「Hey交尾ッ!」
「相変わらずだなコハク」
「交尾しようぜダンテッ!」
「死ね」
私はあんまりにもあんまりな光景に頭が痛くなるのを感じながら目の前の光景を受け入れる。
最もG級に近い女、コハク・リョウシュウ。
癖っ毛だらけの長い銀髪に褐色の身体に無数ある大小の傷。
鍛え上げられた身体に女性にしては大柄な190cm以上はありそうな身長に鋭い犬歯と黒い瞳が特徴的な女性が背中を向けて臀を突き出しながら自らの尻を叩いている。ふんどしとサラシ姿で。
どうしよう、私まだ夢でも見てるのかな。
「お前またアドレナリン強走薬グレートDX飲んだだろ」
「なんですかそのヤバすぎる強走薬」
「強制的に30時間アドレナリンを大量分泌させるダンテ特性の強走薬グレート」
「飲んだら疲れが吹っ飛ぶが人間性も吹っ飛ぶぞ」
「ヤバすぎる」
師匠が今日は特別講師が来ると思って期待してみたら、ヤバすぎる人が来た。
私の期待を返して欲しい。
実績だけで見ればG級と大差ない実力は上位トップのハンターだが、どう考えても関わってはいけない人間だ。
師匠はこの人から何を学べというのだろうか。
「とりあえずこれ」
「へ?」
そう言って渡されたのはボーンブレイドと何故か泡立っているどす黒い液体の入った瓶。
「師匠これは?」
「断骨大剣」
「こっちの瓶のに入ってる液体です」
「アドレナリン強走薬グレートDX」
「私にああなれと?」
「お前のご立派でオレのガキ部屋がん突してくれよッ!!」
「お前も普通に修行してたらああなる。俺は師匠の修行で全裸で笑い踊り狂った」
「いつも通りの師匠では」
「え?俺って普段そんな感じなの?」
「体液まみれのどちゃラブ交尾しようぜぇッ!!!」
「お前ちょっと黙ってて」
マリーさんがラリアット、タイヤキさんが腹パンしてコハクさんが気絶した。
首から「ボキンッ!」とか腹部から「パンッ!」て音が聞こえたと思うけどきっと気のせいだ。
「今からこの大剣で3日間素振りしろ。休まず」
「死にます」
「大丈夫、腕がちぎれるだけだ」
「致命傷です」
「ちぎれたり折れたらすぐいにしえの秘薬飲ませて治すから。それじゃぁコハク、お前にはこれからやってもらいたいことが・・・・死んでる?」
「気絶してるだけにゃ」
「息してねぇけど」
私はこの後3日間で7回腕を折り、3回ほど発狂した。
コハクさんを連れてきたのは3日後にパーティーを組んで狩りをさせるためだったらしい。
人間発狂するとコハクさんみたいになるんだと私は知った。
▱▱▱▱
(何でこんなこと思い出してるんだっけ)
「ざっけんなッ!!そこを通せッ!」
「こっちも依頼なんでね、マリー達をギルドと合流させろってな」
目の前に立つのはコハク=リョウシュウ。
最もG級ハンターに近いハンター。
かつて共に狩りをし、その実力差を嫌という程思い知らされた。
自分とコハクには小さな隔たりがあった。
だがその隔たりを自分は師匠との修行で超えることはできなかった。
「今世界は大混乱だ。数多の古龍の出現、高難易度のモンスターの同時出現、今ギルドと王国は猫の手も借りたい状況だ。それこそ優秀なハンターとギルドナイトが1人でも多く必要な程にな」
「通してください、コハクさん」
「··········正式にギルドがお前に依頼を出した」
突然コハクはアザミの顔を見ると懐から1枚の依頼用紙を取り出した。
「G級個体と思われるディアブロスの討伐をG級昇格クエストとし、その後他のG級ハンター三人と合流した後に四人でオストガロアを討伐せよと言う内容だ」
「そこを、通してくださいと言っているんです」
今度は殺気を込め、まるでモンスターに向けるのと同じ殺気を人に向ける。
「他の3人は今ほかのモンスターの討伐に向かっているが、1ヶ月もすれば合流できるだろう。お前はこのクエストに成功すればギルドはお前をG級ハンターとして昇格させると言っている。オストガロアの討伐はG級ハンターになってからにしろ。今のお前の実力だと───」
「知ったことかッ!」
「··········復讐の為に犬死するつもりか?」
「復讐なんでどうでもいいッ!」
「ほう?」
アザミは双剣を構える。
それはモンスターに向けるものであるはずの武器。
同じくマリーも既にコハクにギルドナイトの剣を構えていた。
「あの人は、生きるべきなんだ!」
私は2度死ぬはずだった。
憎しみと言う暗黒の中で、絶望の果てに死ぬはずだった。
そんな私の前に2度現れた希望と救いの光。
あの人こそ英雄だ。
あの人は皆に祝福されながらベットの上で死ぬべきだ。
あんな暗黒の中で死んでいい人なんかじゃない。
「副隊長、剣を収めてください」
「お前らも私の邪魔をするか」
すると奥から5人のギルドナイトが現れる。
「コハクさん、貴方はアザミさんの方を。私達は副隊長を抑えます」
「··········」
「コハクさん?」
