2007年、当時17歳だった四宮家の長女『四宮要』が妊娠。
相手は誰なのか問いだたされるも口を割らず、そのまま出産。
長女は出産で体力を使い切り、永眠。
生まれた子供は親戚筋にあたる神父の養子となる。
「要姉さんは私をとても可愛がってくれました。彼女の死に目にも現れなかった不届きものが誰なのか、私は知りたいんです」
黎人は腕を組んで目を細め、順平は恐る恐るかぐやに質問する。
「あの•••復讐とか、考えてます?」
「いいえ?要姉さんなら『そんなことしても利益はない!!』って怒られると思いますので」
二人は安堵した。
もしもかぐやが復讐などを画策していたら、問答無用で介入しなければならなかった。今年の一月より、呪術規定の改訂によって様々な規定が変更された。
そのうちの一つ、『第9条・非術師から攻撃された場合、自衛のために呪術の行使を認可、または鎮圧を認可する』
この規定が作られたのには、死滅回游によって死亡した覚醒型の呪術師の親族や殺された非術師の親族が生き残った回游者や呪術師を襲う事件が多発したことが背景にある。
「•••にしてもまず顔を見ないと、最近の写真とかないの?」
「えぇ。ありますよ」
用意がいいなと思いながら、黎人はかぐやのガラケーを覗き込む。
「最近、彼に会いに行ったんですよ。目元は要姉さんに似てるんですけど•••」
ガラケーを覗き込んだ黎人と順平は固まった。
「・・・まじ?」
「や、やばいねコレ・・・」
そこには濡羽色の髪を後頭部で三つ編みにしたオールバックの、一昨年百鬼夜行を起こして去年死体をブレインジャックされた塩顔イケメン坊主によく似た少年がいた。
一方その頃•••
「•••この映画、泣けないな。なんでこんなの作ったんだろ?」
特級呪術師五条悟
天上天下唯我独尊、自他ともに認める最強。
後進育成のために教師というポストについていたが、今年度から東京都立呪術高等専門学校の学長に就任した。今日は祝日、珍しく任務もないため自宅でのんびりしながらテレビの前でダラけていた。
ピンポ〜ン。ピンポ〜ン。
「ん?なんか注文してたっけ」
ドアを開けると、そこにはセーラー服を着た少女とパーカーを被った少年がいた。
「君らだーー「はじめまして、
そう言った少女の、悟に似た顔立ちの顔はまるで苦虫を噛み潰したような表情になっており、その長い白髪を風にたなびかせていた。
なーんか嫌な予感・・・と思って一度ドアを閉めようとしーー
バンッ!!!
少女がドアを蹴り破り、サングラスを外した。
「逃げんな」
透き通った紫色の、宝石のような眼で五条を見つめた。
五条の驚いた顔が眼に映っているように見えた。
「『
「やばーーー」
次の瞬間、五条悟は石になったように固まった。
「ふぅ・・・汀?今のうちに入っちゃお」
「・・・うん」
時を同じく、カフェにいる黎人は•••
プルルルルル•••
「先生?」
プルルルルル•••
「五条先生?」
プルルルルルルル•••
「おい、悟兄さん?・・・ダメだ電話に出ねぇ。アイツ今日休暇だよな?」
「寝てるのかな•••七海さんと日下部先生に連絡したから大丈夫だと思うけど・・・」
「あの、ひょっとして心当たりがあるんですか?」
「「大アリですよ!!」だわ!!」
▽▽▲
カフェから少し離れたところの、電話ボックスにて。
「もう調べ上げたんですか?
