愛と呪いは紙一重【改】   作:ランハナカマキリ

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結構長めです。


家入黎人は聞き出したい

 

 

 

 

ん"?

 

 

「ーーーっ」

 

黎人は弁当箱を道端に投げ、何もない空間から布に覆われた金の持ち手の矛を取り出しながら通り過ぎた彼女の腕を掴み半ば強引に引っ張る。

 

「ーーっふぇ!?」

 

そして校舎の影に一瞬で連れ込み、布で刃を覆った槍の柄を首元に押し当てる。

 

「なっ何!?」

 

「お前•••これが見えてるだろ。」

 

黎人は先程から出しっぱにしていた式神を彼女の目の前に差し出す。

 

突然の出来事に当惑している彼女の視線は黎人と式神の間を行き来している。間違いなく、見えている(・・・・・)

 

 

「ひょっとして、君も見えるの!?」

 

「あぁ、見えてる。そして言わせてもらうぞ?お前、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「呪われてるぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「の、呪•••?」

 

黎人が事実を告げた次の瞬間、彼が持っていた槍の布が錆びついたように変色し始める。再び悪寒を感じた黎人はその場から飛び退き、式神を呼び出す。

 

片手で牙を生やした上顎、もう片方の手で牙を生やした下顎。

 

現れたのは体長15メートルを超える白の巨体、屈強な四肢と鋭い鉤爪、頑丈な顎とずらりと並ぶ牙、そして怒り狂った悪魔のような鋭い瞳孔、古の世界から飛び出してきた獣脚類。

 

猛顎(たけりあぎと)

 

『グルルルルゥゥ!!!!』

 

「食いつけ!!」

 

黎人には2つの術式がある。

 

1つはあらゆる事象を操る『事象操術(カオス・コントロール)

 

そして、

地球上の生物を式神として呼び出す『初転法輪呪法(乃亜の方舟)

 

黒い影の中から、その存在が姿を現す。鳥の頭骨や枯れ木のような腕が、徐々に顕現され始める。それは、彼女『子安つばめ』に取り憑いた、凶暴で残虐なる呪いの化身。

 

『つばめ様にぃぃぃぃ!!!』

 

「待って!お願いやめて!!玲奈(・・)さん!!!」

 

『近寄るなあ"あ"あ"!!!』

 

呪霊の手が黎人に向かう、だが彼に触れることはなく寸前で止まった。

 

『闇より出でて闇より暗く、その穢れを禊ぎ祓え』

 

帳、最も簡単な結界術であり、外から中への侵入を防ぎ、内部を視認できないようにする術。

 

だが黎人は天元と同格の結界術の腕を持っている。帳の中に、外から呪術師だけが入ることが可能な代わりに内側から出られないという縛りを組み込んだ。

 

「・・・去年の『星巫女』以来か?これほどの呪霊は」

 

呪霊の首と思わしき部位を噛み砕く猛顎、そして刃の布を剥がした槍で呪霊の胸を貫いた黎人。

 

特級呪具『 天之瓊矛(あまのぬぼこ)

 

その効果は対象の心の臓を貫くことで発動する呪力の消滅。そしてあらゆる呪術を弾く性質を持つ呪具。

 

呪力の塊である呪霊なら、この槍を刺して終わりのはずだった。

 

(何だ・・・彼女の中に戻っていく?ひょっとしてこいつが器?いや、だったら肉体の主導権が呪霊に握られる。乙骨先輩と同じタイプか・・・)

 

「えっ、何が起きたの!?棚から豚骨ラーメンだよ!?」

 

(えっ、豚骨?何言ってんだコイツ・・・)

 

「おい、聞きたいことがある」

 

「う、うん。何でも聞いて?」

 

 

 

 

 

 

 

「お前、誰?」

 

 

 

 

 

 

 

子安つばめ

 

世界的バーテンダー兼大手飲食会社エリアマネージャーの娘であり、裏表のない性格で面倒見が良く、男女を問わず相手にフランクに接し、下級生からも人気がある。一部の生徒からは「3年の白鳥」と呼ばれている。

 

「・・・なるほど、ところであんたは俺を知っていたのか?」

 

「うん、君の事は噂で聞いてるよ。今年から転入してきたとか、結構やばい厨二病だとか、あとそれから・・・石上くんと仲が良いって。まぁ殆どの人はーー君の事を変人扱いしてるみたいだよ?」

 

「へぇ、別に厨二病を発症しているわけじゃないけどな」

 

「さっき君、私が呪われてるって言ってたよね」

 

「・・・言ったな」

 

「それについて・・・・教えてくれない?」

 

「は?やだ」

 

「即答!?」

 

