リア充に憧れて   作:荒北龍

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なりそこない
神は絵本を描いて聞かせる


 

 

 

 

「さて、とりあえず俺は少し用があるから、お前は先にクエストを受注しといてくれ。俺の名前を出せば事前に受けるクエストを用意してくれてるはずだから」

 

「わ、分かりました」

 

そう言ってマイハウスを出ていくダンテとタイヤキを見送り、アザミは一足先にギルドに向かうことにした。

ギルドに向かう途中、商人たちの開く店や、野菜や肉屋、他にも出店などで賑わう人々を見ながら、普段の街の風景に、今この街は平和なのだと実感する。

 

そしてその街を眺める度、屍と骸の山に変わった自身の村の惨状を重ねてしまう。

 

果物や野菜を売っていたお節介なおばさん。

水上げされた魚を売っていた声の大きなおじさん。

鍛冶屋の見習いの少年とその先生であるお姉さん。

隣のおじさんやおばさんとその子供。

村のみんなから愛され慕われる村長。

人懐っこい妹と世話係のアイルーであるオウバンヤキさん

怒ると怖いお母さん。

優しいお父さん。

 

その村を護るハンターさん。

私の憧れで、初恋の人。

どんなに強いモンスターも、あの古龍すら倒したことのあるハンターさん。

 

みんな、みんなみんな一夜で屍になった。

屍以外何も残らなかった。

何が起こったかも分からない。

ただ、強い紅い光と共にみんな消えてなくなって、生きていた人は生きたまま食べられて、助けに来てくれたハンターさんは断末魔を上げながら手足をちぎられてから喰われた。

 

私は一夜で故郷も、家族も、知人も、初恋の相手も、全て失った。

 

最後に残った私は、ただ殺されるのを待つだけだった。

そんな中、2人のハンターと1匹のアイルー。

最後の希望だった。

私はその人達が仇を討ってくれると、あの人達ならあの骸の化け物を倒してくれると信じていた。

 

でも、勝てなかった。

一緒だった女性のハンターさんは男性のハンターさんを庇ってあの紅い光に巻き込まれて死んだ。

アイルーさんは男性のハンターさんの目の前で食われて死んだ。

残った男性のハンターさんは怒り狂いながら武器をがむしゃらに振って骸の化け物の目玉を抉り、右の触手を切り落とした。

 

でも、あの骸の化け物は突然逃げだした。

海の向こうへ、地平線の彼方へ逃げていった。

男性のハンターさんは泣きながら叫んで、武器や骨を投げ続けていた。

その後、男性のハンターさんは1匹の生き残ったアイルーと共にどこかへ行ってしまった。

 

途中で生き残った村長さんと再会した私は少しの間だけ村長さんと共に生活したけど、村長さんは村人のみんなが死んだことに責任を感じて、そのまま首を吊って死んだ。

 

みんな死んだ。

みんなみんな死んだ。

みんなみんなあの骸の化け物に殺された。

 

(あぁ、憎い)

 

平和な時間を過ごすほどに、その憎しみが私の身体を焼く。

私はきっとこの先一生この復讐の業火に体を焼かれ続けるのだ。

 

(いつになったら、私は···············)

 

本当はわかっている。

私ではあの骸の化け物には勝てない。

小さな身体、大剣も持てぬ非力な腕、まともな装具をすれば重くて上手く体を動かせない。

今の今まで努力でどうにかしてきた。

手足が折れるほど鍛えた。

手のひらの皮が、足の裏の皮が全て剥がれるほど武器を握り、走り続けた。

それでも、ここが私の限界だ。

努力だけでは越えられない壁。

 

───私は選ばれた人間じゃない。

 

それでも、だとしても

 

「私にはこれしか生きる意味が───」

 

「1人でブツブツ何言ってるの?」

 

「きゃっ!?」

 

突然現れた少女に思わず可愛らしい悲鳴をあげてしまったアザミに、クスクスと笑う少女。

 

「可愛い悲鳴」

 

「誰ですか貴女───」

 

次の瞬間、少女の姿を目で捉えたアザミは、その姿に目を奪われる。

 

───白い。

 

服が、肌が、まつ毛や爪に至るまで、全てが白い。

真っ白な少女。

ただ一点。

その宝石のように輝く紅い瞳を除いて。

 

「ねぇ、これから絵本の読み聞かせがあるの。あなたも聞いていく?」

 

「え、あ··········はい」

 

思わず頷いてしまったアザミ。

直ぐに断ろうとしたが、少女はアザミの腕を引いて無理矢理読み聞かせが開かれるであろう場所に連れていく。

 

「ま、待ってください!私はこれからやることが!」

 

「いいじゃない、少しくらい」

 

「で、でも···············」

 

そして連れていかれた空き地に、子供が数名座っていた。

 

「あ、白いお姉ちゃん!」

 

「どこいってたんだよー、早く読み聞かせ聞かせてよ!」

 

「その人誰ー?」

 

幼い子供たちがアザミに視線を向ける。

アザミが戸惑っていると、白い少女が口を開く。

 

「この人は貴女たちと一緒に読み聞かせを見に来た追加のお客様よ」

 

そう言って少女はアザミを適当な場所に座らせると、絵本をどこからともなく取り出すと、前に置いてあった質素な気の椅子に座る。

 

「それじゃぁみんな、今日の絵本は英雄もどきのお話よ」

 

「「「わーい」」」

 

「わ、わーい」

 

アザミは考えるのをやめた。

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