『あぁ、スマホに送ったよ』
記録 2019年6月7日
東京都、
旧五輪会場
任務概要、
会場内および周辺の怪奇現象
その原因と思われる呪霊の祓除
担当者(高専4年 秤金次)
派遣されたものの、呪霊の姿がなく、既に何者かに祓除された残穢が残されていた。残穢を詳しく解析したところ、呪霊操術の残穢であることが発覚。
『これが例の少年に関する記録だ。夏油くんとの関係については不明だが、腹違いの兄弟または•••』
「息子、だな」
『あはは!!いやぁ〜若いねぇ〜?』
「•••笑い事じゃないだろ」
呪霊操術、降伏した呪霊や怨霊を手のひらサイズの玉にして、体内に取り込んで自在に操る術式。異形の軍隊を作れるため、呪術上層部は呪霊操術者を特級指定している。2017年に殺された夏油傑も同じ術式を持ち、翌年の2018年、乙骨憂太、釘崎野薔薇、家入黎人に殺された羂索は夏油傑の死体を乗っ取って1000万を超える呪霊を放ち、東京の渋谷区、新宿区、千代田区、豊島区などが人外魔境と化し、10月16日には天元護衛についていた彼女、脹相含む一級術師4人を倒し天元を掌握。
もし本当なら、早めに保護または確保しないといけない。
「とりあえず、どうします?五条先生には七海さんたちが伝えに行ってるんですけど•••俺も参加するべきですか?」
『この件は私と五条くんでどうにかするよ。というか、あの娘に集中した方がいいんじゃない?』
「あの娘?」
『特級過呪怨霊に憑かれてる子安つばめちゃん』
「•••忘れてました。今度の祝日に会う約束を取り付けーー『本当に?•••さては思い迷ってたね?』
「••••何のことかね」
『青いねぇ•••気持ちはわかるけど、呪いを巣食わせたままでいい理由にはならないよ。彼女のためになる事をやってから、深く考えな』
一方その頃•••
日下部は言った。
「腐ってんな」
七海は言った。
「腐ってますね」
2人の視線は顔面だけ石化を解除された五条悟と、ソファに座った少女と少年に向いていた。少女の名は
「ハァァァァァァァ・・・幻滅だぜ」
「以前から尊敬に値しない人だとは思っていましたが・・・まさか学生時代に女性を孕ませて、しかもほったらかしにできる人だとは思いませんでした」
「ちょいちょいちょい!!?いや、ないから。子供なんてないから!?絶対間違いはしない男だから!?だって保健体育の成績は傑と一緒でオール5だったもん!!」
「保健体育は実技にあんまり関係ねぇだろ!!つーか、このサラッサラの白髪、綺麗すぎる顔立ち、高身長、目はお前と違うが、明らかにお前の血だろ!!」
「そうですね。この流れだと夏油さんも隠し子か落とし胤がいそうですね」
事実、そうである。
「誰が高身長白髪の伝承者だ!!」
「お前だろ」「貴方でしょう」
とりあえず五条の石化を解き、彼の両脇を七海と日下部が固めて反対側のソファに二人は座る。
「では改めまして、巳乃斗と申します。5月7日生まれの13歳です。こっちは私の腹違いの弟の汀です。10月4日生まれの•••何歳?」
「•••多分9歳」
「失礼ですが、貴女の母親は?」
「母ーーーあの女は学生時代に私を妊娠して、家を追い出されてそのまま風俗嬢に。その後ヤクやらドラックやらにはまって、私も同じ道たどるの嫌だったから2年前に家出して、そんで去年の初めにこの子と出会ったのよ。この子は父に似てたから母親に襲われかけてた所を助け•••ようとしたらボコボコにしてて、家にいれなくなったし一緒に父親の旅に出たの」
「お〜すげぇ行動力あるな」
「どこかのバカ目隠しにも見習わせたいですね。あと、黎人くんと吉野くんが貴方に用があるそうですよ」
「えぇ•••?」
五条悟は内心焦っていた。
獄門彊に封印された時も達観していたし、宿儺に胴を斬られた時も余裕を保っていた現代最強の術師が、何故こんなにも焦っているのか。
それは•••
(せっかく歌姫との関係がマシになったのに、何でこのタイミングなの!!?)
庵歌姫との関係に直結しているからだ!!
庵歌姫
京都校の担任であり、東西の生徒教師からの人望も厚く、生徒らによる『1番家族になったら嬉しい人ランキング』で首位にランクイン。
だが、五条は歌姫にすっっっっごく嫌われていた。
『げ、五条•••』
廊下ですれ違っただけで舌打ちをされ•••
『何でテメェがいんだよ!!?』
呼ばれてもない飲み会に飛び入り参加しただけでキレられ•••
『死ねぇ!!クズがぁぁ!!!』
風邪で寝込んだ歌姫の布団の中に入ったらキレられた*1。
そんな小学生レベルの関係だったのだが、去年のいざこざを経てやっと中学生レベルの関係になったのだ。もし、自分に隠し子がいることがバレたら•••
『うわっ最低、もう話しかけないで』
(ゴミを見るような目)
(ダメだぁぁぁぁぁぁ!!絶対言われる!!!この子らは、絶対に歌姫にバレないようにしないと!!)
