本当は呪術廻戦が終わった週に投稿したかった。
そろそろかぐや様をメインに出さないと•••
京都。
既に日は暮れ、夜の帳が下りる時間帯。山奥のダムのそばに建てられた研究所、『呪術高専所属九十九研究所』だ。
人間の呪術からの脱却を目指し、日々研究を続けている•••とはいえ所長である九十九由紀は海外をプラプラ、副所長の輝紗羅は駆け落ち、残った職員は1人だけだ。この研究所も大層な目標を掲げているが、実際のところ特殊な呪具や呪物の複製・製造を行っている。
その残った職員•••もとい
「おい、キーボードの上で飯を食うな。壊れたら弁償させるぞ」
与幸吉、京都校3年の傀儡操術の使い手。去年内通者として暗躍し、真人によって殺されかけていたが、黎人の同級生である柏山零と照屋輝紗羅に助けられた。以降、黎人による監察処分として死刑を免れた。ここの職員として働いているが、1週間に一度だけしか来ていない。他の曜日は傀儡のメカ丸1号から6号にこなさせている。
移動式の椅子をインスタントスープを啜っていた黎人のそばに寄せ、パソコンのキーボードの心配をする。どうやら壊れていなかったようで、ホッと安堵する。
「先輩さ、俺が
「•••誰に?」
「なので協力してくれません?」
□□
黎人が与の元を訪れた前日。
東京、港区の泉岳寺、四宮邸。
四宮かぐやの叫びが響いていた。
「早坂〜!!急いで来て!!!は〜や〜さ〜〜か〜〜〜!!!」
「はいはい。何でしょう、かぐや様」
早坂愛は、かぐやと同じ秀知院学園に通っているギャルーーーは表の顔。
裏の顔は四宮家に使えるメイド兼従者である。
「何でしょう、じゃないわ!今回の定期考査の結果見たでしょ!!?」
「あー、あの厨二病くんが一位とったやつですか」
確かに四宮御付きの早坂もあの結果には驚かされた。
成績一位を取ったのは白銀御行以外にもう1人、まさかの厨二病との噂の転校生だった。秀知院に衝撃が走るのもわけないことだ。さらにかぐやにとっては転校生に上を取られたのだ。しかもその転校生は転校してきて2ヶ月で白銀と石上の親友になっている。これを見過ごせるほどの懐の深い心を彼女は持っていない。
「私と会長が一位二位を争う場に颯爽と現れ一位の座を手に入れるなんて!!って、これじゃ私が会長に一位を取って欲しかったみたいじゃない!!」
「あれ、会長は一位ではなかったのですか?」
「家入くんは凡ミスのせいで一点下がったのよ。つまり実質的には彼が一位!!なんなの彼は!!?取り敢えず、調べて頂戴!!!」
「はぁ、かしこまりました」
こうして、彼女は家入黎人の調査をすることになったのだ。
■▲
調査1日目、図書室や資料室で学園の記録を読んでいた。
「これか?2001年に教員が外部から美術品を購入・・・美術室にて飾り・・・2005年に在校生が破損。いや、アレは破壊不可能だからこれじゃないな」
(何かを探してる?アレって?)
「あれ?黎人くん何やってるの?」
(あれは、3年の子安つばめ?)
「•••大したものじゃねぇよ」
「ぶ〜教えてよ?私牛になるよ?」
も〜と言いながら両手を頭に当てて角を作る。
「なんで?」
(人間関係は•••よく分からない)
監視2日目、石上会計と一緒に風紀委員から逃走。
片手で石上会計を軽々と抱えながら、校舎の窓枠を足場に屋上まで駆け上った。
「あばよ風紀委員!!次追いかけるなら50m3秒で走れるよう鍛えてきな〜」
「むきぃぃぃぃ!!!」
「ミコちゃんあの人おかしいよ!?片手で人抱えて壁をスイスイ登るなんて人間にできることじゃないよ!?」
「黎人、たまにお前が人間じゃないように思う」
「誰がプレデターまたはエイリアンだ。それに俺よりすごいやつは結構いるぞ」
その様子を石上にこっそりつけた小型マイクで聴いていた早坂。
(いやいやいや!?あの人本当に人なの!?)
監視3日目、家族と買い物。
ショッピングモールにて。
「母さんその手に持っているのは?」
「高級日本酒『白磁美人』♡」
「元あった場所に戻してこい。妊婦なのに酒を買うな!!あとコッソリ入れた鮭とばと裂けるチーズはこの間買っただろ!!」
「む〜昔は可愛かったのに•••」
「•••本当に丸くなったな。てかお菓子は1人1個までだぞ美夜と明星!!」
「「ちっ」」
スターバックスの商品名が長い飲み物を飲みながら、早坂は仲睦まじい家族の姿を見ていた。
(あれが彼の母親?いや、義母?あのお腹•••父親は?)
監視4日目、今日は彼の自宅近くのアパートの屋上から双眼鏡で監視する。
「黎人さん•••これ」
「連立不等式の問題か•••ここは右辺の式を左辺にーー」
セーラー服を着た黒髪の少女が黎人に話しかける。
(託児所?けど中学生くらいの子もいる•••親戚の子?)
「な〜黎人!!一緒にスマブラしよ〜ぜ!!!」
赤髪の少年がゲーム機片手に黎人の服を引っ張り、それを見た少女がムッとして黎人にしがみつく。
「•••だめ、今は、私の課題!!」
「さっきも課題教えてたじゃんか!!?」
「分かった分かった。ここまで教えたら相手するから」
「ほんとか!!今日こそ俺のリトルマックでボコしてやる!!」
「はは、舐めるなよ」
(人間関係は不明•••この間は風紀委員から不良認定されてたり、学校でも変人扱いされてるけど•••思ったよりまともな人?)
