「んじゃ始めるぞ」
───ドムッ!
「ごぺ」
そう言うと師匠は私の腹を殴った。
私はそのまま下半身の感覚が無くなり、倒れ、股の間に大きな水溜まりが出来る。
「人間の体ってのは面白いことにな、壊された部分を更に強くしてから治す。筋肉痛が良い例だな」
───ボキッ
「が……ァ·····ッ」
そう言って師匠は躊躇することなく私の腕を折る。
痛みで悶絶しようとも、失禁しても、泣き喚いても止まらない。
これはそう言う修行だ。
「人間の骨ってのは全部で206個ある。そして今から頭蓋骨を除いて全ての骨を折ってから秘薬で治す。それを24時間続ける」
「ヒュー··········ヒュー··········ッ」
意識が飛んでしまいそうだった。
もはや言葉などほとんど聞こえなかった。
「意識が飛んじまいそうなほど痛いだろ?だが意識が飛ぶことはない、骨を折られるたびに意識が戻っちまうからな。最初は力いっぱい泣き叫ぶだろうな。その後は声が出なくなる。そして最後はただ痛いだけだ」
痛みに慣れ、苦痛を受け入れ、ただ叫ぶ。
「それと次いでにお前の筋肉を徹底的に潰す。安心しろ、死にはしない、ただ死ぬほど痛いだけだ」
壊れるカラダを眺めながら、ただ叫ぶ。
「お前は産まれ持った才能なのか、それともどっかで"壊れた"か分からんが、技術だけなら他のG級と遜色ない。あとは基礎体力と強度が必要だ」
叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ。
「普通は肉体が出来てから技術が磨かれる。お前の場合は逆だ、本当なら5年以上はかかる肉体強化を数日、もしくは数ヶ月で肉体と技術を均等にする」
さけ、叫ぶ叫ぶサケブさけ、さけさけさささけさけぶさけぶさけぶさけぶさけぶさけぶざゲブ。
「ま、その内なれるだろうさ」
ししょ───
「思い出すなぁ、俺は師匠が加減ミスって下半身と上半身が離婚した」
▱▱▱▱▱
「・・・・」
あれから二年たった。
最初は痛かったはずなのに、今はその痛みに完全になれてしまった。
慣れというのは恐ろしいが、同時にこれほど心強いものは無い。
───師匠、すみません。
だから、あの時も痛くなかった。
痛くはなかったけど・・・・・
「師匠て下半身もG級なんですね」
「タイヤキ、弟子がこうなったのって俺の責任かな?」
「日頃の行いニャ」
「そうか」
師匠は全裸で体育座りしながらテントの隅っこで泣いていた。
「いつまで泣いてるんだ、私とアザミの処女だぞ?泣いて喜べ」
「俺の童貞だって安かねぇよ」
「師匠、私が初めてじゃ嫌でしたか?」
「嫌じゃ、嫌じゃねぇけど・・・・ッ」
師匠は更に丸くなりながら、思い詰めたように言葉をひり出した。
「俺の初めてが睡姦逆レイ〇って、しかも弟子に・・・・」
「お前の初めては私だ」
「ううぅ・・・・」
「泣くなよ」
マリーが初めてと聞いて涙を流しながら現実から必死に逃げようとするダンテ。
確かに童貞を卒業できたのはとても嬉しい、嬉しいことではあるのだが、ダンテにとってはそれよりも家族同然に思っていたマリーと愛弟子が自身の寝込みを襲ったという現実が受け入れられずにいたのだ。
「いつまでも泣いてるな、お前がそんなに傷ついたなら私も知らない男に寝込み襲われてやる。多分その後キツすぎで自害するけど」
「自分の身体は大事にしろよぉ・・・・」
「優しいな」
「師匠、すみません」
「謝んなくていいよ、そもそも普段から誘ってたの俺だし」
「・・・・それでダンテ、クエストはどうするんだ?」
「少し心の整理させてくれ」
「そうか」
そう言ってダンテはテントから出ていった。全裸で。
「やっぱり睡姦はまずかったんじゃないか?」
「で、でも師匠を襲うには睡眠中しか・・・・」
「アザミ、お前思考がだいぶG級に染まってきたな」
そもそも普通の人間は人を襲う時点で選択肢から除外される。
「宅配にゃー」
「ん?」
するとギルドナイト専用の宅配ネコ。
それは犯罪を犯したハンターの討伐、若しくは緊急時の依頼、要請、様々な機密情報が入っている。
「副団長様宛にゃ」
「あぁ、受け取った」
そう言って宅配ネコから手紙を受け取る。
それを受け取るのを確認すると宅配ネコは早々に消えて行った。
「・・・・これは」
手紙の差出人を確認するとマリーは直ぐに手紙の内容を確認する。
手紙の内容を読んでいく度にマリーの顔色が青ざめていく。
「急いで移動する準備をしろ」
「マリーさん」
「・・・・この付近にある村が一夜で消えた」
「───」
かつてとあるモンスターによる報告があった。
けして小さくは無い、その村には実力のあるハンターも何人かいた。
村の人々は平和に暮らしていた。
何もない日常の中で、その日の夜も何もない朝を迎えると、そう信じていた。
一夜にして村は滅んだ。
「運命とでと言うのか・・・・ッ」
村に残ったのは残骸。
島の生物は人もモンスターも一匹残らず喰い荒らされ、そこに残ったのは人とモンスターの残骸。
見渡す限りの残骸。
そのモンスターにとって自身以外の全てが餌。
底の無い貪欲に塗れた食欲。
「オストガロアッ!」
『怨嗟の慟哭』、『奈落の妖星』、深淵で全てを喰らう怪物。
かつて名を馳せた英雄を食い殺した怪物。
ベースキャンプから少し離れた場所で、骸の様な容姿をした老人が全裸で頭装備だけを着た男にすがっていた。
「あの日、村は一夜にして消えた。
海の傍で共に暮らした仲間たちも、
生まれたばかりの幼子も、
みんな奪われてしまった。
何の因果か残されたわしは、
ただ一つの望みを抱いて生きてきた。
オストガロア…奴を文字通り骸に変えてくれ」
「爺さん」
「頼む、頼む・・・・ッ!どうか、皆の仇をうってくれッ!」
「・・・・俺は───」