男の夢は、終わらねぇッ!!
───グオオオオオォォォッ!!!!
大地を揺るがす程の咆哮。
その咆哮は地震以外の有象無象を恐怖させ、畏怖させる。
我こそはこの地の主、ここは我の縄張りだと主張するように。
事実そのモンスターはこの地の主であり、無数の体に刻まれた今まで屠ってきた強敵達との激闘の証の名誉の傷跡。
そのモンスターの前に、数多のモンスターとハンターが立ち塞がり、全て屠ってきた。
そのピンク色の美しい堅殻から東方の花である「桜」の名を取り、ギルドからは桜火竜と呼ばれ恐れられるモンスター。
名をリオレイア亜種。
「セック〇させて下さい!!!!」
そして今、目の前で拍手したくなるような綺麗な土下座をし、地べたにデコから血が出るほど頭を擦り付け、リオレイア亜種の咆哮に負けないほどの声で懇願する男。
ハンターの中でも最強と呼ばれる者達だけが許されるG級の称号を貰い、ギルドから【番犬】の二つ名を付与された男。
かつてドンドルマに迫る巨龍、ラオシャンロンをソロで討伐し、バルバレを大混乱に陥れ、100のハンター達が挑み鏖殺された伝説の怪物、霊山龍ジエン・モーラン亜種をたった一人で討伐し、【沈まぬ太陽】と呼ばれ恐れられた銀火竜リオレウスを数多の犠牲を払いながらも討伐した男。
ダンテ=ヒガン
「童貞卒業させて下さい!!」
───グオオオオオォォォッ!!
「お願いしますッ!!お願いしますッ!!!!」
「あ、あの、師匠・・・何やってるんですか?」
「見て分からねぇかッ!?」
「分かりません、分かりたくありません。と言うか脳がこの状況を理解することを拒んでいます」
その後ろで肉塊を見るような目でダンテを見るタイヤキとアザミ。
「ご主人、いい加減モンスターで童貞卒業目指すの辞めたらどうにゃ?」
「人の夢は、終わらねぇッ!!」
「終わっちまえそんな夢」
───グオオオオオォォォッッ!!!!
「ぐっ、こんなに頼んでもダメなのか・・・・ッ」
「師匠、そもそも言葉が通じてないと思うんですが」
「言葉が通じなくても、心で通じ合えるんだ!」
「その割にはあっちは敵意向きだ───」
アザミが視線をリオレイア亜種に移すと目の前にリオレイア亜種が放ったと思われる巨大な火の玉に即座に武器に手をかけるが、既に火の玉は目と鼻の先にあり、すぐに間に合わないと悟った。
「そおぉいッ!」
しかし、土下座をしていたダンテがいつの間にか大剣を抜刀しており、その大剣で火の玉を弾いてそのままリオレイア亜種の頭部にぶつける。
「なーんでモンスターとハンターは分かり合えねぇんだろうなぁ。モンスターの擬人化とかエロ同人多いのに」
「・・・・タイヤキさん、もしかしたら師匠の下半身がなくなったら理想のハンターになるんじゃないんですか?」
「それは・・・アリだにゃ」
「てめぇら何物騒なこと話してんだ」
「て言うか師匠、これから何するんですか?」
「紐なしバンジー」
「は?」
次の瞬間、リオレイアが翼を大きく広げ、空へ飛び立つ。
その瞬間をダンテは見逃さず、そのままリオレイアの足に捕まり、そのまま蒼空へ消えて行った。
「タイヤキさん、もしかして···············」
「大丈夫にゃ、ちゃんと死ぬ前に遺書は残してあるにゃ」
「そうじゃ───」
───ドッ!! ドゴオォォンッ!!!!