「理由は2つ。1つは、俺はあんたを1ミリも信用(・・)していない。」

 

「うぐっ!?」

 

子安つばめ、今まで様々な経歴のクラスメイトと関わりを持っていたが、ここまで本音をズバズバ言ってくる人間は初めてである。

 

「次に、俺はあんたのことを何も知らない。つまり何か聞きたいなら、あんたから話せ。そうだな、例えばあの呪霊、いや怨霊についてだ」

 

彼女の表情に緊張が見えたのが黎人には分かった。それでも黎人は質問を止めない。何故ならそれが大事なことだったからだ。だが、黎人にとってもつばめ自身にとっても、彼女に憑いている呪霊は、もはや見過ごして良いものではないのだから。

 

「いつから憑かれてる」

 

「・・・」

 

「何で憑かれた」

 

「・・・」

 

黎人は言葉を選びながら、けれど言葉を濁すことなく聞き出そうとする。彼女の顔は既に真っ白だ。だから黎人は、1つの質問に切り替えた。恐らくこれが最適解だろうという言葉を口にした。

 

 

 

 

 

 

 

彼女(・・)は、何者だ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの人は・・・」

 

つばめが口を開く。

 

「南雲、南雲玲奈さん。私が産まれた頃から面倒を見てくれていた、大切な家政婦(家族)です・・・」

 

■□■□■□■□

 

「私が4歳の頃、両親と兄が海外に行く用事が出来て私は日本に残ってたの。その時、玲奈さんは私の親代わりになってくれたの」

 

つばめは、その玲奈という女性をすごく慕っていた。当時大学生だった玲奈は学業と私生活の合間に、毎日1日も欠かさずつばめの元に会いに来て面倒を見てくれたのだ。元々母子家庭だった玲奈は基本的に家でひとりぼっちだったため1人でいる怖さや寂しさを誰よりも分かっていた。明るくて、とても優しい女性だった。

 

『つばめ様、私がいますからね!』

 

『う、うん!』

 

両親が帰ってきてからも関係は続いた。彼女が6歳になる頃には、もう家族の一員のようになっていたのだ。

 

つばめは彼女が読み聞かせてくれる本が好きだった。特に彼女のお気に入りは結婚式に関する絵本。白いウエディングドレスを着た花嫁が母親とバージンロードを歩く姿は、当時のつばめには美しく見えた。

 

『ねぇ、れいなさーん。』

 

『なぁに?』

 

『どんなひとが、はなよめさんとあるけるの?』

 

『そーねぇ、例えば花嫁さんが1番ありがとうって言いたい人じゃないかしら?』

 

 

 

 

 

『じゃあ〜!わたしがはなよめさんになったら、れいなさんがいっしょにあるいて!!おねがーい!!!』

 

『あらあら、いいですよ。指切りしましょうか!』

 

『『ゆびきーりげんまん、ウソついたらはりせんぼんのーます、ゆーびきった!!』』

 

 

 

 

 

その次の日、つばめは小学校の入学式に玲奈や両親と共に向かっていた。校門の前、赤いランドセルを背負ったつばめは玲奈と手を繋いでいた。

 

その日、玲奈はつばめにあるものを渡した。

 

 

『はいこれ、入学のお祝いよ!』

 

それは鳥の形をした、小さなキーホルダーだった。

 

『これはね〜私がつばめ様くらいの時に、お母さんからもらったものなの。大事にしてね?』

 

『うん!ありがとう!!』

 

それをランドセルに付けてもらい、喜んでいると信号の反対側から友達が手を振っていた。

 

つばめは、早くこのキーホルダーを見せてあげたいという思いでいっぱいだった。周りを見ずに走り出し、歩道を渡り切ろうとしてたその時。

 

 

 

 

 

 

ドンッ!!

 

 

 

誰かに背中を強く押され・・・

 

 

 

キィィィィィィィ!!!!

 

グシャ!!

 

 

アスファルトがタイヤを削る音の後に、何かが砕ける音がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゃぁぁぁぁ!!!?」

 

「おい、誰か救急車!!!」

 

「バカ、よく見ろ!!助からねぇよ!!!」

 

 

 

 

「体が、千切れてんだぞ!!!」

 

 

 

 

 

「・・・え?」

 

振り返ると、そこには玲奈だった(・・・)肉塊が転がっていた。

 

上半身と下半身の間が千切れ、頭の上半分が潰れている。

 

「玲奈、さん?」

 

顔を青くして駆け寄ってくる親の姿も、慌てふためく人たちも見えなかった。ただ心から慕っていた人の残骸を、見つめていた。

 

 

 

『つ、ばめ様ぁ"・・・』

 

 

すると、肉や血の塊の中から声が聞こえた。次第に声は大きく禍々しくなり、とうとう子供ほどの大きさの異形が卵の殻を破るように、肉塊から出てきた。

 

『私が・・・い"ますからねぇぇぇえ"!!』

 

こんなのは、玲奈さんじゃない。そう否定できたらまだ楽だったかもしれない。だが、幼いつばめはその口調に玲奈の面影を感じた。いや、感じてしまったのだ。

 

ゆびきーりげんまん、ウソついたらはりせんぼんのーます、ゆーびきった!!

