リア充に憧れて   作:荒北龍

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閑話
恋と愛と想い


 

 

 

 

『結婚を前提に交尾してください』

 

その男と初めて会った時に言われた言葉。

"こうび"という言葉はよく知らないけど、"けっこん"は知ってる。

好きな人が好きな人と一緒になることだって私は知ってる。

でも、だからどうして私と結婚したいのかは分からない。

 

白と黒の世界で、皆顔にお花を咲かせてるのに、彼だけは花が咲いてなくて、話す言葉も心の中も空っぽなのに、言ってることは本音だった。

 

『すっごい好みです。もう可愛すぎて無理、交尾してください。あと結婚』

 

可愛すぎ。可愛い。

私?私がかわいい··········。

初めて言われた。

みんな私を怖いって言うのに。

私の白い髪も、肌も、紅色の瞳を除いて、全てがまるで死人のようで、死神のようで、モンスターもお花さんたちもみんな怖いと言うのに、かわいい···············。

 

かわいいの意味は知ってる。

愛おしくてたまらないものに言う言葉。

私は知ってる。

 

でも、それはおかしい。

みんな私を見る目は可愛いでも好きでもない。

バケモノを見る目。

恐怖に脅える感情。

そして崇拝と啓蒙。

私は知ってる。

 

でも、彼が向ける感情と瞳は···············私は知らない。

 

『私、かわいい?』

『マジで可愛すぎ』

『こーび、したい?』

『どちゃクソしたい』

『だめ』

『おいゴラァダンテぇッッ!何言っとんじゃわれぇッ!』

 

その後、彼はほかの女の子にラリアットされて奥の部屋に連れていかれてた。

まだ私、最後まで言ってないのに。

こーびはだめ。

よく知らないことを勝手にはいって言うのはダメだって教えてもらったから。

私は知ってる。

 

でも

 

『けっこんならいいよ』

 

私の声、彼に届いたかな。

初めてぷろぽーず。

嬉しくて嬉しくて、まるでブラキディオスと素手で殴りあった時みたいなドキドキと興奮が止まらない。

私、けっこんしちゃった。

けっこん、およめさん。

私の夢、かなっちゃった。

 

でも、彼はほかの女の子にもぷろぽーずしてるみたい。

これはうわき。

うわきはダメな事だって教わった。

私は知ってる。

 

「はやく、あいたいな····················」

 

きっとあの後けっこんの"ちかい"をしてなかったから"うわき"するんだよね。

"ちかい"は大切だって知ってる。

私は知ってる。

 

「ライラック様ー!」

 

彼女の名前はヴィオラ・ライラック。

【殺戮天使】【赤雪】【死神】【ドンドルマの英雄】【死鎌】【黒龍殺し】【白雪姫】様々な異名で呼ばれ、ギルドから【狩人】の2つ名を付与されたハンター。

G級最強と誰もが認める史上最強の生物。

その伝説は様々。

素手で猛り爆ぜるブラキディオスとボクシングしてKO勝ちした。極限化個体であるセルレギオス4匹の同時討伐。ドンドルマに現れた古龍を撃退、討伐した数は30を超える。伝説の古龍、黒龍の討伐。禁忌、神、破壊神と呼ばれた生物、アルバトリオンの討伐。新大陸に突如として現れた古龍、ムフェト・ジーヴァ、及びアン・イシュワルダの討伐。

 

様々な逸話とも言えるような真実であり、伝説や武勇伝の数々を持つ彼女。

 

「急遽の招集に応じてもらいありがとうございます!」

 

その目には恐怖の混じった崇拝の瞳。

 

「【皇海竜】ナバルデウス亜種の討伐おめでとうございます!それではこちらの方にサインを」

 

海に浮かぶ黄金に輝く古龍の亡骸。

【皇海竜】ナバルデウス亜種。

たった今、彼女はソロでこの巨大な古龍を討伐したのだ。

 

「かえるね」

「え?」

 

───ザプンッ

 

そう言って彼女はナバルデウスの亡骸から飛び降り、海の中に潜った。

身体全体の力を脱力させ、仰向けになり海の上に浮かぶ青い空と太陽を眺める。

装備と武器の重さに沈んで行く身体、体の酸素が次第に無くなっていく。

死へとゆっくりと、しかし確実に近づく身体。

 

───あぁ、おちつく。

 

私はくるってる。

私のお母さんが言ってた。

私は知ってる。

 

死に近づくこの感覚が、私は好きだ。

だから昔からモンスターと戦って、戦って、戦って、そして狩る。

そのせいでみんな私を『くるってる』て言う。

でも、ひとりだけ、あの女の人だけはちがった。

 

───あんた、ハンターにならないかい?

