「よしッ」
俺はファミ通と書かれた褌とレウスXヘルムを被る。
完璧な装備だ。
「良しじゃないにゃ」
「あぁ、クーラドリンクとホットドリンクを忘れるところだった」
「・・・・辞めるなら今のうちにゃよ」
「大丈夫です。例え私の選んだ師匠が露出狂でも、私は受け入れて見せます!」
「おう小娘やんのか?」
なぜ俺が褌を履いてレウスXヘルムだけをつけているのかと言うと、それにはイビルジョーの食欲よりも深いわけがある。
それは数時間前の事だ。
▷▶︎▷
「G級ハンターはその実力故、私達ギルドナイトはG級ハンターが変な気を起こさない様監視している」
「何人くらい管理できてんの?まさか俺だけとか言わないよな?」
「・・・・・」
「マジかよ」
「仕方ないだろ!なんなんだお前らG級ハンターは!火山にクーラードリンクなしで何ヶ月も籠ったり、海底に三ヶ月ぶっ通しで潜り続け、挙句古龍の背中に乗ってどっかに行ってしまうし、挙句この前たまたま見つけた『狩人』は猛り爆ぜるブラキディオスと素手で殴り合って居たぞ!?」
「『狩人』だから仕方ない」
「お前らG級ハンターは常識を知らんのか!?」
声を荒げるギルドナイトに周りの視線が痛々しいほど突き刺さる。
それに気づいたギルドナイトは咳払いしながら話を戻す。
「話を戻すが、G級ハンターの弟子はそれだけで監視対象だ。何せ次期G級と言ってもいい。G級ハンターが引退、もしくは死んだらその席の穴は弟子が埋める。お前がそうだった様にな、ダンテ」
ギルドナイトは一つの紙を少女に出す。
「さて、君にはまだ選択肢がある。もしこいつの弟子になるなら普通の死に方は出来ないぞ。それこそ、"あの村"の住民の様にな」
「・・・・・・」
「君はまだ若い、何も死に急ぐ必要も無いだろう。復讐することを悪だという訳では無い、いわば適材適所だ。G級モンスターはG級ハンターにしか相手できない。君もわかっているだろう?あの災害には『人間』の枠では勝てないということくらい」
少女の目は揺れていた。
この紙に一筆すればG級ハンターの弟子になれる。
そしてそれがG級ハンターになるための最も近道であることを。
今度いつ村の仇のモンスターが現れるか分からない。
もんしかしたら今回の狩猟であのモンスターは討伐されるかもしれない。
仇は討てないかもしれない。
でも、死より恐ろしい目に遭うことはなくなる。
死地に無理やり行かされることもない。
きっとG級ハンターの修行は自身が想像するよりはるかに辛いだろう。苦しいだろう。後悔するだろう。
心が折れるかもしれない。
たった一筆するだけで、自分の人生は大きく変わる。
ふと、目線がダンテの方にむく。
ダンテの愛用の装備、レウスXシリーズ。
G級のリオレウスの素材から作られた、赤い装備。
そして、そのレウスXヘルムの隙間から覗かせる紅蓮の瞳が、自身の姿を確かに映していた。
「難しく考えるな。どうせ死ぬときゃ死ぬ」
その一言で少女は何を思ったか。
しかし、少女の目はもう揺れていなかった。
「・・・・・・なります。ダンテさんの弟子に」
「───そうか、残念だよ。優秀なハンターを死地に送らなければならないとは」
そう言ってギルドナイトは少女に契約書と、ペンを渡した。
そして少女は迷いなく自身の名前を書き、それを確認すると、ギルドナイトはそれを丸め、筒に入れて懐に入れる。
「これよりハンターランク7、総合ハンターランク9位、アザミ=スイセンをG級ハンター【番犬】ダンテ=ヒガンの弟子としてここに認定する。証明人は私、ギルドナイト副団長 マリー=ゴールドである。これは王の意向である」
▷▶︎▷
そうして晴れて弟子になった少女、アザミと共に仮の準備をしていたのだが、何故か俺の装備を見てドン引きされているのは解せぬ。
「これもしっかりとした装備だ、知らんのか」
「あの、ふんどしが装備なんてことありますか?」
「アザミさんアザミさん」
「なんですかタイヤキさん」
「ご主人は昔激昂ラージャンに頭を殴り飛ばされたことがあってにゃー、多少の事は目をつぶって欲しいにゃー」
「あーそういう事でしたか、それは仕方ありませんね」
そう言ってタイヤキどアザミはとてつもなく哀れな子猫を見るような目でダンテを見つめる。
「おいなんだその暖かい目は、やめろ。そんなめで俺を見るんじゃない。俺は何もおかしくない。俺は常識人だぞ」
「師匠」
「なんだ」
「私はこれからどんな事があろうと、師匠について行きますから」
「そうかありがとう。だがその暖かい目はやめろ、マジで。てかキリン装備してる時点でお前人の事言えねぇからな?」
「・・・・・変態」
「変態にゃ〜」
「え?俺が悪いの?」
まだ狩りにすら出ていないのに、既に弟子に変態認定されたことに割とガチで傷付いたダンテだった。