ここは・・・・、私は確かドスジャギィから逃げて、その後突然空から赤い何かが降ってきて・・・・。
───ゴシャアアアアアァァォッッ!!!
大地を揺らす咆哮。
身を焦がすような紅く禍々しい龍属性ブレス。
鷹のような鋭く蒼い瞳。
神々しくすら感じる銀色の堅殻。
目の前の全てが夢のような、しかし決して夢では無い現実だということが身体の痛みと、恐怖が、そして本能が、体で感じとれる全てが、これが現実であると訴えている。
逃げたい
怖い
恐ろしい
帰りたい
なぜ私が
こんなの聞いてない
こんなの勝てるわけが無い
諦めろ
もうダメだ
殺される
逃げても殺される
立ち向かっても殺される
命乞いしても殺される
助けを呼んでも助けは来ない
───ここで死ぬ。
私の様々な感情が頭の中で同時に起こり、その全てが最終的に「死」を確信させた。
身体が震えて上手く体が動かない。
目の前の絶対的強者に、身体が、本能が死を確信させていた。
目の前のバケモノには立ち向かってはいけない、関わってはいけない、勝とうなど思ってはいけない。
何故古龍が神と呼ばれるのか、そう扱われ続けるのか、何故このバケモノ達が他の種で分けられるのではなく、【古龍】と言う曖昧な種として呼ばれるのか。
絶対的な存在であり、到底人類では理解の及ばない、高みに経つ生物だからだ。
1秒だってこの場にいたくない。
すぐに逃げ出したい。
これ以上この生物に関わりたくない、近づきたくない。
だと言うのに、この行動になんの意味もないとわかっているのに、こんなのただの犬死と同じだと言うのに───
───また逃げるの?
───そうやって、理由を作って諦めるの?
───そうやって諦めて、逃げ続けるの?
私は震える体を無理矢理立たせる。
手にあるハンターナイフを目の前のバケモノに向ける。
恐怖で涙が溢れる。
前に出ようとすると足が竦む。
今にも跪いて、倒れてしまいたい。
体を丸めて、必死に助けを求めて、誰かに任せて、自分じゃない誰かに押付けたい。
それでも
『笑って行こうぜ、地獄まで』
「わ、わた・・・・私は!」
もう逃げない。
もう見てるだけじゃない。
私が目指すものはこんな恐怖も、絶望にも負けない。
たとえ辛くても、逃げたくても、怖くても、止まってしまいたくなっても前を進むしかない。
「私は英雄になるハンター!アザミ=スイセン!」
だからこう言うんだ。
「笑って行こうぜ!地獄までッ!!」
私は走っていたハンターナイフを振りかぶり、勝てるわけもないのに。
それでも目の前のバケモノに立ち向かった。
そんな私に、バルファルクは羽虫でもはらい落とすように、取るに足らない虫を殺すように、翼から龍属性ブレスを放った。
───ドオォッ!
私は吹き飛ばされ、目の前には巨大なバルファルクの翼が向かってくる。
次第に地面が近づくと同時にその翼が近づいてくる。
あぁ、死ぬんだな。
その時私の脳裏に浮かんだのは、死んだ家族や、故郷のハンターさんや、村の人達の顔
『どうせ死ぬときゃ死ぬ』
ではなかった。
「おおおおおおおぉぉぉぉおおッッ!!!」
私は声を上げ、ハンターナイフを再び振りかぶり、近づくバルファルクの翼に向かって振り下ろした。
───パキンッ
しかし、ハンターナイフはなんとも情けない音を出し、バルファルクの堅殻に当たった瞬間に砕けた。
───あぁ、悔しいなぁ・・・・・。
ドオオオオオォォォンッッ!!!
バルファルクの翼は大地を砕く勢いで翼を地面にたたきつけた。
目の前の羽虫は死んだ。
この時バルファルクにとっては取るに足らない羽虫を潰し、殺し終わったと確信していた。
特に何も思わず、人が蚊を潰す感覚に近しい、鬱陶しい羽虫を殺した程度にしか思っていなかった。
しかし、それは誤りだった事に、バルファルクはすぐに気がついた。
「かっこよかったぜ、アザミ」
「───」
片手でアザミを抱きしめ、もう片方の腕で大剣を使い、バルファルクの翼を受け止める1人のハンター。
直感でバルファルクは理解していた。
そこら辺に転がる羽虫や餌とは違う、自分と同じ強者。
狩る側の生物。
小さく弱く、非力で脆弱な種であるにもかかわらず、身の丈よりも大きな牙を持つ者。
それがなんなのかバルファルクは理解していた。
その者たちが何者なのか、太古よりバルファルクは理解していた。
ハンター。
「さすが、俺の見込んだ英雄だ!」
「じじょおおぉッ!!」
「ハハッ、きったねぇ」
顔面を鼻水と涙でぐしゃぐしゃにしながら、泣き続けるアザミを力強く抱きしめる。
「・・・・俺の責任だ。もっと早くに助けにくるべきだった、ごめんな」
「ぞんなごどありまぜん゛ッ!!」
「アザミ」
「はい゛ぃ゛」
バルファルクはゆっくりと翼を目の前のハンターから離し、目の前のハンターを警戒する。
そんなバルファルクに、ハンターは持っている大剣をバルファルクに向け、最大限の殺気と殺意と共に燃え上がるような怒りを向け。
「特別授業だ、古龍の殺し方を教えてやる」
目の前のハンターの名はダンテ。
G級ハンター【番犬】ダンテ=ヒガン。
モンスターを狩る者だ。