TS戦士見習い、女人禁制スパルタ学園の賞品になる   作:TEKKON

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第一話 戦士見習いは生まれ変わる

『にひゃく、ろくじゅうごおおおぉおぉお!!』

 

 ズドオォォーン!

 

『にひゃくぅ、ろくじゅうろくううううぅぅう!!』

 

 ドカアァァーン!

 

「どうしたー! そんな情けない一撃ではドラゴンのウロコ1枚すら剥がせんぞぉー!」

 

『はいっ!』

 

 

……離れた所から重打撃訓練の音がする。

 

 太刀、大斧を石柱に叩きつける振動がここまで響く。

 いかん。寝てしまって訓練に遅刻してしまった。

 

……と、いうかここは何処だ?

 

 俺の雑居部屋でなはい。窓もなく外界の情報が入ってこない。そもそも今何時だ?

 食堂で朝食を食べている途中、無性に眠くなって、それから……

 

 そう思いながら、起きようと身体を起こした時、最初の違和感に気づく。

 

……なんだ。この服は。 ……女物のドレス?

 

 いや、服だけではない。変だ。なんだこれ!?

 手、腕、視界に入ってくる情報が理解の範疇を超えている

 

……もしかして

 

 俺は、恐る恐る俺の胸に触れる。

 手の平に入りきれない柔らかく優しい膨らみと、今までに感じた事の無い感覚が身体の中で生まれる。

 

 まてまてまてまて!

 

 俺は辺りを見渡し、少し離れた所にあった鏡を見つけて一目散に近づく。

 そして、鏡に映るモノを確認すると、そこには見た事の無い、いや面影のある顔がそこにあった。

 

 

「はあぁあああぁああっ! なんだこれええええぇぇぇえ!」

 

 

 外の訓練に負けないくらい大きな、そして黄色い声が部屋の中に響き渡った。

 

 

【挿絵表示】

 

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TS戦士見習い、女人禁制スパルタ学園の賞品になる

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「な、なんだよこれは…… ありえねーだろ!」

 

 狼狽した俺は鏡を見ながら、顔や胸をペタペタと触りまくった。

 

「……あっ」

 

 一番大切な所を忘れてた。俺は躊躇しながらも思い切って初めて履いたふわふわのスカートをまくり、その中に手をゆっくりと潜り込ませる。そしてそのまま握ろうとするが、手ごたえは一切なかった。

 

「……ない。まったく、何も」

 

 まいった。とうとう回避不可能な現実を突きつけられた。俺は完全に女になっている。

 

「……」

 

 あるべきのモノを失った喪失感でもう何も考えられない。その時、後ろにあった扉が開き、そこから白衣の青年が入って来た。

 

「ようやく起きましたか、カイ・ラトル君。いや、私の最高傑作」

「あなたは、ベルガー回復士長!」

 

 怪我や負傷が当たり前のこの「レッドウォーリアー学園」で回復士は大事な存在だ。

 特に目の前にいるベルガー回復士長は魔法、手術技術、そして魔術と各方面の回復関係を網羅しているとんでもない人だ。

 このエデ国の財産と言っても過言ではないだろう。

 

「どうです。完璧な女性になった気分は。生まれ変わったみたいでしょう?」

「……!!」

 

 その一言で俺は我に返った。

 

「一体どういう事なんですか! 気が付けば知らない部屋にいて、俺の身体が訳わかんない事になっている。説明してくださいよ!」

「うん、そうですね。全て教えるからまずは落ち着きなさい」

 

「ふざけないでください! 落ち着いていられますかっ!」

「まったく。折角素敵な女性になったんだから、もっとお淑やかになるべきですよ?」

 

 そう言いながら、壁に貼られているチラシを指さす。

 

――究極大武會

 

 それは、この学園で最強の戦士を決める年に1回の大イベント。らしい。

 

 死傷者も当たり前に出る実戦形式で、よほどの猛者しか出場する事が出来ない。

 その分見返りも多く、優勝者には地位、名誉、名声とあらゆる褒美が手に入ると聞いた。

 

「これは知ってますね? で、ここから先は1回生のカイ君は知らないでしょうけど」

「……?」

「大武會の優勝者は特典として、女体化させた1回生を側女としてつける事が出来るんです」

 

……ま、まさか!

 

「おめでとうカイ君! 君はその名誉ある”賞品”に選ばれたんですよ!」

 

「……はっあああああぁぁぁあ!!??」

 

 このレッドウォーリアー学園が狂ってるのは入ってすぐにわかった。

 学園長の力により、この学園は国の全面協力で作られ、治外法権とも言える権力もある異常な学園となっていたのだ。

 

 そして、その権限により優秀な卒業生に与えられる超エリート戦士としての証、 「右肩に彫られる赤い勲章」 を求めて、エデ国中から腕に覚えのある若い男達がこの学園に集まってくる。

 

 しかし、ここはスパルタという言葉では収まらない、どこかの収容所かと思えるくらい非常に過酷な所だった。

 命の保証は一切なく、負傷や死亡によりリタイアする者も多い。

 

