ちなみにバルファルク戦から1年経ってます。
言うの忘れた
「いい月だ」
「それに質の良い酒とツマミ」
月明かりと空に浮かぶ星々がキャンプを照らす。
全てを見渡すことが出来る高い場所に作られたキャンプは、酒の肴にするには十分な程幻想的な景色を見せる。
そこで2人の男女が盃に酒を注ぎ、静かに口に運ぶ。
「これで可愛い女でもいれば完璧なんだがなぁ」
「私がいるだろ?」
「··········マリーは、あんまりなぁ」
「あ?」
「そう言う目で見たくねぇんだ」
「はぁ?」
こちらを向いて笑うダンテ。
その顔の奥に、この男が何を考えてるかは分からない。
そもそもこの男は滅多に本音を話さない。
普段はふざけた行為や訳の分からないことを言って周囲を混乱させる上に、脳が下半身にあるのではないかと思うほど性欲で物を考えているかのような言動の数々。
それら全てが本心なのか、それとも演技なのか、私にはよく分からない。
「全て本心だよ」
そう薄く笑いながら酒を口に運ぶダンテ。
「お前を見てると、師匠を思い出しちまう」
「···············私はお前の母親になった覚えはねぇ」
私の言葉に、お互い笑みが毀れる。
そもそも家族とは何か、血が繋がっていれば家族なのか?
近い関係になれば家族になれるのか。
番となれば家族となれるのか。
定義など様々で、それは他人同士が勝手に決めることだ。
「で、わざわざ話ってなんだ?」
その言葉に、マリーは持っていた杯の酒を飲み干し、少し考える素振りを見せてからくちをひらく。
「なんでアザミを弟子にしたんだ?」
単純な疑問だった。
ダンテはゆっくりと視線をアザミが眠っているキャンプのテントの方に移す。
彼女は逸材だ。
あと10年、時間はかかるが彼女は確実G級になれる。
それほどの逸材だ。
そんな彼女をわざわざ死地に送るような行為。
ダンテに弟子入りする者は少なくない。
曲がりなりにもこいつはG級であり、ギルドから【番犬】の2つ名を付与されたハンター。
こいつに限って見た目で判断したとは···············
「アザミのあのムチムチの下半身が俺好みだったんだよなぁ」
あるかもしれない··········。
「冗談はよせ」
「冗談じゃねぇよ?」
「ぶっ殺すぞ」
そんなふざけた理由で未来のG級ハンターを死地に送るなど、そんなふざけたまねするならG級の称号を今すぐ剥奪して去勢してやる。
「ご主人様」
「··········なんだタイヤキ」
「"もう知ってるにゃ"」
「····················そうかよ」
「?」
新しい酒を持ってきたタイヤキの、呆れたような、申し訳なさそうな顔を見てダンテの視線が手元の酒が注がれた杯に移る。
その顔はどこかぎこちなかった。
「師匠はさ、体が弱ってても、あんな骨もどきなんかに不覚を取るほど弱くねぇ」
「···············ハンターは何が起こるかわからん。それにリナリアも人間だ、死ぬ時は死ぬ」
もう何年経ったか、未だこいつは己の師が言う「英雄」に囚われている。
他人にどれだけ言われても、どれだけ否定されても、それでもコイツは「英雄」を目指している。
こいつの頭はとっくにイカれちまってるのかもしれない。
「あの時師匠はあの骨もどきの龍属性ブレスをもろに食らってた。師匠がモンスターのブレスをもろに食らうほど、馬鹿じゃねぇし、戦場でそんなミスをする程弱くねぇ」
「いい加減にしろ、何が言いたい」
先程からもうすぎた話をタラタラと。
何故そこまで昔のことに固執するのか、私は次第に怒りが込み上げてくる。
だが、次の言葉で私の怒りはスっと消えてなくなった。
「あの時、師匠は"生き残り"を庇って龍属性ブレスをもろに食らった」
「···············おい、ダンテ··········貴様」
「あの時の生き残りだ」
「まさかアザミに復讐でもするつもりか··········ッ!」
「················」
戦慄した。
そこまで、そこまでこいつは堕ちてしまっていたのか。
そこまでお前は狂ってしまったのか。
先程とは別の怒りと、恐怖が私の体に渦巻いた。
「··········あいつの目がさ」
「···············?」
ダンテは空に浮かぶ月を見上げた。
その顔はどこまでも穏やかだった。
「昔の俺そっくりなんだ」
「師匠が死んで、何もかもどうでも良くなって、師匠に言われた「英雄」の言葉に囚われて、自分の足元に転がる死体がモンスターか人間かもわかんなくなっちまってたあの時の俺に」
───お前に何がわかるッ!
