許せなかった…ヴラド3世が罪人格だなんて…   作:ナマハゲィータ

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第86話:強欲の火消える

千佳は上半身が巨大な炎の手と化した田中愿蔵とヴラド3世の戦いを見ていることしかできなかった。

 

「無理…アタシはあんな風に向かっていくなんて…。」

 

ただこれに関しては燃え盛る炎に怯えず冷静に状況を確認し突撃するヴラド3世の方が異常とも言える。

いくら廻り者とはいえそこまで覚悟ガンギマリなのは彼がヴラド3世の廻り者だからなのかもしれないが。

 

「だって怖いじゃん…。無理だよ…。」

 

しかし彼女が怖気ずく裏で戦況はヴラド3世が押されていた。

 

巨大な上半身は串刺公は通じず実態ある下半身に攻撃をしようにも炎に阻まれる。

足元に転がし串刺という手もそもそも足元に転がせるくらいには近づかねばならずそんな接近は当然敵も許さない。

 

そしてオセオセムードの相手に悪魔公は当然通らない。

恐怖を増幅させる事は出来ても無から生み出せないからだ。

 

こうして打つ手無しでひたすら避けるしかなく、それも体力が尽きるまでというタイムリミットがある。

 

「ハァ…ハァ。千佳逃げるのだ!今ならまだ間に合う。」

 

ヴラド3世が息を切らせながらそう言ったとき彼女の中で何かかはじけた。

彼女は壁から飛び出していたのだ。

 

(何をやっているのか自分でも分からない。さっきまで怯えて震えて見てる事しか出来なかったのになんで今更動けたのかな?)

 

なぜ自分がこんな行動をしたのか自分でも分からないまま無我夢中で田中愿蔵の方に突っ込んでいく。

ヴラド3世が何か叫んでいるが彼女には聞こえてない。

 

(そうだ。アタシは失いたくないんだ。ママを失ったようにオッサンを失いたくないんだ。そして何よりも目の前のアイツを苦しめたい。余裕そうなその表情を破壊したい!出来るアタシなら出来る気がするから!)

 

何故突き動かされたのか彼女はその理由に気づいた。

 

一つはもう親しい人物を失いたくないから。

母親を失ったときの喪失と絶望を再び味わいたくないという強い感情が彼女を突き動かした。

 

もう一つは目の前の敵を破壊するためだ。

彼女は田中愿蔵のように他者を蹂躙しそれを見てバカ笑いするような外道が許せなかった。

そんな外道をぐちゃぐちゃに破壊したいという感情が爆発した。

 

 

そうして自身の身体能力をフルに活用し一気に近づいていた。

 

とはいえ炎の体に絶対の自信を持つ田中愿蔵は彼女に対しそこまで警戒してなかった。

下手に意識をあちらに向けた結果、ヴラド3世に決定的なチャンスを与えては意味が無いと考え最低限の警戒に留めていた。

 

故に彼は巨大な炎から枝分けするように炎の手を作り出し彼女に差し向けた。

向かってくる炎の手に対し彼女は手に持った斧を振るった。

 

それは意味が無い行動のように思えたが彼女には確信があった。

斧が炎の手を吹き飛ばし、田中愿蔵は悲鳴をあげた。

 

「ギャァァァァァァ!!なんだこの痛みは⁉︎お、俺の体は炎だ!物理なんて効かねえはずだ!」

 

「アタシの才能は人を殺せるほどの攻撃でも人を殺せない代わりにその分の衝撃や痛みを与える。本来なら死ぬ事で感じる事もない痛みを感じる羽目になるわけだけど、もしかしたらアンタみたいな相手にも痛みだけ与える事も出来るかも!って思ったんだ。」

 

「な、な、な、。」

 

彼女の才能行使『惨殺処刑』はどれだけ相手を殺せる一撃を放っても致命傷にはならない代わりにその分の衝撃と痛みを与える。

それは鉄杭を容易にひしゃげる程の威力なので痛みと衝撃は想像を絶する物なのは間違いない。

 

ここで彼女はもしかしたら実体のない相手にも通るかもしれないと思い行動に写した。

 

そしてそれが見事に当たり今田中愿蔵は未知の痛みに悶え苦しみ転がり回っていた。

纏った炎はすっかり消えていた。

 

そしてそんな隙を見逃すほどヴラド3世は甘い男ではなかった。

 

「終わりだ。」

 

彼は足を串刺公で貫き身動きが取れない状況にしてから悪魔公を行使した。

 

こうしてヴラド3世と千佳は勝利した。

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