許せなかった…ヴラド3世が罪人格だなんて… 作:ナマハゲィータ
翌朝ホテルを出て次のホテルに向かうというところで問題が発生する
そう郅都を連れて行く事になったため一人増えてしまった事だ。
元々五人でチェックイン予定だったのが急遽六人に増えるというのはホテル側も困るしこっちとしても実は困る事があった。
「そろそろ旅費も尽きかけてるのにそこから一人分増やすのは流石に厳しいです。」
うちの金庫番であるフーシェからも泣きが入る。
帰るのにも金が必要な以上、あれこれ切り詰めて動かねばならない。
そんな状況での人員増加は良く無かったのだろう。
これに関してはこちらの考えが足りなかったと言えた。
「じ、じゃあ俺が離脱するわ。いや、筋肉痛がまだ取れなくて体のあちこちが痛いんだよ。このまま居ても足手纏いになるし、俺には帰る家があるからな。」
「そうか…ここから先は厳しい戦いとなるやもしれん。その考えは懸命だろう。」
「うわ、上から目線。まぁ良いか。とにかく俺はここまでだがお前らは頑張って目的を果たせよ!これで成果が無くて呑気に観光してました!とか抜かしたら痛い目見ると思えよ!」
どうするべき悩んでいると未だ筋肉痛が取れず今も宋江によって支えられている藤原道雅が離脱を申し出た。
この申し出はこちらとしても有り難かった。
ここからはより戦いが激しくなり下手したらホテルへの襲撃すら頭に入れないといけない状況で未だ復帰していない道雅を抱えていくのは…正直厳しいとしか言えない。
本当ならば引き留めた方が良いのだろうが俺は敢えてこの申し出を歓迎する。
その様子を見て呆れた顔をして頭道雅だったがすぐにいつもの調子で俺たちを激励する。
俺は道雅を駅まで送って行きそこで見送りを行った。
千佳はボロボロだしフーシェはアイツが離れた途端道雅の本当の姿が露わになった方が不味く他の二人は論外という事で俺が担当となった。
「え〜!千佳ちゃんが良かったなあ!」
「文句を言うな!先の戦いでの負傷で万全ではないのだ。そんな少女とコスプレ男が一緒に居るなど通報してくれと言ってるようなものだろうが。」
「はぁ〜。前の俺は何を望んで廻り者なんかになったのやら。」
「知るか。」
フーシェ無しの道雅はまあ目立ちに目立ったがそれでも気合いが入ったコスプレだなあと注目を浴びる程度で済んだ。
なおその間ずっと付き添いが俺である事に文句を垂れていた。
見た目からして不審者が痛みを理由に寄りかかるなんてすれば直ぐに警察が飛んでくるだろうに随分認識が甘い奴だ。ったく。
「誰一人欠けんじゃねえぞ?お前らと居るとこっちも気が楽だ。」
「そっちこそ俺たちが居ない間に羽目外したりすんなよ?帰って来たら死んでましたなんて事になっては悲しみより先に呆れが出てくる。」
「けっ。馬鹿にすんじゃねえよ。………まあ努力する。」
「おいなんだ今のは。いや本当にやめろ、これはフリじゃないからな!」
駅も近づきいよいよ別れの時。
死ぬなよと言われたのでそっちもなと返すとどこか自信無さげな返事が返ってくる。
いや本当にやめて欲しいと強く懇願し俺は彼を見送った。
……なんでこれから死地に赴く俺が戦線離脱するアイツの心配をせにゃならんのだろうな?
見送りも終わり皆と合流すると目的のホテルへ向かう。
朝に移動するつもりがすっかり昼になっちまった。
とはいえまだ人通りも多い中、襲撃などあるはずもなく無事チェックインを済ませる事が出来た。
「それで、あとどれくらいは保つ?」
「帰りも計算に入れますと…今日入れてあと四日ですかねぇ。」
「まだ敵の親玉の所在も分からんというのに…どうしたものか。」
「おそらく水戸城跡なんでしょうが…敵の数が分からない以上迂闊に突撃出来ません。」
「リーダー一人でパブロフのとこにカチコミが正しかったか?こりゃ」
「言い出したのは俺だが無茶だろうな。そこで一つ策を提案しよう。パブロフの居場所が分かったのだからこれを利用して自称チンギス・ハーン陣営とぶつけ消耗を狙いたい。」
「なら次はそのチンギス・ハーンの廻り者の仲間を探せば良いんだ!」
「で、こっちでぶちのめした後に敢えてパブロフらの居場所を教えて誘導する。そうして消耗したところをこちらで叩く。」
「結構良さそうな作戦では無いですか。」
「ならばそれを頭に入れて早速今日の夜から俺は外に出る。」
「待て。ならば私も同行する。ここで一つ働いておかねば面目も立たんのでな。」
「それは頼もしい。では皆あとは任せた。」
無事に部屋に辿り着き一息つく俺たちだったがフーシェが示すタイムリミットによってすぐ動かねばならなくなる。
ただパブロフはともかく自称チンギス・ハーン一味の居場所が検討も付かず頭を悩ませる俺たち。
正直水戸城跡が拠点なのだろうがそこに突撃を仕掛けるには敵の数が分からず不安しか残らない。
ならばまだ敵の数が分かるパブロフの拠点を俺が単騎突撃した方が良かったのでは?と宋江がボヤくが俺はそれを否定し一つ策を提案する。
それは自称チンギス・ハーン陣営にパブロフの居場所を流し共倒れを狙うというものだ。
まず自称チンギス・ハーンの手下に当たる廻り者を探し出しボコボコにしつつこちらはパブロフ陣営を装い奴の拠点の居場所をバラし生かして解放する。
これを何度か繰り返して奴らがパブロフの拠点に攻め込んだらその混乱に乗じて両勢力の壊滅を狙う。
これが一連の流れだ。
皆からの賛同を得た俺は早速今夜行動を開始する。
郅都が同行を申し出たため彼を連れ夜中ホテルを出る。
「あの場では言わなかったが私はあの策に反対だ。無辜の民に被害が出過ぎだ。彼らはパブロフの被害者でなんの咎は無いはずだ。」
「今更だな?」
「今更だとも。それで折れぬとわかっている。だからこそ問うておきたいのだ。」
「……タイムリミットも迫る中でこれが確実だ。パブロフも自称チンギス・ハーンもこれ以上生かしていればさらに被害を増やす。それに罪なき民の被害など以前のパブロフとの戦いで多く出ている。こちらが望まずとも彼方が好んで被害を出していくのだからもはや躊躇っている場合では無い。」
「それがお主の覚悟か。ならば私は目を瞑ろう。だが被害を許容するのは此度限りだ。」
「分かった。」
水戸城跡へ向かう最中、郅都から作戦に反対だと告げられた。
まぁ覆らないと分かって俺にそう告げるのはこちらの覚悟を測っているのだろう。
ならばそれに応えようと俺は覚悟を語る。
大のために小を捨てるというのは独裁者仕草が過ぎるがきっとヴラド3世ならば同じように言うはずだ。
悪魔と罵られようとも未来を歩むためにここで奴らを討つ。
赤の他人が介在する隙など無いのだ。
俺の覚悟を見た郅都は目を閉じ今回だけは黙認すると告げた。
俺は内心ホッとするとこの機を逃さぬよう歩を進める。
終局が近づきつつあった。