許せなかった…ヴラド3世が罪人格だなんて… 作:ナマハゲィータ
「見つけたぞ?罪人!貴様もまた私の裁きを受けるが良い!」
新たな廻り者のエントリーに俺は頭を抱えたくなる。
その顔はまさしく鷹であり毛は青く見たものを恐怖で縮こませるほど鋭い眼光を持っていた。
服装は中華ドラマでよく見るような漢服なのでこの廻り者は古代中華の偉人を前世とするのだろうが…いやちょっと分かんねえ。
「どうした声も出ないか?」
「いやすまない。ちょうど戦いが終わった後だったのでね。まさか知り合いだったりするかね?」
「何を言っている?貴様が殺したあの廻り者も咎人だ!奴は己の力に溺れ傍若無人に振る舞っていたのだからな。」
「これはご丁寧にありがとう。」
こちらが考え事をしていたらあちらがなんか言ってきた。
もしやさっき倒した芹沢の仲間かと思い聞いてみたがどうやら違かったようだ。
毛を逆立て目が吊り上がってるからかなりキレてる、マズいな逆鱗に触れてしまったようだ。
というか芹沢そんな悪い奴だったか…そういうの聞く余裕無かったからなあこっちには。
「さあ咎人よ。逃げる事は許されん。我が目を見よ。貴様の罪が今暴かれる。」
そうこうするうちに奴は鷹のように鋭い目をこちらに向け凝視し始めた。
…動けねえ、金縛りか?
「『蒼鷹の眼』貴様の罪を暴き貴様を裁く我が異能!私が睨むうちは貴様は身動き一つ取れず裁きの時を待つのみとなる。」
自信満々に能力を話す男…蒼鷹って事は酷吏の郅都か。
正しさが行きすぎた結果最終的に罪をでっち上げられ処刑された男であり中華じゃたまに居る酷吏の1人だ。
その裁きに情が無かった…それが再現されてるならちと厳しい。
いかにカスの悪人とはいえ法に則らず殺すのは許されないはずだ。
そうして黙ってみていると結果が出たらしい。
「ヴラド3世、貴様は確かに金を奪い人を殺した。だがそれ全て因果応報であり裁きの対象にならず。よって汝咎人にあらず。」
あっれ〜〜〜?
すっごい情状酌量されて無罪になっちまった。
「無罪か。てっきり複数の殺人を理由に極刑でも宣告されると思ったのだがね。」
「そもこの裁き自体私刑だ。私には本来裁く権限などない。故にダブスタなどと騒がれぬようその辺りは緩くしておる。そもそも貴様が殺した廻り者は本来なら私が裁くべき者達ばかりだ。強いて言えばあの火の廻り者を見逃した事を咎めるべきかもしれんが奴は既に心が折れておったからな。」
「随分と柔軟だな。」
思わず質問してしまったがそれに対する返答は中々柔軟なものだった。
正しさを振り翳すためにしっかり弱点を塞いでるというとなんとも狡猾に思える。
廻り者は日常から逸脱しているからこそこういう存在は必要なのかもしれない。
ただホッとしていると奴は一つこちらに尋ねてきた。
「…なぜ貴様は大罪人ジャック・ケッチを殺さん。」
この質問で空気が変わる。
「彼女は不完全な廻り者だ。まだ更生の余地はある。それに彼女は報いを受けている。これ以上私が手を出す必要はあるまい。」
「欺瞞だな!奴により地獄の苦しみを味わった者の前でもそう言えるか?」
「そもそも彼女も被害者達も白道教によって惑わされた者達だ。ならまず白道教を潰すのが先ではないか?」
「論点のすり替えだな。奴らが加害者なのは事実だがそれであの女が被害者になる事はない。」
「被害者であり加害者というのもあるものなんだがね。」
一つの質問から端を発し俺たちはしばらく平行線を辿る議論を続ける。
あっちの主張は正しいがだからといって変わろうとする彼女を見捨てられないから必死に弁護を重ねる。
お互い譲る事は無い。
「もう良い。私から聞くのはこれだけだ。ジャック・ケッチはどこだ?」
「知らんな。」
埒が開かないと考えた奴は俺にジャック・ケッチつまり千佳の居場所はどこだと聞いてきたため俺はしらばっくれた。
すると何かが右腕に刺さった。
痛みを堪えその場所を見ると拷問器具で構成された翼が俺の右腕を傷つけていた。
「これが我が『正義の翼』だ。真実を述べぬ者及び咎人はこの翼による責苦を受け続ける。さあもう一度聞こうジャック・ケッチはどこにいる?」
「ぐっ…知らんよ。」
「…いつまでもつかね?早めに吐いた方が楽だと思うが。」
「その程度の覚悟なら彼女を仲間に加えたりなどせん。私は守りたいモノのために戦うだけだ!」
どうやらあれがやつのもう一つの力らしい。
遠目で見れば鷹の鳥人だ。
あっちは早く吐けば楽になると宣うが仲間を捨てる真似などするつもりはない。
なぜならヴラド3世はこういう時に仲間を見捨てたりしないからだ。
どれだけ時間が経ったかわからない。
もしかしたらそう長い時間は経過してないのかもしれない。
痛みで朦朧として正直良く分からない。
「なぜ抵抗しない?我が『蒼鷹の眼』で動けぬ…などとは言うまい。」
「当然…動けるさ。被害にあった者たちを悼む気持ちはあるが、それでもあの娘を見捨てる事は出来ん。…だが貴様の主張も正しい。故に、私は抗いはしない。…どうか彼女を見逃してはくれまいか?」
「…見事というしかないな。だが私にも譲れないものはあるのだ。」
「それ以上リーダーを傷つけるのはやめな!」
抵抗出来るのにしない俺を見て問いをぶつける郅都。
俺はこの無抵抗こそが助命嘆願である、どうにか彼女を許して欲しいと傷だらけの体を揺らしながら懇願する。
郅都は俺を称賛しながらも自身の在り方を貫くために拷問を続けようとするとなんと千佳が廻り者になった状態で俺と郅都の間に降り立つ。
「な…なぜ。」
「そりゃあ中々帰ってこないからだよ。そしたらフーシェがつけた発信機がこの場所を示していたから急いで追ってきたんだ。」
「そ…そうか。」
「来たな咎人!今こそ罪を償う時だ!」
俺はなぜここにと聞いたらどうやらフーシェの奴がこっそり発信機をつけていたらしくその反応を追ってここまで来たらしい。
そんな彼女を見て郅都は戦意を昂らせる。
待ちに待った咎人を断罪する時が来たからだ。
処刑人と酷吏の戦いが始まろうとしている。