取り敢えず2人には帰ってもらい、考えがまとまってからどうするか決めよう。何なら養育費を払って終わりでもいいかもしれない。
「と、取り敢えず今日はーー」
「あ、今日泊まるとこないんで何処かに泊めてください。廊下でもトイレでも寝れますんで。夕飯は一昨日手に入れたパンの耳があるんで」
そう言いながら手にパンの耳の入った袋を掲げる巳乃斗、七海と日下部からの冷めた目線、そしてイマジナリー歌姫からの養豚場の豚を見るような目線に、五条は折れた。
「••••僕がソファーで寝るからベットで寝な!!!夕飯は僕が奢ります!!!」
本日の勝敗、五条悟の完敗
■▼▼
皆さんお久しぶりです。
最近あまり出てない子安つばめです。
(誰に言い訳してるんだろう・・・)
私は今、久しぶりに心臓がバクバクくんしています。
『明日、家来ない?』
それは思春期の少年少女達にとって、何かしら特別な雰囲気を強調するセリフの1つ。付き合ったばかりの彼氏彼女が相手の家でモジモジするのは、どんな恋愛漫画でも定番である。
昨日の夜、風呂上がりに飲むヨーグルトを飲んでいたら黎人くんから電話が来て•••
「え、今なんて?」
「明日、俺の家に来いって言ったんですけど」
「・・・へ?」
「明日俺の自宅で呪術の訓練するんで、迎えにいきますよ」
「」
「•••聞いてます?」
「はい聞いております!!!」
(はれぇえぇぇえぇぇ!!?)
今日は日曜日なので学校はない。子安つばめは黎人に指定された公園に向かっていた。頭の中で先日の黎人の言葉を反芻するつばめ、何度も考えるうちに彼女の脳はある可能性に辿り着いた。
(これってまさか、お家デート!!?)
子安つばめは同級生にも後輩にもかなりモテる。
そう、けっこうモテるのだ。
秀知院難題女子に入るくらいモテる。
だが、当の本人は恋愛面に関しては全くの初心者であった。
彼女の性格と幼少期から怨霊に護られていたこともある。彼女にとって、恋愛指南書は友達から借りた『今日は甘口で』だけという非常に偏った、恋愛というお花畑が脳に存在しているのである。
しかも、最近同級生から聞いた恋愛系統の話に、『最近のカップルってお家デートも主流らしいよ!』という謎の情報が出ていたことがさらにその可能性の信憑性を増長させていた。
だが、流石につばめにも理性というものは存在するのである。そもそものそも、付き合ってもいない後輩がいきなりそんな邪な考えを持っているとは考えにくい。*2もし今回のお誘いがデートでも何でもなかった場合、張り切ってめかし込んでも勘違いした恥ずかしい女になってしまう。
『へぇ?先輩勘違いしたんですか・・・へぇ〜??』
『お可愛いですねぇ??』
と、言われてしまう。
なので今回は『人に見られて恥ずかしくない服で少しカワイイ』をコンセプトにした・・・ネイルにだけめっっっっちゃ気合い入れた。結構期待してるんぞこの女。
母に似合う?って聞いたら・・・
『あらあら・・・似合ってるわよ。サバクキンモグラみたい』
と、褒めてるのかどうか分からない返事を貰った。
ちなみに父にも聞いたら・・・
『・・・(とうとう来たかこの時が、どうしようどうしよう。いや、娘の成長は嬉しいんだけど、なんかその、嫌でもなんでもないんだけど、娘が急に遠いところに行っちゃったみたいな感じで、いや恋人できたってまだ確定してないけど!!うわ〜嫌だァァァでもここで本音言うとつばめに嫌われるぅぅぅぅ!!)・・・いいんじゃないか?』
と、なんか間があったが返事を貰った。
とりあえず期待半分緊張半分の状態で公園に向かっていた。
「ふぅ•••落ち着け私。素数を数えれば落ち着くからーー」
「ねぇ、あの人イケメンじゃない?」
「モデルさんかな•••」
「ねぇ声かけてみない?」
「•••ん?んんん?」
ヒソヒソ声で喋る女性達の視線の先を見る。
「•••あ、先輩」
「んんんんん!!?」
そこには黎人の姿があった。いや、声をかけられるまで気づけなかった。何故なら今の彼は顔に仮面をつけていなかった。格好も秀知院の制服から高専の制服•••黒いコートと人差し指と薬指のフィンガーレスレザーグローブをつけていた。普段眼鏡とスーツを着ている人がそれらを外したら誰なのか分からなくなる、『メガネギャップ現象』(五条悟命名)というものである!!
