【冥海】アヤメはラギアクルス希少種を討伐し、その素材で作ったアビスシリーズと冥大剣エンファクルスを使うG級ハンター。
彼は"とある"モンスターを追っていた。
かつてその海と島の生物を全て喰尽くした怪物。
もしもそのモンスターが生きているなら、確実にどこかの海の生態系が壊れている。
はずなのだが、ここ数年海の生態系が壊れたり、おかしくなった所はなかった。
それどころか不気味なほど安定している。
本当にあのモンスターは生きているのか、もしかしたら死んだのではないかとも思っていたが、ちょうど1年と少し前、そのモンスターの発見報告が上がった。
【骸龍】オストガロア
かの滅びの神は生きていた。
だが、何故今まで見つからなかったのか、生態系が壊れていないのか、それどころか人を主食とするはずのオストガロアによる被害が今まで1度も上がっていないのが不自然だった。
まるで喉に魚の骨が引っかかったかのような不快感がアヤメを襲った。
オストガロアの討伐依頼が自分に入り、どうするべきかと悩みながらも承諾した。
それでも本当にこの判断が正しいのか、ここ8ヶ月"海の中"で考え続けた。
そしてG級会議が行われる数ヶ月前、【冥海】アヤメは深海3000メートルの暗闇の地面で"昼寝"をしている時、とある人物にあった。
『ごぼ、がぼぼぼ』(ここどこかわかる?)
『らいらっく』
『…………こ……んな、か……ぼび』
『ッ!』
───まさか、この女…………
『ちが…………も、っど………………あ、あー、うん、喋れる。便利だね、これ』
───真似したのか!?それも俺以上に流暢に…………ッ
アヤメは長い年月を海の中ですごし、気がつけば水中でも会話が聞き取れる特殊な言語を話すようになった。
今では地上より水中の方がまともな言語を使えるようになってしまったが、目の前の女、【狩人】ライラックは自身のオリジナル言語を1度聞いただけでコツと話し方を理解し、話し始めた。
やはりこの女は怪物。
人の形をした化け物。
※水中3000メートルで何ヶ月も過ごす【冥海】はG級の中でも上位のバケモノだ。(哀れなギルドナイトによる報告)
『【番犬】、どこにいるか知ってる?』
『しらん』
『そう』
そう言ってまたどこかを歩き始める【狩人】。
そして時は進みG級会議1ヶ月前。
▶▶▶▶▶
「いやー、小さい割に力強いね嬢ちゃん!」
「いえいえ、そんなことありませんよ!」
「やっぱり元ギルドナイトは違うねぇ」
この哀れなギルドナイトは数ヶ月前に【双星】と【狩人】を目の前で取り逃してしまい、ドンドルマに帰るに帰れなくなってしまい、現実逃避をするかのように近くの村で漁猟をしていた。
村の人たちは優しく、泣きべそをかいて首を括ろうとしていた彼女に無償で住む場所と仕事をくれ、今はこの村の漁師として頑張っていた。
「それにしてもいいのかい?上司のところ戻らなくて」
「アハハ、2人を取り逃した事がバレたら私、首が飛ぶんで…………物理的に」
「そりゃぁ帰らんなぁ…………」
「さっ!辛いことは忘れて、この仕掛けを引き上げたら帰って皆でパーッと飲みましょう!」
「お、いいねぇ!」
「よーし今日はワシが奢っちゃる!」
「そんなこと言って、また奥さんに怒られますよ」
「アンタん所の上司よか怖かねぇよ」
「「「アハハハハッ!」」」
───ザパァッ!
「うおっうおっうおっ」
「「「…………………………」」」
その場の全員の思考が停止した。
引き上げたら仕掛けに何故か人が釣れ、吊るされた人間がわけのわからん声を出してビチビチと暴れている。
なにか重度の風邪をひいた時に見る夢のような光景に、全員が全員この現実を理解することを脳が忌避していた。
「あ、あー、お……ばぇ、ギル……ないと…………」
「あ、え?」
こちらを見て何かを言っているバケモノ。
哀れなギルドナイトは何故か背筋が凍るような悪寒に逃げようとするが、その行動を決意するよりも早く目の前のバケモノが仕掛け針を引き抜き、そのまま哀れなギルドナイトを担ぐ。
「どん、とるま…………あんない、じーかいぎ………………」
「た、たしゅけ…………」
───ザパァンッ
そのままカジキの様な勢いで海を泳ぎ、そのまま哀れなギルドナイトを連れてどこかに消えてしまった。
置いてきぼりのこの状況に、2人の漁師は顔を見合せ、お互い頷くと哀れなギルドナイトが消えていった方向を見ながら
───強く生きろ、少女よ!
G級会議前日に、最も見つけることが難しいG級ハンターの1人である【冥海】を連れてきた哀れなギルドナイトは団長から大変褒められ、給料を2倍にしてもらい、肩に手を置かれ「これからも君の活躍に期待している」と期待のこもった声で言われた。
周りにいたギルドナイト達は拍手した。
彼女は泣きながら笑っていた。
哀れなギルドナイトの肩に置かれた手は、とても重かった。
どん!まい!
ちなみに哀れなギルドナイトは時期団長と呼ばれるようになり、永久就職が決まることとなった。
それを聞いた哀れなギルドナイトは咽び泣いた。