コハクは未だ武器を構えない。
この場のコハク以外の全員が武器を構え、一触即発の空気が漂う中、コハクだけは空を眺めていた。
『Heyそこの彼女!俺の激昂ラージャンを君のギィギで討伐してみない?』
最初は頭のイカれた男だと思った。
『え、お前あの戦闘民族の村出身なの?』
『ひと狩り?うーん、今俺炭鉱夫だからまた今度ね』
『よ、未来の英雄!』
それから酒場で何度か一緒に酒を飲む中になった。
『大胸筋立派になったね、マッサージしよっか?』
『臀のラインえっろ』
普段から馬鹿なこと言って、何も考えてない頭空っぽの脳天気な野郎だと思ってた。
『へぇ、行くんだ』
『まぁ、死にたがってたお前にはちょうどいいんじゃね?』
なのにあいつは誰よりも私を理解して、私以上に死にたがってた。
『人間死ぬときゃ死ぬ』
『だからよ、笑っていこうぜ。死ぬまで、死んだその先まで』
『地獄で会ったら、お互い死に様でバカ笑いしようぜ』
そして私に生きる理由を与えたのはあいつだった。
「私の人生後悔ばかりだった」
突然語り始めるコハクに、その場の全員が耳を傾ける。
「私の家族はイビルジョーに全員食われた。村のみんなも、全員貪り喰われて生き残りは私だけ。私がハンターになったのはそのイビルジョーを殺すためだった」
そのイビルジョーを殺す。
私にとってはそれが生き甲斐で、それ以外は何も無かった。
「自分を刀のように何度も何度も鍛えて鍛えて、寝ても覚めてもそのイビルジョーの事だけを考えて生きてきた」
「私こそ世界でいちばん不幸な人間だって、不幸自慢大会があったら私は優勝できるってくらい不幸な人間だと思ってた」
でも違った。
「ハンターになってから私みたいなのは沢山いて、私以上に不幸なんて当たり前だった」
「その中でもとびきり不幸なやつもいた」
なのにそいつは笑ってる。
死にたいのに生きてる。
「他人を救うのは得意なくせして、自分を未だ救えない、可哀想な奴だった」
そうして語り終わるとコハクは背中に担いだ武器に手を当てる。
潰滅の一撃【壊】
コハク=リョウシュウの武勇伝の1つ、禁足地にて突如現れた尽くを滅ぼすネルギガンテを討伐した証であり、強さの証明の一つである武器。
マスターランク、それは新大陸にてG級と同じ意味を持つ称号であり、尽くを滅ぼすネルギガンテはマスターランクでも特に危険度の高いモンスターである。
多くの実力あるハンターを送り込んだ新大陸のハンターを尽く鏖殺したネルギガンテの特殊個体。
それをソロで討伐したコハク。
その実力は既にG級の域にあった。
「なぁアザミ」
「··········なんですか」
「アイツを救ってくれ」
次の瞬間、コハクは動く。
最初にマリーが反応し、それに合わせアザミが動く。
しかしそれよりも早くコハクはアザミの胸ぐらを掴んでいた。
「あのバカによろしくな」
次の瞬間、アザミは吹っ飛ばされた。
龍の墓場がある方向に。
「何のつもりだコハク!」
「これは命令違反だ!」
「貴様も拘束するぞ!?」
一斉にギルドナイトが武器をコハクに構える。
「うるせぇな、貴族の犬が··········ひき肉になりてぇか?」
コハクの確かな殺気。
力を込めた武器を握る手。
こいつらはクソだ。
死体に集るハエと同じ、虫は潰しす。
それが害虫なら尚更··········。
「··········まぁ落ち着きなよ。私が任されたのはマリー達の確保、アザミの確保なんて言われた覚えはない」
「な、何を屁理屈をッ」
「まぁ、仕事は仕事だし··········マリー、殺るか?」
「··········」
【戦姫】コハク=リョウシュウ。
ギルドナイト副団長、マリー=ゴールド
マリー=ゴールドはかつて罪を犯したG級ハンターの暗殺に成功している。
そして一方コハク=リョウシュウは数々のG級モンスターの討伐に成功し、また貴族側のギルドナイトを数人殺害している。
お互いの実力は拮抗しており、また決め手がない。
おそらくコハク=リョウシュウの攻撃は全てマリーに躱される。
しかしマリーの一撃はコハクの命を絶つには軽すぎる。
故にお互いどちらが死んでもおかしくない戦いとなる。
そしてコハクは仕事と私情は1部例外を除きキッチリと切り分ける。
もし戦いとなればギルドナイト団長より「使い物になる程度までなら壊して構わない、無理なら殺せ」と命令を受けている。
つまり戦いになれば確実に殺すつもりで武器を振るう。
たとえお互いに知った顔だったとしても。
「わかった。お前に従おう」
「話が早くて助かるよ。私はハンターだから人はできるだけ殺したくないんだ」
そう言ってマリーはドンドルマに向かうことにした。
(アザミ、タイヤキ、ダンテを頼んだぞ)
とある酒場の2人。
コハク「もしお互いG級になっても独身だったら結婚するか?」
ダンテ「え?いいの?今夜交尾する?」
コハク「結婚したらな」
終わり