そして、何より驚いたのはマスクに覆われていない彼の左眼。キリッとした鋭い目に、目の周りを縁取る白いまつ毛。そして、まるで宝石のように青白く光り輝く瞳が、周りの注目を浴びていた。
つばめは数秒、その芸術品のような黎人の左目に硬直した。
「ハエー」
「本当にどうしたんですか?」
「いやっ!?てか、それカラコン?」
「これはちょっと特殊で•••てか、ネイル似合うな」
「え、あ、え?うんうん!!」
(よっしゃァァァ!!!)
□▲□
彼が今住んでいるのはとある街中の一軒家。普段は高専内にある寮で生活しているのだが、わざわざ静岡にある高専寮から通うのは正直言って時間の無駄。なので近場の一軒家を買ったのだ。特級術師の給料様様である。
自宅に着いて、家の中に入って来ていた上着をハンガーにかける。つばめは何か落ち着かないように周りをキョロキョロと見ていた。黎人は地下室への扉を開けながら着いてくるよう促す。
「こっちです」
「え、あ、うん!!」
地下室はシアタールームだった。小さな映画館ほどのサイズだが、音響設備は大型映画館と同じだ。
「南雲玲奈クラスの呪霊は、呪術規定では『特級過呪怨霊』に分類される。呪術には四から一、そしてさらにその上の特級という階級に分類される。彼女を祓える可能性があるのは、俺を含めた日本にたった4人しかいない特級術師だな」
「え、たった4人?」
「まぁ、そもそもの母数が少ないからな。それでも、正直しんどいと思うぞ?仮想怨霊の姦姦蛇螺や八尺様とか、あと昔のアイドルの•••誰だっけ?とりあえず、その怨霊どもより玲奈さんは強いはずだ。だから、祓うよりもっと楽な"解呪"を目標にする」
「かいじゅ?」
「そ、何千何万もの呪力の結び目を解いていく。それが出来るのは呪われている貴女だけ•••なので、まずは呪力のコントロールから始めるぞ」
「呪力•••確か負の感情でできるエネルギーだったよね」
「そ、どの呪術師も感情の火種から生まれる呪力を捻出する訓練から始める。訓練方法は様々ですが、つばめ先輩にはかなりしんどいのをやって貰うぞ」
「し、しんどい?」
「コレ」
そう言って黎人が取り出したのは•••
「コイツと一緒に映画鑑賞です」
様々な映画のBlu-rayとキモかわなナマズの人形だった。
「映画•••鑑賞?」
「映画を観ながら一定の呪力を流す。どんなビビった時でも胸糞悪い時でも。ちなみに呪力がブレるとコイツが放電します」
「え?この人形ちゃんが?」
「あと、こいつは呪術高専の学長お手製の呪骸『デンチくん』です」
「じゅがい、でんちくん。うん、分かったやってみる!!」
「じゃあどれから観ます?ハリウッドの名作シリーズからクソッタレ実写化映画、B級サメ映画に地雷のフランス映画。色々ある」
「うーん、じゃあホラー『バチィィィィ!!!』ーーいったぁ!?」
「あ、どんどん要求される量が多くなるんで」
「んもぉぉぉぉ!!?」
黎人はホラー系の映画をいくつか選びながら、つばめの方に顔を向ける。四宮かぐやの所為で彼女に割く時間があまり取れなかったことは事実だが、心のどこかで、彼女をこれ以上呪術に関わらせたくないと考えていた。あくまでも、彼女の力は玲奈の呪霊から送り込まれているもので、彼女はただ呪霊が見えるだけの非術師。呪いを解呪できれば彼女はただの非術師。関わりは少なくなる。その方がいいのかもしれない。
(割り切らないとな•••やっぱり呪術師ってクソだな)
3時間後•••
『いや、やめて!!』
暗い部屋の中、足音を立てずに近寄る女の霊が、少女にじわりじわりと近寄って行く。そして、女の霊は裂けた口をニンマリとさせながら少女に襲いかかった。
にぃぃ!!!
『いやぁぁぁぁ!!!!』
「ビリビリビリ!!!痛つつつ!?」
「あー、残念。別の映画観ます?」
(•••呑み込み、めっちゃ悪いなおい)
関わりが少なくなるのは、かなり先になりそうだ。
本日の勝敗、子安つばめの敗北
じゅじゅさんぽ
五条「本当に電話来てる•••
もしもし〜GLGだよ〜
•••留守電?うん、うん•••••
ええええぇぇぇ!!!???」