「兄さん!!少しは手加減して!!」
鳥打ち帽を被った少年ーー彼の弟が黎人に手加減するよう進言するも、黎人は止まるところを知らない。むしろキャラ操作が速くなっていく。
「バカかお前。本気を出さないと失礼だろ」
「うおおおお負けるか!!!」
結果、黎人の勝利。
「くっ•••コハク、あとは頼んだ•••」
「まかせろ、今日こそ泣かす!!」
オレンジ色の目をぎらつかせ、フードを被った少年がコントローラーを握る。
好戦的な笑みを浮かべた両者がコントローラーを握る。
「きやがれリンク!!」
「かかってこいよ、ピチュウ!!」
「••••バカしかいねぇ」
とりあえず分かったことは、彼のスマブラの持ちキャラはトゥーンリンクとのこと。
監視5日目、フランス校との交流会。
(かぐや様は生徒会の方々と一緒に•••あれ、彼は?)
早坂は、黎人の姿が会場に無いことに気づいた。そういえば今日の彼の様子はどこか変だった。スマホを開いて、『ゲッ•••』と顔を顰めたり、やたらと時間を確認したりしていた。一体何処に?疑問に思った彼女は会場から去り、黎人を探すことにした。
そして数分後。
とある部屋の前に早坂はいた。
いや、聞き耳を立てていた。
部屋の中には黎人とフランス人の男性がいた。男性は緊張しているように見え、震えた声で話していた。フランス語だったのに対し、黎人も流暢なフランス語で返事をする。だがその内容は異質だった。
『ですから、ジュジュツシを何名かーーいや、1人でもいい。ジュジュツシの脳を解析できれば、世界中の利益にーー』
『
(誰?今、ジュジュツシって•••まさか家入黎人は呪術師?)
『ですが•••しかし!!』
ドンっ!!!
男の首の真横に槍が突きつけられた。
「気をつけろよ。お前らそっち側の人間は、こっち側の世界じゃネズミも同然だ。棲み分けは大事なんだよ・・・アンタらだって虎や龍とシェアハウスはしたくねぇだろ?分かったらとっととお引き取りを•••花の都を海の底に沈めたくなかったらな?」
フランス人が慌てて反対側の扉から出る。
一方、早坂は息を殺して壁の向こう側の音を聞いていた。
「ーーーーっ」
ーーー怖い、と心の底から感じた。
確信した。
家入黎人は呪術師。
そして•••
家入黎人は、人を殺すことができる。
■■◀︎
交流会後
日はすでに落ち、校舎が暗闇に包まれていた。
灯から数メートル離れた校舎裏のポーチ下で、早坂愛と四宮かぐやはいた。
「家入黎人に関する調査結果ですが•••とんでもないことが発覚しました。彼は•••呪術高専の呪術師です」
「っ!?高専の•••まさか本家との繋がりは?」
かぐやは呪術の存在を知っている。
御三家という名門と本家は深い関係を持っていた。その御三家は去年三つとも壊滅したと聞いていたが、家入黎人が本家と繋がりが無いと判断するには不十分だった。最悪の事態•••本家、かぐやの兄弟たちが刺客として呪術師を送ったのでは無いかとかぐやは警戒した。
「いいえ。本家との繋がりは確認できませんでした」
「•••本当ね?」
「本家との繋がりがあるのなら、もっと早い段階で接触があってもおかしくありません。それに、かぐや様の身辺調査をしている様子はありませんでした」
「そう•••それで、彼の目的は?」
「はい。とりあえずこの五日間の行動を調査しました。おそらく"何か"を探しているのではないかと考えーー「いや、"おそらく"じゃない。四宮副会長と四宮家側仕えの早坂愛?」ーーっ!?」
視線の先に、秀知院の上着を脱いでシャツ一枚になった黎人がいた。
動揺を見せないかぐやの前に早坂が立つ。
「・・・いつからそこに?家入特級術師」
「知り合いに
「「っ!?」」
振り向くと、秀知院の制服に身を包んだ少年ーー背後にはクラゲの式神がいた。狙撃手は見当たらなかったが、視界の端にある時計台の文字盤の前にも黒い人影がいる。
「そうだ、いいカフェ知ってるんだよ。明日そこで話しましょうか?」
オリキャラ解説
姫川愛佳
中学2年生の女子。幼い頃、両親が目の前で心中した影響で呪霊が見えるように。その後は呪術高専OBだった母方の祖母に引き取られ、5歳から人里から離れて呪術に関する訓練を開始したため世間ごとに疎い。また現在離れ離れになっている兄とは定期的に会っている。
最近の悩みは初恋の人の好みが『1〜2歳年上の人』だということ。
有馬龍牙
中学1年生の男子。出来のいい双子の姉と比較してくる両親に嫌気がさして小学生の頃に家出。その後は祖父母に育てられるが中学に上がる前に2人とも他界。ある日、不良に喧嘩を売られ脳天を鉄パイプで貫かれ緊急入院し、呪霊が見えるように。
最近嬉しかったことは漢字検定2級に合格したこと。
星野コハク
小学6年生の男子。明星の親友、九十九特級術師の秘蔵っ子、東堂葵の弟分、鹿紫雲一の愛弟子。アイドルをしていた母をストーカーに刺し殺され、自分も右目を刺され失明。その後術式と呪力を知覚しストーカーを半殺しに。とはいえ多忙な母との思い出はなかったに等しかったため母の映像を見ても何も感じない。現在は鹿紫雲の指導を受けながら準一級昇格を目指す。
最近暇だったのでのど自慢コンテストに出場したところ優勝した。
彼らが活躍する『愛と呪いは小説より奇なり』もできればご拝読ください。