───俺は英雄だッ!お前らがなんと言おうとッ!俺は英雄なんだッ!
かつての記憶が脳裏をチラつく。
英雄ではない、師匠の弟子でもない、誰かを助けるハンターでもない。
俺はもう、何者でもない。
ただモンスターを殺すだけのバケモノだ。
「本当に、そっくりだ···············」
ダンテはまるで自分自身を嘲笑うかのように笑った。
「アイツはまだ変われる。俺のようなどうしようもねぇ、力だけ持っただけのバケモノなんかにならずにすむ」
「俺はもう···············あの頃には戻れねぇ···············」
どこか寂しそうに、悔しそうに嘆く男の姿が、酷く痛々しく見えた。
「お前は、まだ前に進めないんだな··············」
少しの間、沈黙の空気が漂う。
その間も2人は酒を煽り、タイヤキはそんな2人をずっと眺めていた。
「なぁ、マリー」
「なんだ」
「俺はもうすぐ───」
次の瞬間、ダンテの口をマリーが無理やり押え押し倒す。
それとほぼ同時にタイヤキが背中に背負った武器を構えようとするが、それをダンテが静止した。
「お前も、リナリアと同じことを言うつもりか」
「···············」
「言わせない、絶対に言わせないッ!いいや、考えることも許さないッ!それを口にしてみろ!貴様の両手脚を切断してやる。二度とそんな馬鹿なこと考えられないようにしてやるッ!」
口を無理やり押え、怒気を孕んだ声で叫ぶ。
「お前も、リナリアもそうだ!何が運命か!何が使命だ!ふざけるな!そんなものハナから存在なんてしない!だから───」
ポタポタと暖かい雫がダンテの顔にこぼれる。
とめどなく、何度も何度もこぼれ続ける。
「もうすぐ死ぬなどと、後悔がないなどと···············そんなこと、言わないでくれ····················」
その言葉はまるで縋るように、願うように、嘆くようにこぼれ落ちた。
「私が、後悔する··········ッ!」
それはかつての後悔だった。
リナリアが死ぬ少し前、彼女は全てをマリーに託した。
使命も、遺言も、後悔も、意思も、称号も、命すらも。
全てをマリーに託し、あっけなく死んで行った。
───私はもうすぐ死ぬから、後のことは頼んだぞ。
そう言って死んだ。
───お前になら、任せられる。
何度も後悔した。
あの時、冗談かなにかだと思い、あまり気にも止めていなかった。
死ぬはずがない、負けるはずがない。
だって彼女は【英雄】なんだ。
だが、彼女はただの、息子想いな母親だった。
「···············頼む、お前にしか頼めない」
「···············ふざけるな、私は認めないぞ」
今でも覚えている。
あの声を、表情を、感情を、言葉を。
その全てが、目の前の男と一致する。
それがたまらなく嫌だ。
「なぜ死に急ぐッ!師への憧れか!?ハンターとしての誇りか!?貴様はリナリアじゃないッ!物語の主人公でも、人々に選ばれた勇者でも、ましてや【英雄】でもないッ!ただの人間だッ!」
「そうだな···············俺は結局、英雄に憧れただけの···············ただのガキさ」
───そして、俺の師匠は英雄だった。
その言葉に口を噤んでしまうマリー。
何も言えなかった。
この男は変わらない、変われない。
幼い子供は英雄に憧れ、歳をとるにつれ英雄に自分はなれない事を悟る。
なのにこの男は、たとえ自分が英雄でないことを知っても、英雄になれないのだとわかっていても、かつて師が言った言葉に囚われ続けている。
───お前は立派な【英雄】さ、バカ息子
なれないと知りながら、それでも追いかけ続ける。
大人になっても、否定されても、理解しても、それでもこの男は全て承知の上で【英雄】であろうとする。
「マリー、頼む」
「··········タイヤキは承知なのか」
「承知するわきゃねーにゃ」
