ファウンデーションの女帝アウラは贅を尽くした自室でコンピューターを起動。
モニターにはオルフェがオーブの首長カガリ・ユラ・アスハと握手したりキラ・ヤマトとコンパスの広報活動をしている映像が表示される。
しばらく無言で眺めていたアウラだったが、やがて俯くとぷるぷる震え始め、
「おのれ! ヒビキのガキども!」
小さな子供の手でデスクを叩くと、置かれていた扇子の両端を握り締めて勢い任せにへし折る。
デスティニープランで選ばれた職人に作らせた最高級品だったが、今週になって既に三つが犠牲になっていた。
「妾の可愛いオルフェを誑かしおって!」
彼女の中ではキラとカガリがオルフェをファウンデーションから連れ出したという事になっていた。
オルフェが自分の意思で出ていったという発想はないし、イングリットには言及しないのがアウラの毒親たるゆえんである。
真ん中から折れて骨がバラバラになった扇子を放り捨て、アウラは改めてモニターを見る。
何も知らない世間の連中が三人を指して新たな時代の希望だのなんだのと持て囃すのが腹立たしい。
オルフェの才覚がヒビキのクソガキどもに利用されているかと思うと血管がはち切れそうになる。
その上、krorやorkrで検索すると多数ヒットするおぞましいイラストやテキストの数々が脳を蝕む。
ふと、彼女の脳内に本物より数段チャラい見た目のキラが現れ、耽美な雰囲気のオルフェの肩を抱く。
『ウェーイ! アウラ陛下見てる~? これから君の大好きなオルフェ君のグルヴェイグにハイマットフルバーストしちゃいま~す!』
「のじゃー!?」
頭をかきむしりながら絶叫。落ち着きのない五十代である。
「これも全部ヒビキのせいじゃ!」
メンデルが襲撃されたのも自分がこんな体になったのもヒビキが原因であるし、ラウ・ル・クルーゼの悪行も半分くらいはあいつの責任だ。
──なんという巨悪……死んで当然の奴じゃったな。
メンデル時代のアウラとユーレン・ヒビキは犬猿の仲だった。
元から相容れない両者だったが、ギルバート・デュランダルが来てからは更に意見や思想の対立が目立つようになる。
ある時、デュランダルの遺伝子を研究していたアウラの元にふらりとやってきたヒビキは、
──アラサーの同僚がプラントですら成人していない少年に入れ込んでいるのを見るのはきついね。
そう言って鼻で笑った。文章なら末尾に(笑)が付きそうな嘲笑だった。
「妾とデュランダルの関係はそんな低俗なものではないわ!」
思い出したら更にイライラしてきた。
「ふーっふーっ」と荒い呼吸を吐き出しながらアウラはコンピューターを操作。
それなりに名の知れた研究者であったヒビキの画像はネットに幾らでも転がっている。
編集ソフトで髪の毛を消して代わりに口まで伸びる鼻毛を描き加える。
「はーはっはっはっはっ!」
ひとしきり笑った後はネットに画像を放流。
以前より感情の抑制が効かなくなっているアウラの激情は仇敵を愚弄しても沈静化する事はなく、その矛先は再度子供達に向かう。
ナチュラルの娘の方はまだいい。
配下の統制が取れず自国を戦火に晒す醜態には溜飲が下がる。
気に食わないのはコーディネイターである息子の方だ。
ヒビキの私情で優れた能力を与えられながら必要に迫られなければ役目を果たそうとしない出来損ない。自らの意志で*1世界の為に行動する我が子達とは大違いである。
あんな失敗作に計画が阻まれるなどあってはならない。
オルフェとラクス。最高傑作と自負するアコードの番が両者ともに奪われた事実も彼女の自尊心を著しく傷付ける。
そもそも同志であるギルバート・デュランダルとの二十年越しの理想を打ち砕いたのもあいつだ。到底許せるものではない。
ジャガンナートが辞職した事で頼みの綱であったレクイエムの修復は頓挫した。
我が子達が戦って負けるとは微塵も疑っていないがアコードも連戦すれば消耗する。彼らをフォローするべくロゴス壊滅の混乱で裏に流れた兵器群を少しずつ集めているが、それも心許ない。今は雌伏の時だ。
しかし準備が整ったその暁には──
「殺してやる……! 殺してやるのじゃキラ・ヒビキ!」
親の因果が子に報い。
ある意味C.E.を象徴するような言葉がキラにも牙を剥く。彼の運命や如何に──
小説の下巻を読んだ後だとオルフェがオーブに亡命してコンパス入りって相当アウラの地雷踏んでるなって。
最後の台詞は投稿直前まで「殺してやるのじゃアスラン・ザラ!」や「シン・アスカ!」にしようか迷った。ネタ抜きで考えても、デュランダル議長からFAITHに任命されたのに今はキラと仲良しこよしな二人に対しては良い感情はなさそう。