるパブロフを尚も引き離そうとする男。

 

別れたくないと足に縋りつく女のように泣き喚き懇願するパブロフの背後から声がした。

驚いたように振り向くとそこには全龍海が居た。

 

「なぜ⁉︎」

 

「信者の場所は我には筒抜けなどという事は貴様も分かっておるだろうに。」

 

「なっ…な。」

 

「無様よのぅ。さてこのあと催しを行うゆえ、先に部屋へ行っておれ。」

 

「……はい。」

 

驚くパブロフを見下しながら全龍海は命令を下す。

するとさっきまでうるさかったパブロフは短く返答すると部屋を出て行った。

 

「恐ろしいですね、その洗脳能力、才能行使『閉じた楽園』というものは。」

 

「そこまで筒抜けか恐ろしい奴よ。まあ良い、私の楽園を邪魔をしないならこちらも何もせん。そもそも男には効かぬしな。」

 

「邪魔するつもりなんてないですよ。我々もやる事があるので、では。」

 

素直に全龍海を褒める男に対し男に褒められても嬉しくないという態度をとる全龍海。

男は元々干渉する気は無かったので邪魔をしないと約束して電話を切った。

 

残ったのは歪な楽園を作り上げた全龍海だけでありその彼も部屋を出て行った事で部屋は無人となった。

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