「話を戻します。今回の議題である次期G級ハンター候補である上位ハンターについてですが、こちらは最初にお配りした資料をご確認しながらお聞きください」
未だ呆然として居る【妖艶】と壁にめり込んで動かない【双星】を無視して話を進めるマリア。
「1人目は【城壁】様の弟子であるフリージア。現ハンターランク【7】、モンスターの討伐、及びギルドへの貢献やクエストの成功率等で加算されるポイント式の総合ハンターランキングではG級を除いたランキングは3位、2年前に古龍である【霞龍】オオナズチを撃退、昨年には偶然遭遇したG級個体のジンオウガを討伐、ギルドでの評価も良好。これならば来年にはG級ハンターとしてギルドを【鬼姫(きき)】の2つ名を付与を───」
「その話に関して話がある」
「【城壁】様、なにかご不満が?」
基本的に上位ハンターからG級ハンターへの昇格はギルドの者以外が口を出すことを禁止されているも、その師であり監督官である者は最終決定権を持っている。
「フリージアのG級への昇格は白紙に戻してくれ」
「・・・今ハンターズギルドは甚大な人不足が問題視されています。G級になることでフリージア様の受けられるクエストも多くなります。正直に申し上げて実力のあるハンターが長い期間同じパーティーを組み続ける事はあまり推奨できません」
「実力あるハンターは大半を新大陸に持っていからだからな。だがそれはギルドの勝手な決定により起こった事、俺には関係の無い話だ」
「【城壁】様の言われることはごもっともです。ですがそれでもフリージア様のG級ハンターへの昇格自体は賛成したはず」
「いいや、俺は賛成も否定もしていなかった」
「いいえ、我々ギルド及びギルドナイトは再三の呼び掛けで『返事がなければ賛成とみなす』という文を送りました。そしてあなたは答えなかった」
「だから今答えた。俺はフリージアのG級ハンターへの昇格は反対だ」
「それは勝手がすぎるって言ってるんだよ!理由を言え!理由を!」
ダァンッ!と強く資料を大理石に叩きつけ、大理石にヒビが入った。
ギルドは一刻も早くフリージアをG級ハンターへ昇格させ、ソロで活動させたい。
申し分のない実力、及びにギルドでの評価も良好。
そして何よりも大きな理由が
(まともなG級枠ッ!絶対欲しいッ!)
まともなG級が居ない中、フリージアはギルドが認めるまともな良識のあり、実力があるハンター。
マリアも直接会い、話したがあまりにもまともなことを言うものだからその場で自分の腹を短剣で斬って夢かどうか確認したが死にかけたので夢ではなかったことに感謝感激の余り臓物を零しながらフリージアを抱きしめてしまった。
あと1秒隣にいた哀れなギルドナイトがいにしえの秘薬をぶち込まなければ死んでいた。
「・・・ウチの娘はG級ハンターとしてなんか足りないからダメ!」
「テメェはフリージアさんの過保護なママか!?」
何故か腕組キメ顔で答える【城壁】に怒りを覚えながらも、深呼吸をする。
そこで【伽藍堂】が口を開いた。
「ならば【番犬】に見てもらうのはどうだ?」
突然出された【番犬】の名。
【番犬】と【伽藍堂】の接点は少ないが、部下のギルドナイトの話ではかつて【伽藍堂】がまだ上位ハンターだった時代に何かを話していたという情報があった。
「・・・・なぜ【番犬】なのですか?」
「俺が上位ハンターだった頃、実力が上位ハンターで止まりこれといった成果も出せず、かつての【伽藍堂】である父の様なハンターになれずどうしたものかと悩んでいた。そこで俺は【番犬】にあるアドバイスを貰った」
「それがG級になれるきっかけになったと?」
「あぁ、何より【最優】のアザミ、彼女も次期G級と名高い。同じ実力のもの同士での狩りの経験を積んでおいて損はないだろう?」
一理ある。
禁忌級のモンスターや、G級ハンターでもソロでの討伐が危険とされるモンスターはG級ハンターをギルドが編成し派遣することが多い。
その場合チームプレーが重要とされる複数人での狩りはお互いにお互いがどのような狩りをするのか把握する必要がある。
「それには俺も賛成だ」
「・・・ではG級昇格の緊急クエストを受注しましょう。その結果を見てG級ハンターへの昇格を決める、ということでよろしいですね?」
「構わない」
「では詳しい話は【番犬】様が居る機会にまた」
そう言ってフリージアのG級への昇格の話は保留となる。
「では次に2年前に【番犬】の弟子となった【最優】のアザミ・スイセンですが、彼女の場合は今回【番犬】様が不在の為保留とします。そして最後の1人、【戦鬼】コハク・リョウシュウ」
師もおらず、また名家の生まれでもない、だが最もG級に近いとされるハンター。
G級ハンターになる者はほぼ全てにおいて自身を鍛えたG級が居る、もしくは歴代で何度もG級を輩出した名家であるか。
それは産まれ持っての血の才能か、もしくはG級によって才能が開花、もしくは常軌を逸した修行の成果故か。
だがG級ハンターになった歴代のハンター達は必ず名家の産まれ、もしくはG級が教えに居る。
だが彼女、コハクは違った。
「彼女は現ハンターランク【7】、総合ハンターランキングはアザミさんとフリージアさんを差し置き1位、最近の記録では3ヶ月前に2つ名個体である【紫毒姫】リオレイアの撃退、1年前にはG級個体である【滅尽龍】ネルギガンテの討伐、【冰龍】イヴェルカーナの討伐、【泡狐竜】タマミツネの討伐に成功しています。本来ならばすぐにでもG級ハンターに昇格なのですが、本人がそれを拒否している為保留の状態となっていますが、来月に正式にG級ハンターに昇格することが決まりました」
コハクはG級ハンターの領域に既に踏み込んでいた。
しかし何度もギルドによるG級への昇格の話を断り続けていたが、3ヶ月前に突然彼女はG級ハンターへの昇格を承諾し、数少ないG級ハンターの弟子でも、名のある名家の血縁でもなく、ただ生まれ持った才能と努力と実力によりG級となるハンター。
ギルドより2つ名を【滅鬼】を付与されることが決まった。
「これについて何か質問のある方は?」
誰もコハクのG級への昇格に異議などはなかった。
「ではまず今から半年後、【最優】アザミ・スイセン及びフリージア、【番犬】ダンテ・ヒガン及び【城壁】マキ・オウギによる合同クエストを行います。詳しいクエスト内容は1か月前には通達するのでその時にはここ、ドンドルマの集会所にお越しください。そして【戦鬼】コハク・リョウシュウにはG級昇格の緊急クエストとして1週間後にG級個体であるディアブロスの狩猟に向かってもらいます。これは事前に本人に通達、及び承諾を得ています。監督官として私、マリア・ライラック、及び【伽藍堂】エリオント・ザラック様には同行をお願いします」
「わかった」
そう言ってマリアは溜息を吐きながら無事(意識不明者を2名出しながらも)一段落した。
「それでは、次の議題ですが・・・・【骸龍】オストガロアの討伐メンバー及びに【黒龍】の亜種と思われるモンスターの捜索メンバーを編成したいと思います」