「・・・・」
【城壁】マキ=オウギは考える。
自分の弟子にG級の座を引き継がせるか否かを。
自分の弟子はカムラの里で起きた百竜夜行を食い止め、ナルハタタヒメを討伐し、あの【古龍】アマツマガツチを撃退した。
功績だけ見るならG級に相応しいと言える。
しかし、それだけだ。
自分の弟子をG級にするには何かが決定的に足りない。
それが自分には分からない。
そしてふと思い出す。
【番狼】の弟子、【番犬】ダンテ=ヒガンの存在を。
彼は【番狼】の名こそ引き継ぎはしなかった。
それは自分にその名は相応しくない、これから現れるであろう【英雄】にこそ相応しいと。
そして自分はギルドの首輪をつけられた飼い犬として【番犬】を名乗ると言った。
これから現れるふさわしい英雄とは何なのか、少し疑問だったが、1年前だろうか、【番犬】は弟子をとった。
【最優】のアザミ=スイセンだ。
おそらくだが、【番犬】の言う相応しい英雄とは彼女のことだろう。
弟子になる前にバルバレに現れた【古龍】ダレン=モーランを討伐した【バルバレの英雄】。
だが、何を持って彼女に【番狼】を引き継がせようと言うのか、彼女の何を見て英雄に相応しいと思ったのか、それを知れば自分も弟子にG級の称号と、この【城壁】の名を引き継がせることができるのだろうか。
「師匠!」
ふと、弟子の声で我に返る。
「どうした、弟子よ」
【城壁】の弟子である赤髪の少女、フリージア。
彼女は上位ハンターズギルドランキング一位と、上位ハンターの中でも随一の実力を示し、G級個体相当と思われるジンオウガの討伐に成功した。
もうG級ハンターにしても恥ずかしくない実力と言えよう。
だが、それでもまだG級ハンターになるには何かが足りない。
「ギルドナイトによる招集です。ドンドルマで行われるG級会議に出席して欲しいとの事ですが・・・・」
(もうそんな時期か・・・・・)
G級会議。
G級ハンターがドンドルマの集会所に一同に集まる会議。
そこで自分は引退し、【城壁】の名をフリージアに受け継がせるのも悪くないと考えていた。
ふと思う。
「弟子よ」
「はい師匠」
「お前はどんなハンターになりたい?」
「どんな・・・・?」
そこでフリージアは考え込む。
かつて彼女は強くなりたいと言って自分に弟子入りしてきた。
自分にはフリージアの他にあと4人弟子がいたが、そのうち3人は死に、もう一人はハンターを引退した。
ほかの弟子たちは皆目標があった。
自分の様にと憧れる弟子や、他のG級ハンターに憧れる者、思えばフリージアは何になろうとしているのか、強くなり何を目指しているのかが不透明だった。
ただ強くなりたいという強い意志だけは感じた。
強くなり何をしたいのか、その強さを求める理由は復讐か、憧れか、金か、何かほかに理由があるのか、それが気になった。
「・・・・・とあるハンターと、肩を並べて戦える・・・そんなハンターになりたいです」
「それは・・・G級ハンターか?」
「はい!」
そう答えたフリージア。
その時マキの中に生まれた小さな好奇心に従い、それが誰なのか問いかける。
「それは、誰だ?」
「そ、それは・・・・・」
「ん?」
何故か答えを濁すフリージアに疑問に思うマキ。
「な、内緒です!」
(ま、まさか・・・・)
うちの弟子、そのG級ハンターに恋しているのでは!?
今まで実の娘のように可愛がってきた弟子の恋、応援したい反面、G級ハンターと言う爆弾の様な存在に恋していると聞いて不安の気持ちが勝ってしまった。
「そ、そいつはどんな奴だ!?特徴!特徴だけでいい!教えてくれ!」
「え?えっと・・・・・とっても紳士的で、優しくて、かっこいいです!」
顔を赤くさせながら、恥ずかしそうに答えるフリージア。
「???」
紳士的?同じG級ハンターに紳士的な奴どいたか?という疑問でマキの頭は支配される。
だが、1人だけ当てはまる男がいた。
【双星】レッド=シラクだ。
あの男は狂信者ではあるがそれを知らないものから見たらイケメンで優しくて紳士的らしい。
にわかに信じ難いが、民たちはそう言っている。
よりによってG級ハンター達の中でも最も頭のおかしい奴の次の次くらいにおかしいあの【双星】に恋してるなど、自分の弟子が不憫で仕方ない。
「そうか、わかった」
「?」
マキは拳を強く握りしめ、覚悟を決める。
(【双星】を殺そう)
(師匠、どうしたんだろ)
そんなこんなでG級会議に向かい、来るであろう【双星】の暗殺を決意するマキ。
そんな師匠の思いをつゆ知らず、フリージアは自身が肩を並べて狩りをしたいハンターを思い出す。
(師匠、今日もかっこいいなぁ・・・・・)
フリージアが肩を並べて狩りをしたいのは目の前のこの男、マキである。
師弟として狩りではなく、対等なハンターとして狩りをしたいという願い、長年の夢、そして目標。
そんな思いなど、マキは知る由もなく、来る日に向けて武器を研ぎ始めるのであった。