当然のように答えるタイヤキ。
最初にタイヤキに自身の死期が近いと話した時、それはもう酷かった。
タイヤキは怒鳴り、引っ掻き、説教をし、何度も怒った。
自分は自分を拾ってくれた家族を見殺しにし、かつての主人を見殺しに、自分に優しくしてくれた全ての人を見殺しにした。
なぜあの時主人と一緒に死ななかったのかと、何度も後悔した。
でも、だからこそ自分を救ってくれた新たな主人とは死ぬまで付き添うと。
例え足がちぎれても、腕がちぎれても、この命尽きるまで今度こそ主人を守り抜くと、最後まで主人のそばにいると誓った。
なのに、主人はそれを否定する。
怒るのも当然だ。
だが
───なら、お前が守ってくれよ、タイヤキ
その言葉で、何も言い返せなかった。
本当に最低で、最悪のご主人様ニャ。
「ウチはご主人様の最強のオトモアイルーニャ、死ぬまで一生お供するニャ」
「···············勝手にしろ」
そう言ってマリーは立ち上がり、ダンテに背を見せる形で座るとタイヤキが持ってきた新しい酒をがぶ飲みし始める。
マリーは酒を全て飲み干すと、酔っているのか顔を赤くさせながらこちらに振り向きダンテを睨みつける
「私は、絶対に認めないからな」
「···············タイヤキ」
「絶対嫌ニャ」
「まだ何も··········」
「ご主人様が死ぬ時はウチも死ぬ時ニャ。これだけは絶対に譲らないニャ」
「ワーッたよ、俺はもう寝る。おやすみ」
「おやすみニャ」
そう言ってダンテはアザミが眠るキャンプとは別のキャンプに向かった。
「···············」
マリーは何も答えない。
ただ空に浮かぶ月を見上げていた。
「····················師匠」
ベットの中で話を聞いていたアザミの頭の中には白い少女が話していた物語の内容が何度も繰り返し流れていた。
もしもあの話に出てきた番犬が師匠だとしたら、もしもあの話がこれから起こる未来の話なら、師匠は死を望んでいるのだろうか。
───死に急ぐな。師を引き止めろ。それが吉と出た
もしも運命が本当にあるのなら、もしも師匠の死が確定された物と言うのなら、それでも変えることができると言うなら、私は───
「···············起きていたのか」
「マリーさん、話があります」
アザミは覚悟を決めた。
▶▶▶▶▶
「ふぁ〜、朝か。さて、寝ているアザミの尻でも見てモチベーションを上げ···············」
オッスッ!俺の名前はダンテ!趣味は眠るアザミのムチムチの下半身を眺めて下半身のモチベーションを上げることと上がったモチベーションで官能小説を書くことと古龍の頭蓋骨かち割ること!
今日も今日とて眠るアザミでえっちぃ気分になろうとアザミのベットに向かおうとした俺だったが、何故か俺の隣にアザミが居る。全裸で。
「むにゃ、ダンテのバカぁ··········」
「···············」
マリー?(裏声)
なぜマリーも全裸なの?
さては昨日飲みすぎて全裸で俺の布団に入ってきちゃったのかな?アザミが全裸で俺の布団に潜り込んでくるのは今に始まったことでは無いので良しとするが(心臓には悪い)、俺はとあるベットの染みに目がいった。
ベットの下の方にある数滴の染み。
真っ赤な赤い鮮血。
俺がそれを見てフリーズしていると、タイヤキがキャンプの中に入ってきて俺を見てくる。
「あ、いや··········これは····················」
珍しく情報が完結せず慌てている俺を見て、タイヤキが「はぁ」と溜息を吐いてからこちらをジト目で見てきた。
「昨日はお楽しみだったニャね」
「··········ふぁッ?(裏声)」
師匠、見てますか?俺は念願の脱童貞しました。
でも記憶がありません。
しかも2人同時です。
しかも相手の片方は未成年です。
もう片方はギルドナイト副団長です。
助けてください。