 ここにいるのは血と力と欲に溺れてる野郎だらけで、当然女っ気はゼロ。

 まさに、ここはこの世の地獄だった。

 

「そんな無茶苦茶な話がありますか! いくらなんでも横暴だ! 最悪すぎる!」

 

 いきなり突き付けられた非情な現実を前に、俺は怒鳴る事しか出来ない。

 

「話を聞きなさいカイ君。大武會の優勝者はエリートの中のエリート戦士として、エデ国戦士団の上層部に組み込まれるのは確実なんです」

 

「……それで?」

 

「そして、その側女として迎え入れられるという事は、同じく国の上流階級に入れるんですよ!」

 

「……なるほど。そして、その優勝者とずっと寄り添っていく事になる訳ですね?」

 

 歪んている。歪み切っている。女人禁制の学園という制度が生んだ最悪の形だ。

 

「……ふざけるなっ!」

「なにっ?」

 

 ベルガーの顔から楽しそうな表情が消えた。

 そして、俺は国の財産とも言えるこの人が憎くて憎くて仕方ない。

 

「……まぁ、いいでしょう。この大秘術を使えるのは一人一回限りで、一回性転換をしたら私にも戻すことは出来ない。そして、この運命から逃れる術はもう無い」

 

「……マジかよ」

 

「大武會は明後日。それまでに女性らしさを身に着ける事ですね」

 

 そう言いながら、ベルガーは俺の身体を舐めるように見て、その視線は言いようもない不快感と恐怖を植え付けてくる。

 

「それにしても、カイ君は本当に素敵です。今まで幾人もの1回生を女体化させたけどカイ君は別格。男の時点で女と間違われるくらいの逸品です」

 

 思い起こせば、このクソッたれな学園に入った直後から周りの空気はおかしかった。

 一人前の戦士を目指す連中は皆大柄で、それに引きかえ身長が160cmもない俺は子供のように扱われていたし、一部の上級生からのあやしい視線も常に感じていた。

 

「入学してきた頃から、カイ君が賞品に選ばれるのは確実だった。その為に入学が許されたという噂も真実だと思えた」

「……最悪だな」

 

「カイ君。私はこの日をずっと待っていたんですよ」

 

 ベルガーはそう昂ぶりながら、ゆっくり俺の元に近づいてくる。その欲望を秘めたゲスい顔はとても直視出来るモノではない。

 

「大事な賞品だから汚すな、と学園長から言われていますが、検査といえば多少の事は許されるでしょう」

 

「……」

 

「それに、その態度はいけません。自分が”か弱い女”になってしまったという事を、実感してもらわないといけませんからね」

 

「……」

 

「ここは一部の人しか知らない特別な地下儀式場。二人でゆっくり楽しみましょう?」

「そうか…… それを聞いて安心した」

「ようやく納得してくれましたか。物分かりの良い子は大好きです」

 

 ベルガーはもはや性欲を隠す事も無く、ゆっくりこちらへ歩いてくる。

 

 そして、もう少しで飛び掛かれるくらいの距離に近づいた時を見計らって、俺は一気にベルガーの懐に飛び込んだ。

 

「!?」

「ふんっ!!」

 

 俺はそのまま力任せに、右膝をベルガーの股間に叩きつける。

 

「ン”ググア”ア゛ァアァア”ァ!!!!」

 

 断末魔のような絶叫を響かせながら、ベルガーは床にぶっ倒れる。

 

「……何がか弱い女だ一般人。俺はこんな身体になっても戦士だぞ? 見た目で騙されたか? お前はバカなのか?」

「キ、貴様、私にこんな事をして……」

 

 ベルガーは息も絶え絶えになりながら俺の顔を睨みつける。

 

「言っておくが、俺は地位や名声が欲しくてここに来たんじゃないぞ」

「な、なら何故……!」

 

「そんな事はどうでもいい。お前も俺と同じ身体になれよ!」

 

 俺は更にベルガーの股間に一撃を与えると、口から泡を吹きながら失神してしまった。

 そのまま身動きできないよう縛り上げながら、一人呟く。色んな思いを込めながら。

 

「俺はな、あいつに釣り合う強い戦士になる為に、この学園に来たんだよ……」

 

……

………

 

 俺はこの狂った学園から脱走する事を決めた。こんな地獄にいるのはもううんざりだ。

 

 本当は部屋に戻って俺の武器が欲しい所だが、そうもいかない。他の連中に気付かれる前に、ここから脱出しなければいけない。

 

「やっぱりここには無いか……」

 

 一通り部屋を調べたが、武器や防具の類いは見つからない。なら、もうこんな所に長居は無用だ。

 扉に向かうその時、近くにあった鏡に映った俺を改めてじっくり見る。そこには白と青のロリータ服が似合う女性が立っていて、見れば見る程にとある事を認識させられる。

 

「これは、やばいな……」

 

 そう。これは自惚れではない揺るがない事実。そして、これが喜ばしい事なのか、それとも逆に怖い事なのかはわからない。

 

 

――まいったな。俺があまりにも可愛すぎる

 

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