許せなかった…ヴラド3世が罪人格だなんて… 作:ナマハゲィータ
水戸で始まった戦闘の内、二つが終わった。
最後の一つはどうなっているのか。
藤原道雅・宋江と対峙するのはキツネ色の羽織を纏い天狗のような赤い顔と長い鼻をした男。
「オラァ!『穢荒狗』」
「行けや下僕共!その高い鼻っ柱へし折れ!」
先に仕掛けたのは藤原道雅と宋江。
共に数で攻める才能であるためまさに数で押しつぶさんと敵に襲い掛かる。
それに対し相手は刀を構え抗戦する。
大声をあげ集団に突っ込むその姿は狂気的とも言えた。
それでも多勢に無勢、そのまま死ぬと思われた。
「報復だ!血の報復だ!『血塗れ天狗』!!」
男がそう叫ぶと人混みの中心から血のような液体が吹き上がり囲んでいた怪人らを吹き飛ばした。
そこに立っているのはまさしく血塗れ天狗と呼ぶに相応しい姿の男だった。
「おいおい無双ゲーみたいに吹き飛ばされたぞ?」
「これは明らかにマズいな。」
「ギャハハハ!これが俺の真の姿だ!今の俺は無敵だ!報復だ!報復だ!」
数で押し潰しきれないだけでなく数の利を吹き飛ばされ内心焦っているのを隠し軽口を叩く道雅と動揺を隠せない宋江。
そんな二人に対し絶好調な様子で高笑いする男。
「俺の才能は報復!受けた痛みを血で返す、俺が血塗れであればあるほどその威力は増していく!」
ご機嫌なのか男は勝手に自分の才能についてペラペラ喋っていく。
この男、武田金次郎の才能行使『血塗れ天狗』は血を操る能力なのだが、彼が受けたダメージが重ければ重いほどその効果は強力なものとなる。
そして今の彼は集団に斬られ、殴られ、押し潰されと相当なダメージを受けていた。
では今の彼の力はどれほどのものだろうか。
「さあ死ね!」
「っ⁉︎ヤベェ!」
「チッ!!」
彼が血が滴る片手を野球ボールを投げるように振る。
金次郎の行動に危険を感じた道雅と宋江は咄嗟に体を動かしかわすと道雅が居た足元が抉れていた。
「おいおい。ただ血塗れの腕を振って飛ばした血でこれかよ。」
「これが天狗の石礫だ!今の俺は誰も止められねえぞ!」
その威力に戦慄する道雅に対し勝ち誇る金次郎。
「これじゃあ壁にもならねえぞ。どうする打つ手はあるか?」
「あるにはあるがぶっつけ本番でまぁ賭けだ。」
遠距離から地面を抉るほどの一撃を放つ相手に肉盾は無意味。
そして最初に囲んでいた集団を吹き飛ばしたことから近接戦闘力もまた相当なものになっていると考えられた。
ここに居たのがヴラド3世ならば奇策の一つや二つは思いつきそうなものだが少なくとも道雅には現状を打破する方法がなかった。
故に半ば祈りも込めて宋江に打つ手があるか尋ねると彼はあると答えた。
ただそのやり方はぶっつけ本番であり上手く行くかは賭けだという。
「賭けでもなんでもいい!このままじゃあ蜂の巣だ!」
「ギャハハハ!蜂の巣がお望みか?ならあえて近づいて殺してやる!」
道雅は宋江が言う賭けに乗ろうとした。
しかし敵がそれを許すはずはなく一気に距離を詰めてきた。
手に持つ刀は血に塗れていたが逆に鋭さが増しているようにも見えた。
そんな一撃を食うわけにはいかないと二人は必死に回避する。
距離を取るために道雅は再び犬頭の怪人を複数体呼び出し、宋江も残っていた手駒を全て使い切った。
そして金次郎が彼らに拘束されている間に宋江は手を打つ。
彼は持っていた石版を道雅の背中に押し付けた。
「今までは無理矢理縛っていたがそれじゃあ英雄らしくねえって今更ながら気づいた。だから俺はこれで仲間に星を与える。そうすれば今までみたいな雑魚戦闘員にはならねえはずだ!」
「ダメだったら俺もあの紙切れみたいに吹き飛ばされた連中の仲間入りか。そうなったら恨むからな。」
その石版は『星受好漢』の発動に必要な物でありいつもは屈服させた奴らに使い雑魚戦闘員みたいな物を生み出していた。
ただヴラド3世に敗北した後、自身を見つめ直し才能のもう一つの効果に気づいた。
「『星受好漢』」
祈るように才能を行使すると道雅の背中に星の模様が刻まれた。
ただそれだけだったが道雅は自身の中に何かが流れ込んでくるのを感じた。
そのとき、金次郎は足止めを突破して二人に襲い掛かろうとしていた。
しかし道雅は武器を顕現させそれを防いだ。
「何っ⁉︎」
「ハハっ!なるほどこれは良い!力がみなぎってきやがる!」
本来藤原道雅にこんな戦闘力は無い。
だが宋江の『星受好漢』により今の彼はまるで物語に登場する英雄のように武器を振るい敵の攻撃を弾き返す。
これこそが『星受好漢』の真の効果。
星を授ける事でその人物の戦闘能力を底上げするのだ。
いちかばちかの賭けに勝利し状況は五分五分となった。