ウマ娘二次創作SS集<奈良ひさぎ版>   作:奈良ひさぎ

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ドリームジャーニーに誘われ、オルフェーヴルのもとに新たに着任したトレーナーを労うためのチョコを一緒に買いに行くことになったデュランダル。彼女の言葉の節々からは、いかに『家族』というものを重んじているかが垣間見える。


『家族』の絆の前には【ドリームジャーニー】

「デュランダルさん。折り入って、ご相談が。……少しの買い出しに、お付き合いいただきたく」

 

 ドリームジャーニーの珍しい誘い。たまたま自分のトレーナー、すなわち我が君に渡すチョコが完成したこともあり、デュランダルは快諾するつもりで振り向いた。

 

「チョコレート、ですか? しかし、ジャーニーさんはすでにトレーナーさんへのチョコレートは作られたはずでは?」

「ええ。ですから、別の方です。せっかくオルにもトレーナーさんがついたことですから、彼にも一つ、お贈りしておこうと思いまして」

「妹さんのトレーナーさんに……それは丁寧ですね」

「ええ。オルの付き人となればこれから先も苦労は絶えないでしょうし。それに、もはや彼は『家族』ですから」

「(妹のトレーナーさんが家族……?)」

「家族にあたっては平素の努力を丁重に労う。それが私の流儀ですので」

 

 家族という言葉に妙に重みを感じたが、それが付き添いを断る理由になるわけではない。二人街へ繰り出し、やってきたのは百貨店の地下、いわゆるデパ地下だった。

 

「ずいぶん慣れていらっしゃるのですね」

「ええ、まあ。ここには顔馴染みも多いので、ずいぶんと歩きやすいのですよ」

「(デパ地下に顔馴染み?)」

「それより、ご気分でも優れませんか? 先ほどから、私の半歩ほど後ろを歩かれているように思いますが」

「えっ! いえ、とんでもありません。ただ、……少し、ここでは浮くような格好で来てしまったかなと」

「そんなことはありませんよ。デュランダルさんの気品はよく伝わります。恥ずかしがることはありませんし、ここはそれほど格式を求められるような場でもありませんから」

「そ、そうかしら」

 

 ドリームジャーニーの足は真っすぐ、売り場の東端にある洋菓子屋へ向かった。お高いチョコレートといえば誰でもその名を思い浮かべるような、有名なブランドのお店だった。

 

「さて、あの方の好みは……」

「好みまで把握していらっしゃるのですか?」

「ええ。お酒の入ったもの、とりわけウイスキーがね。ただしレーズン入りはお嫌いのようですよ」

「いったいいつそんなことを? 確か、オルフェーヴルさんのトレーナーさんはまだ、着任されてから日が浅かったような」

「そろそろ三ヶ月になりましょうか。しかし、オルのトレーナーともなれば、担当につくだけでも相応の覚悟が必要ですから。あらかじめ目星をつけることは容易いものでしたよ。人ひとりの食事の好みを把握するなど、造作もない」

「(そこまで必要な情報かしら? けれど、我が君の好き嫌いは把握しておきたいし、あながち過剰でもないのかも?)」

「ああ、ちょうどよいものが。こちらをいただけますか?」

 

 ドリームジャーニーが購入を決めたのは、デュランダルであれば主君に渡すのに少し手が震えてしまうほどの品だった。店員さんがドリームジャーニーの顔を見て少し値下げしてくれたところをわざわざ断り、結局正規の値段で購入することになった。このデパ地下の人間とだいたい顔見知りというのは本当だったのだ。

 

「よかった。あの方にちょうどよいものが見つかりました」

「あの、……私、必要でしたでしょうか?」

「とんでもない。デュランダルさんのおかげで、オルへの手土産も見つけられましたから」

「……っ!」

 

 そう言ってドリームジャーニーが見せたのは、長崎の鯛茶漬けの素。デパ地下を練り歩いている途中、デュランダルがトイレで一時離脱していた間に購入したらしい。そういえばトイレの方角にお茶漬けなどご飯のお供を売るお店があったなとデュランダルは思い出した。

 

「あの売り場にはそれなりの頻度で通っていたつもりなのですが……僥倖、ですね」

「本当に、隙がないというか……隙を見せないというか」

「準備を入念にしておくに越したことはありませんから。まして新しい『家族』として迎える方ならばなおさら、ね。……そうだ。オルとは今晩にでもこのお茶漬けを楽しもうと思うのですが。デュランダルさんもいかがですか?」

「えっ、よいのですか」

「ええ、もちろん。オルの都合をまだ聞いていませんので、時間は未定ですが。その時になればお部屋までお迎えに上がりますね」

 

 家族とは、ドリームジャーニーが最も重んじるもの。時に親友の間柄でさえ、家族の絆の前には遠く及ばない。デュランダル自身もその『家族』のうちに入っており、ドリームジャーニーが熱心に目をかけてくれるようになったと気づいたのは、三人で食卓を囲んだその夜のことだった。

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