 

「あ・・・あ・・・」

 

遠い正気の奥で、昔交わした指切りが聞こえた。

 

□■□■□■□■□

 

「・・・成る程ね。南雲家は狗巻家と同じ呪術名家の1つ、南雲玲奈は遠い血縁・・・と仮定すると、呪霊になったのは2つ理由が考えられるが、コイツ本人の呪力で特級クラスの呪いが生み出せるか?となると理由は1つだけか・・・

 

「ねぇ、次は私の番だよ。何で玲奈さんが見えたの?あの恐竜みたいなのと槍は?教えてよ」

 

つばめに睨みつけられる黎人、とはいえこの程度の睨みは彼にとってどうってことない。だが、相手はこの学校でかなりの影響力を持っている人物。今後の捜索に影響が出るかもしれないと考えたため、素直に言うことにした。

 

場所は変わって放課後の屋上。

 

「去年呪術の存在が明るみに出たから聞いたことがあるだろうが・・・日本国内での怪死者・行方不明者は年平均10,000人を超える。そのほとんどが人の肉体から抜け出した負の感情“呪い”の被害だ」

 

「呪いに対抗できるのは、その身に呪力を宿す呪術師だけ。俺はその呪術師を育成する都立呪術高等専門学校静岡分校から派遣された」

 

「・・・玲奈さんの事で?」

 

「いえ、俺が派遣されたのはこの学校にある呪物と呪具の捜索と回収の為だ。アンタと玲奈さんとは関係ない」

 

簡単にここに来たあらましを伝えた後、彼女は口を開いた。

 

「そうなんだ・・・ねぇ、呪いを祓うって言ってたよね。てことは玲奈さんも、祓われるってこと?」

 

「あるな、100%ある」

 

「・・・そう、なんだ」

 

「私ね、好きな人がいたの。優しくて、とても明るい人」

 

「・・・」

 

「でも告白しようとした時、玲奈さんが彼を本棚の下敷きにしたの。その際で彼、まだ病院に居て、私と関わると碌なことがないって言われちゃったの。だからもう、誰にも傷ついてほしく無いから、誰も好きにならないようにしてきた」

 

「へぇ?」

 

「今思えば私、他人に玲奈さんを求めちゃってるんだと思う。だから、玲奈さんは、それはいけないんだって言いたくて、そういう人たちを私から遠ざけてるのかな」

 

黎人はタバコに火をつけながら、遠い夕日を眺める。

 

「これはとある呪術師の、言葉だけど、『愛ほど歪んだ呪いは無い』」

 

その言葉に、つばめは唇を噛みながら涙を堪える。きっとその通りなのだろう。死んでも尚、自分の面影を他人に求める主人を、道を間違えないように周りの人間を遠ざける。それが誰のためになるのかは分からない。でも、そこには彼女なりの思いやりがあるのだろう。

 

「その、呪術ってのを学んだら。玲奈さんの、呪いを解けるかな?自由にさせてあげるかな?」

 

こちらを見ないで呟くつばめに、黎人は紫煙を吐きながら、人として、呪術師としての言葉をかける。

 

「ハッキリ言うが知らん。子安つばめ先輩、貴女にかかった呪いは、使い方次第で人を殺すこともできるし、救うことだって出来る。もしアンタが自分にかかった呪いを解いて、彼女を救いたいのなら、俺がアンタに呪術を教える」

 

■□◆□□■

 

『くくくっ、いいぞ?若い男女の馴れ初めは呪われていたほうがもっと良い!さぁ、もっと面白い恋物語を見せてくれ!!』

 

秀知院学園の何処か、八つ首の蛇がニヤリと笑っていた。





じゅじゅさんぽ

楽元寺「・・・のう歌姫、わしの相棒(エレキギター)は?」

歌姫「あれ?ここにあったはずなのに?」



西宮「あわわわわ」

東堂「おい何やってる」

西宮「加茂くんにエレキギター弾いてって頼んだらノリノリになってエレキギター床に叩きつけちゃった・・・」

この後加茂と西宮は学長にコッテリ怒られた。
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