 

あの人は死んだ。

でも···············。

 

───私は近々死ぬ。昔から分かるんだよ、他人も、家族も、自分も。あぁ『もうすぐ死ぬな』て。

 

───死にたくないしまだ私にはやりたい事がある。

 

 

───でも後悔はないよ。なんせ私に大馬鹿野郎のバカ息子がいるからね!

 

そう言ってあの人はその後直ぐに私の知らない所で死んでしまった。

なんでその"バカ息子"が居れば後悔はないんだろう。

なんで死ぬってわかってるのにあんなに満足そうなんだろう。

 

私は"ソレ"を知らない。

 

知りたい。

死ねば分かるかもしれない。

このまま海の底で眠れば、きっと死ねる。

 

でも、それじゃぁあの人があの時何を想っていたか分からないと思う。

私は知らない。

 

そう言えば私にぷろぽーずした人はあの人の言う"バカ息子"だったなぁ。

 

───今から会いに行ってみよ。

 

"夫婦の誓い"をするついでに聞いてみよう。

もしかしたらあの人の言うバカ息子なら知ってるかもしれない。

お花の咲いてない、私の旦那様で、あの人の言うバカ息子。

 

名前は確か、ダンテ。

 

そう言って彼女は海の底を()()()()()

 

 

 

 

▶▶▶

 

 

 

「え、自殺?もう2時間くらい浮いてこないんですけど?」

「あー多分どっか行ったな。別の大陸にでも行ったんじゃね?泳いで」

「ど、どうしよう!この時期はもうすぐG級会議があるのに今見失ったら私確実に団長に殺される!」

 

彼女は【狩人】であるライラックを監視する複数いるギルドナイトの内の一人。

もうすぐ開催される【G級会議】。

それは年に一度G級ハンターが全て集まり、ギルドのこれから、問題点、上位ハンターの格付け、G級ハンターになるかもしれない素質あるハンターを弟子にしたり、もしくはG級に昇格させるかを決めるかい会議。

そしてG級ハンター最強と呼ばれるライラックの言葉はそれら全てを決める言葉なりゆる。

故に欠席の多いG級会議でも彼女の存在は必要不可欠なのである。

 

「うーん、彼女本当に神出鬼没だからなぁ。ちなみ今回のG級会議はどんくらい参加できるの?」

「珍しく【番犬】を除いた全てのG級ハンターです!」

「あれ?【番犬】来ないの?」

 

そしてこの哀れなギルドナイトの隣に居るのはG級ハンターの一人、【双星】レッド=シクラ。

G級の数少ないまとも枠であり、赤い髪が特徴的なイケメン。

そのアマイマスクに数多くの女性ファンを持っており、何より頭のネジを全て廃棄処分したG級ハンター達で唯一常識的な考えのできるハンターでもある。

 

「実は副団長の話では【番犬】は弟子を取ったらしく、今回のG級会議には出れないかもしれないといとの事で」

「弟子?誰を弟子にとったんだ?」

「【最優】のアザミ、アザミ=スイセンだそうです」

「は?アザミちゃん?あのアザミちゃん?俺たちのアイドルのアザミちゃん?」

「あ、そう言えばレッドさんはアザミさんのファンクラブの1人でしたっけ?」

「よりにもよってあんな年中発情期の駄犬の弟子に!?何故!?アイエエエッ!?なぜ!?何故??普通俺だろ!?」

「お、落ち着いてください!流石に【番犬】でもバルバレの英雄である彼女に突然いつもの発言をするわけないじゃないですか」

「んな訳あるか!きっと俺がアザミちゃんに会うときには···············」

 

『いえーい、アザミのファンクラブの皆見てる?君達のアザミちゃん、俺専用のオナ〇嫁に調教しちゃいましたー!』

『皆、ごめんね。私··········汚されちゃった』

 

「てなるに決まってる!」

「あなたの中で【番犬】はどうなってるんですか。話してみれば彼もまともですよ、初対面で突然ベットに誘う事に目をつぶれば」

「こうしちゃらんねぇ!今すぐアザミちゃんを助け出さねば!」

「え?」

 

そう言ってレッドは海の中にダイブした。

 

「え?うそ、マジで向かった?え?私二人もせっかく見つけたG級、しかも必要不可欠な【双星】と【狩人】二人とも見失った?」

 

その日、哀れなギルドナイトは胃を爆発させてガチ泣きした。

 

 

 

 

 

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