───ベチャッ
次の瞬間、リオレイア亜種と共に空中から落下してきたダンテ。
高さは優に100メートル、しかもダンテが先に落ちてきてからリオレイア亜種がその後を追うように落ちてきた。
それと同時にアザミの頬に何か生暖かいヌメヌメした液体のような物が頬に飛び散った。
思わずアザミは頬を撫でて自信に飛び散ったものを確認する。
「ひッ」
思わず小さな悲鳴を上げる。
頬に着いていたのは小さな肉片と赤い鮮血。
それはダンテの血肉だったを。
「わりぃ、俺の血肉そっち飛んだ?」
「汚いにゃ」
「いやー、まだ傷が完全に治ってないからか、左腕が上手くうごかなくて5点着地ミスった。まぁいにしえの秘薬でも治りが遅いの見ると、やっぱ龍属性ってヤベェな」
そう言って何事も無かったかのように砂煙から姿を現すダンテ。
ダンテは何事も無かったかのように話しているが、左腕が左右にひしゃげ、骨が飛び出し肉が裂けていた。
「秘薬のストックある?」
「はいにゃ」
そう言ってアイテムポーチから秘薬を取り出し、ダンテの方に投げると、それを受けとり秘薬を口にほおりこむダンテ。
秘薬を飲み込んだと同時にミチミチと音を立てて再生していく腕。
感知したのを確認すると、左手をグーパーしながら動くのを確認し、こちららに目線を向けた。
「んじゃ、お前には今から飛竜種に乗って紐なしバンジーをしてもらう。できるようになったら今度は飛竜種を空中でぶっ殺して一緒に落ちてきてもらう。内容はわかったか?」
「死にたくありません」
「何言ってんだ、そんなの当たり前だろ?」
涙目になりながら懇願するアザミに対し、ダンテは輝かしい笑顔で言い放つ。
「お前は初めてだからな、特別にいにしえの秘薬使っていいぞ」
「あ、あは、あははっ··········」
「お、リオレイアの鳴き声がしたな。ちょうどいい、やるぞ」
「ひゃ、ひゃぃ」
そう言って己の死を悟りながらダンテに着いていく。
果たしてこれは本当にG級になるための修行なのか?自殺の間違いではないのか?と何度も自問自答し続けるアザミだが、ダンテの弟子になった時点で既に退路は断たれていた。
「なーに、怖がることはねぇ。俺も初めてやった時は秘薬のタイミングミスって手足と胴体が180度くらい回ったから」
やっぱりこれ修行じゃなくてただの自殺では?
「・・・ッ」
体が震える。
恐怖と死への強い拒否反応で前に進めない。
かつての自分は死など怖くない、仇のためならこの命を何時でも失う覚悟で生きてきた。
G級になれるなら、彼らのような力を手に入れられるなら、あの怪物を殺せるならどんな事でもするつもりだった。
なのに、自分はあの時の恐怖が、圧倒的強者の前では自分は羽虫同然だと知ったあの日、私は死を恐れるようになってしまった。
「・・・・"また"か?」
「お願い・・・します・・・・」
そう言ってダンテは足を止めた。
バルファルクとの戦いから数ヶ月、アザミは臆病になった。
いや、この場合臆病という表現は適切ではない。
感情の豊かな生物は皆死を恐れるのは当然な事であり、至極当然の反応なのだ。
アザミは臆病になったと言うより、抜け落ちていた常識が元に戻った、生物として当然の感性を持つようになったという方が正しいだろう。
最初の内はダンテも大いに悩んだ。
どうすればいいのか、死を恐れるのが悪いことでは無いが、それを無くすすべを自分は知らない。
自分の師がやっていたように全身を拘束された状態で"怒り喰らう"イビルジョーの目の前で放置して、恐怖の対象を死から師に変える方法もあるが、すかさずそれを聞いたマリーのラリアットにより止められた。
そんな時、アザミの方からとある提案をされた。
それは
「よしよし、アザミは強い、きっと俺よりも立派なハンターになれる。終わったら一緒に水浴びして飯も食べさせて一緒の布団で寝てやる。だから今だけ頑張ろうな?」
思いっきり抱きしめ、頭を撫でながら思いっきり甘やかす。
そうすると元気が出てハンターナイフで激昂ラージャンに問答無用で飛びかかれるくらい元気が出る。
だが、褌と頭装備だけの変質者が未成年を抱きしめてる絵面はなんとも度し難い。
完全に事案だ。
最初は抵抗感など、頭下半身の童貞であるダンテには刺激が強すぎたが、幼児退行するアザミを世話していく内に完全に母性が目覚め、アザミを性の対象から愛娘へと完全に見る目が変わってしまった。
これでいいのかと最初は疑問に思ったのだが・・・・
「ありがとうございます。これなら霊峰からでも飛べます!」
輝かしい笑顔のアザミに、もういいかと納得してしまったダンテ。
もしかすると自分の息子は1度も女を抱いたことがないせいでEDになってしまったのではないかと少し心配になるダンテであった。
「どう見ても事案だよな?」
「頭が痛いにゃ」
その光景を見ていたタイヤキとマリーはこれから先本当にこれで大丈夫なのかと不安に頭を悩ませるのであった。
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